消えた胎児  ナルシソ・イバニエス=セラドール監督『産婦人科』
B000JVS58Eスパニッシュ・ホラー・プロジェクト 産婦人科
ニエベ・デ・メディーナ; モンセ・モスタサ; アレハンドラ・ロレンソ ナルシソ・イバニエス=セラドール
video maker(VC/DAS)(D) 2006-12-22

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 〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉の一本『産婦人科』は、ナルシソ・イバニエス=セラドール監督の作品。彼は、大人を襲う子供たちを描いたショッキングなホラー『ザ・チャイルド』で知られる人ですが、この作品でも同じく「子供」がテーマになっています。
 未婚の母である看護婦グロリアは、友人の産婦人科医アナの家に、一緒に住まないかという誘いを受け、承知します。娘ビッキーの学費や家賃の値上げで困っていたグロリアにとっては、願ってもないことでした。診療所兼自宅で、アナの助手として働くことになったグロリアでしたが、広く静かな家に時々、妙な気配がすることに気付きます。
 そんな折り、グロリアは、アナから診療所で行っている裏の仕事を手伝ってくれないかと、打ち明けられます。それは、望まぬ妊娠をしてしまった女性に堕胎を行うこと。アナに対する恩義もあり、ためらいながらも、グロリアはその仕事を手伝うことになります。新しい生活にも慣れつつあったグロリアでしたが、つきあっていた男との間に子供ができてしまったことを知ります。アナは激怒し、堕胎を勧めます。
 弟を欲しがるビッキーの姿を見て、一時は生むことを決心したグロリアですが、経済的な不安から、結局は堕胎を決心します。アナの手で堕胎手術を受けたグロリアは傷心で眠りにつきます。一方、アナが、手術室から目を離したすきに、なんと堕胎した胎児の姿が消えていることに気がつきます。時を同じくして、屋根裏で見つけたという箱を手もとから離さなくなったビッキー。まさか…と思いながらも、アナは不安を隠せません。
 その後、堕胎手術を受けにやってきた若い女性が、診療所内で殺されているのが発見されるのですが…。
 ミステリアスな要素が散りばめられた作品です。どうやらレズビアンの気があるらしい産婦人科医アナ、行方知れずの前住人、隣に住む寝たきりの老女とその狂信的な妹、ビッキーが手もとから離さない謎の箱。魅力的な謎がたっぷりなのですが、これらの要素や伏線が、ほとんど発展もせず、解消もされないところに致命的な弱点があります。ただ、作品内の雰囲気を高めるための小道具としてしか、機能していないのです。
 唯一、物語のミスディレクションとして、ビッキーの箱の謎が生かされていますが、それ以外は完全に物語が破綻しているとしかいいようがありません。さらに致命的なのは結末。唐突に打ち切られたかのような印象を受けてしまいます。好意的に見れば、意味をとれなくもないのですが、それにしても、それまでの展開からすると、不自然すぎます。
 題材が題材だけに、流血シーンが満載かと思いがちですが、意外なほどその種のシーンはありません。殺人シーンも直接描写は全くなく、間接的なものになっていますし、堕胎シーンに関してもあっさりとしています。全体に演出面に関しては、抑制が利いていて、かなり洗練されている印象を受けるので、脚本面でも、もっとしっかりしていれば、佳作になったのではないかと思うと残念ですね。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画

この記事に対するコメント

スパニッシュ・ホラー・プロジェクトの未見の2編中の1篇です。
観なくて正解?
どうも抵抗を感じる素材ですが、ホラーにタブーはないと確信しているので、あながち否定できませんね。スパニッシュ・ホラーのレベルは高いのでしょうか?
【2006/12/27 22:12】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

観なくて正解
観なくて正解、だと思います。
序盤で、伏線というか、謎がかなりばらまかれて、ものすごく期待感を抱かせるのですが、それが全て肩すかし…というのが、悲しいです。これ結末の処理の仕方によっては、かなり傑作になり得たんじゃないかと思うんですよね。雰囲気も悪くないし。
結末は完全になげやりです。セラドールはスペインホラー界では、一応巨匠扱いだし、このシリーズの監修者でもあるのに、実作がこれでは、若いものに示しがつきませんね。
【2006/12/27 22:23】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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