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運命の双子  ブライアン・W・オールディス『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』
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 ブライアン・W・オールディス『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(柳下毅一郎訳 河出文庫)は、ロックスターとして成功した結合双生児の数奇な運命が語られていくという中篇作品です。

 英国の僻地、レストレンジ半島で生まれ育ったトムとバリーのハウ兄弟は、結合双生児でした。さらにバリーの肩には目覚めたことのない第三の頭が生えていたのです。音楽業界の大物ザック・ベダーウィックに見出された兄弟はミュージシャンとしてデビューし、瞬く間にスターとなりますが…。

 スターとなった結合双生児の兄弟の数奇な人生が語られていくという作品です。兄弟の死後(彼らが亡くなったことは初めから明かされています)、関係者たちがそれぞれハウ兄弟について語るという形で、それぞれの章が構成されています。
 ハウ兄弟は胴体から結合している双生児で、内臓の一部や下半身を共有しています。温厚なトムに比べ、バリーは激情的で日常的にたびたび問題を起こします。後には彼らの「恋人」となるローラ・アッシュワース、そしてローラに恋情を抱くポールを挟んで、複雑な関係にも陥ることになります。
 スターとしての活躍が描かれる部分はごく短く、彼らが引退してからの生活の方がむしろメインとして描かれていますね。

 結合双生児ならではの、互いに対する嫉妬と憎しみ、それらが悲劇に至るまでの過程が描かれます。さらに後半では、ずっと眠っていたはずの第三の頭の存在がクローズアップされ、幻想小説的な味わいも強くなってきます。
 双生児の「情念」と「心理」がメインのお話だとは思うのですが、あまりドロドロした感じがしないのは、語りが関係者の間接的な視点を通しているせいもあるのでしょうか。

 語り手の中では、兄弟に対して一番同情的な視点であるのが、彼らの実姉ロバータ・ハウ。身近な人物であるだけに、彼らの最期を見届けるのもロバータになります。兄弟の精神的な危機を助けようとするものの、結局は守り切ることはできません。
 また、兄弟の恋人として登場するローラもかなりエキセントリックな人物で、彼女の前歴が語られる部分も興味深いです。

 風変わりな双子の運命を語った奇譚といった趣の作品となっていますね。第三の頭の存在がクローズアップされるクライマックスでは、怪奇味もかなり強く、ホラー小説として読むことも可能なようです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
twitter上でも活動しています。アカウントは@kimyonasekaiです。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」も主宰してます。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド 増補版』『奇妙な味の物語ブックガイド』『海外怪奇幻想小説ブックガイド1・2』『謎の物語ブックガイド』『海外ファンタジー小説ブックガイド1・2』『奇想小説ブックガイド』『怪奇幻想映画ガイドブック』を刊行。「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」も作成しました。



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