お友達といっしょ  エンリケ・ウルビス監督『リアル・フレンド』
B000HXE3IKスパニッシュ・ホラー・プロジェクト リアル・フレンド
ゴヤ・トレード; ネレア・インチャウスティ; ホセ・マリア・ポウ エンリケ・ウルビス
video maker(VC/DAS)(D) 2006-10-27

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 ホラー映画競作シリーズ〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉の一本、エンリケ・ウルビス監督『リアル・フレンド』は、想像力の豊かな少女を主人公にした、変わり種の作品。この主人公が、ホラー小説や映画のファンであるというところが、ホラー映画ファンの心をくすぐります。ちなみに、監督のウルビスは、『ナインスゲート』の脚本家だそうです。
 小さいころに父親を亡くし、母親と二人暮らしをしている少女エストレイヤ。仕事の忙しい母親は、不在がちで、エストレイヤはホラー小説やホラー映画を見たりして過ごしています。彼女の友達は、ホラー映画の怪物たち。『悪魔のいけにえ』の殺人鬼レザーフェイスを空想上の友達として、寂しさをまぎらわせていました。
 そんなある日、エストレイヤの前に、映画で見た吸血鬼そっくりの男が現れます。彼女は、男とすっかり仲良しになります。しかし、ことあるごとに、空想の友達の話をするエストレイヤを、母親は心配します。そして、ある夜、とうとうエストレイヤは「吸血鬼」を夕食に連れてくるのですが…。
 ホラーというよりは、ファンタジーといった方がふさわしい、不思議な感触の作品です。空想上の友達、この作品の場合「レザーフェイス」なのですが、それを少女の空想だけでなく、現実の日常生活の場面にも登場させてしまう、というところが、なかなか面白い試みになっています。
 学校の授業中にエストレイヤのとなりに座ったレザーフェイスが、他の少女にいたずらをしようとするのを叱る場面など、じつにシュールな光景で、おかしなユーモアをたたえています。いわば映画自体が、少女の空想的な視線から作られているわけですね。
 それだけに、作品中で起こる出来事が、実際に客観的に起こった出来事なのか、少女の空想なのかが、はっきりとしない仕組みになっています。画面に登場する怪物の存在だけでなく、友達になった男は、本当に吸血鬼なのか。さらに言えば、母親は本当に管理人の男と恋仲になっているのか、という現実生活におけるレベルの出来事さえ、事実なのかどうかが、判然としないのです。
 作品の後半、死んだはずの父親の正体、そして母親の過去などが、少女の聞いていたものとは違うことが仄めかされます。それに対して、事実を隠そうとする母親。そして醜い事実を聞きたくないという、少女自身の望みに従って、レザーフェイスは現実を抹殺しようとするのです。
 身も蓋もない、きわめて現実的な話を、少女の空想的な視線を通して語るという、考えるとかなり技巧的な作品です。漫然と見ていると、冗長な話だととられかねないのですが、いま語られていることが事実なのか、それとも少女自身の空想(希望)なのかと、注意しながら見ると、なかなか面白い発見のある、刺激的な作品でしょう。

この記事に対するコメント
競作
シリーズ6本中観ていない2本の1本です。
ファンタジー系でしたか。観た4本がヴァラエティはあったもののけっこうきついホラーだったので、シリーズ全体のバランスはとれているということになるのでしょうか。
小説の書き下ろしアンソロジーもそうですが、事前にテーマが偏らないように調整しているのか気になります(愛読している井上雅彦の書き下ろしホラー短編アンソロジー”異形コレクションシリーズ”でときどき発想が重なる作品があり(なにしろテーマ指定)、まさに競作になっています)。
というよりも、監督(or作家)の作風を考えて誰を選ぶかが企画者の腕の見せ所なんでしょうね。
【2006/11/14 21:04】 URL | 迷跡 #- [ 編集]


期待していたのとは違いましたが、なかなか面白い作品でしたよ。パロディとはまた違うやり方で「レザーフェイス」が非常にうまく使われていて、感心しました。こういうパターンの作品は、初めてじゃないでしょうか。
書き下ろしアンソロジーなんかでは、多少のテーマ調整はあるみたいですね。最終的にネタがかぶる場合もあるようですが、それはそれでしょうがないと。やっぱり人選の問題が一番なんでしょう。今回の〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉は、日本人にはあまり馴染みのない人が多かったので、なんとも言えませんが(セラドールとバラゲロぐらいしか知りませんでした)。
そうですか、残りはきつめのホラーですか。楽しみですね(笑)。
【2006/11/14 21:14】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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