いなかった男  アレックス・デ・ラ・イグレシア監督『ベビー・ルーム』
B000HXE3IAスパニッシュ・ホラー・プロジェクト ベビー・ルーム
フアン・ハビエル・グティエレス; ソニア・レオノール・ワトリング; ドミンゴ・サンチョ・グラシア アレックス・デ・ラ・イグレシア
video maker(VC/DAS)(D) 2006-10-27

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 スペインで制作された、ホラー映画競作シリーズ〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉。DVD化されたのを機に、その一本、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督『ベビー・ルーム』を見てみました。
 これは面白い。オーソドックスな「幽霊屋敷もの」と思わせておいて、後半ひねる展開は、なかなか斬新です。
 赤ん坊が生まれたばかりの若夫婦フアンとソニア。二人は、建てられたのは古いものの、きれいにリフォームされた家に引っ越してきます。姉夫婦からのプレゼントの中に、受信機を見つけた二人は、面白半分に、赤ん坊のいるベビー・ルームにそれを置いてみます。
 聞こえてきたのは、赤ん坊の笑い声と、そして別の男の声! あわててベビー・ルームにかけつけたフアンでしたが、そこには誰もいません。警察に連絡し、防犯設備をとりつけたものの、不安に駆られたフアンは、今度は赤外線テレビモニター付きの受信機を購入し、ベビー・ルームに設置します。
 そこでフアンが見たのは、赤ん坊の前に座る男。包丁をつかんで駆けつけたフアンですが、そこはまたしても赤ん坊以外だれもいない部屋。しかし、男を直接目撃していないソニアは、フアンの精神がおかしくなっているのではないかと、疑念を抱きはじめます。そしてある夜、侵入者と勘違いして妻と子を傷つけそうになるフアン。恐れを抱いたソニアは、実家に戻ってしまいます。
 そして精神的に消耗したフアンが、一人で受信機を見ていると、そこには引きずられていく人間の足が…。
 因縁のある、いわくつきの家。ささいな事でたびたび起こる夫婦喧嘩。精神のバランスを崩していく夫。夫を恐れはじめる妻。と、今となっては定番となりつつある「幽霊屋敷+サイコ」ホラーとしてのオーソドックスな展開は、新味はないものの楽しめます。夫が目撃したことを信じない妻、というお約束の展開も効果的です。
 ここまでは「普通」のホラーなのですが、この後の展開がじつに面白いです。詳しいことを書くとネタバレになるので書きませんが、いわゆる「SF的」な設定が導入されるのです。かといってジャンルがSFにシフトするのではなく、その後もホラーとして進むところが、興味深いところです。
 結末を不安を持たせるシーンで終わらせるところも、このジャンルがよくわかっているな、という感じ。T・L・シャーレッド『努力』やデーモン・ナイト『アイ・シー・ユー』をホラー風に撮った作品だと言えば、わかる人にはわかるかも。とにかく、ケレンに満ちた外面上の演出ではなく、あくまで「お話の面白さ」を追求したホラー映画といえるでしょう。

テーマ:DVD - ジャンル:映画

この記事に対するコメント
スパニッシュ・ホラー・プロジェクト
この夏WOWOWでも放映された全6作品の最初のものですね。『ベビー・ルーム』を含む4本を深夜一人で観ていたらけっこう涼しくなれました。スペインのホラー侮るべからず!
タロットカードを小道具に使った4作目が一番好きですね、自分も趣味なので。
kazuouさんによる全作品のレビューを読みたい(笑)
【2006/11/11 18:25】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

かなり期待できそう
以前いただいたコメントの中で、迷跡さんが言及されておられたので、気になっていた作品です。たしかに面白かったですね。SF的な設定をうまくホラーに生かした秀作だと思います。
ホラーの競作ということでは、近年アメリカで作られた〈マスターズ・オブ・ホラー〉と比較したくなります。〈マスターズ・オブ・ホラー〉は有名なホラー監督を集めていますが、内容自体はただのスプラッターばかりで、あまり感心しませんでした。
まだ一本しか見ていないので、何とも言えませんが、〈スパニッシュ・ホラー・プロジェクト〉の方が質は高そうです。シリーズを制覇したくなりましたね。DVDは毎月二本発売だそうで、次はとりあえず『リアル・フレンド』を見る予定です。
【2006/11/11 18:43】 URL | kazuou #- [ 編集]


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