取り返しのつかない夜  フランシスコ・プラサ監督『クリスマス・テイル』
B000JVS584スパニッシュ・ホラー・プロジェクト クリスマス・テイル
マル・バルディビエルソ; イバナ・バケロ フランシスコ・プラサ
video maker(VC/DAS)(D) 2006-12-22

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 〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉最後の一本は、フランシスコ・プラサ監督の『クリスマス・テイル』です。『スタンド・バイ・ミー』を思わせる雰囲気のこの作品、かなり異色です。主人公は、12才の5人の少年少女で、物語の舞台もわざわざ1980年代に設定してあるところも、どこか確信犯的です。
 クリスマスも間近いある日、5人の仲良しの少年少女が、森の中の穴に落ちているサンタ姿の女性を見つけます。とりあえず彼女を穴から助け出そうとしますが、警察に向かった少年が見た指名手配書によって、この女性が、大金を盗んで逃亡中の指名手配犯、レベッカであることを知ります。
 子供たちは警察への通報を取り止め、レベッカから金のありかを聞き出そうとします。最初はしらを切っていた彼女も、怪我と飢えから、とうとう金を渡すことを承知します。しかし今さら出す事はできない、と子供たちが内輪もめをしている間に、レベッカは死んでしまいます。恐くなった彼らは、警官に連絡しますが、たどりついた穴の底はからっぽでした。そしてクリスマス、子供たちのたまり場に現れたのは…。
 前半は、ひとりの人間の運命を手中にした子供たちの心理が描かれます。最初は面白がっていた彼らも、だんだんと不安になっていきます。散々もてあそんでおきながら、今さら出したら報復が恐い、として金だけ受け取り後は放置してしまおう、とするエウヘニオたちに対して、リーダー格のコルドや紅一点のモニは、約束は守るべきだとして、グループ内に反目が置きます。総じて、子供たちの残酷さ、身勝手さ、醜さが描き込まれているところに、見応えがあります。
 後半は、穴から抜け出したレベッカに追われる子供たちを描いて、アクション風に展開します。あれだけ弱って、怪我もしているレベッカがそんなに動けるのか、という点も不自然ですし、最後の撃退シーンにいたっては失笑もので、安っぽい展開です。ここの部分は、本当にB級で、退屈するのは否めません。
 しかし結末で、その印象は覆されます。それまでは、それこそテレビ映画のノリで冒険をしているつもりだった彼らに、現実が突き付けられるのです。自分たちが犯してしまったことに愕然とする子供たち。今までの安っぽい演出は、このためだったのか、と感心させられました。
 相手が強盗犯とはいえ、残酷な行為を繰り返す子供たちを描いている前半は、見ていてかなり不快感を感じる方もいるでしょう。レベッカをもっと重罪人、たとえば殺人犯などに設定してあれば、もう少し子供たちの行為にも説得力が増したのに、とは思いますが、子供の理不尽な残酷さを描く、という点を考えると、これはこれでよかったのではないかとも思えます。
 テレビやフィクションに影響されて行動してしまう子供たち、という極めて現代的なテーマを、いかにもわかりやすく描いた作品として、なかなかの佳作ではないかと思います。ただ、中盤かなりだれるので、もっと時間を刈り込んでいた方がよかったのは確かですね。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画

この記事に対するコメント
マイ・ベスト
私が観た4本のスパニッシュ・ホラー・プロジェクト中、これがベストでした。
kazuouさんの評のとおり相当破綻しているのですが、それを補って余りある余韻が残る。
洋の東西を問わないホラー・ラブを感じました。
【2006/12/27 22:07】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

なかなかですね
前半の安っぽい80年代風の演出が効果的だったと思います。そのせいで結末の余韻が生きていますね。
とりあえず、これで〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉は全部観た事になるわけですが、宣伝文句の「ハズレなし」は嘘ですね(笑)。
出来不出来の差が激しいです。個人的に面白かった順にあげさせてもらうと、
1『ベビー・ルーム』、2『クリスマス・テイル』、3『リアル・フレンド』、4『エル・タロット』、5『産婦人科』、6『悪魔の管理人』という感じです。
全体にかなりアメリカナイズされた印象で、スペインっぽさというかヨーロッパらしさがあまり感じられなかったのが残念です。ヨーロッパホラー特有の重苦しさがないのは評価できるんですが、もうちょっと何かが足りない、という作品が多い気がします。
『クリスマス・テイル』『リアル・フレンド』『エル・タロット』などはどれも、少年期の心理をあつかっているところが、ある程度成功の原因でしょう。
でも結局、SF的なアイディアをからめた『ベビー・ルーム』が一番面白かったというのは、やっぱり個人的な趣味の問題でしょうか。
【2006/12/27 22:37】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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