《短篇小説の快楽》発刊
 先日の記事で『短篇小説の快楽』というブックガイドを紹介しましたが、それと同名のシリーズ《短篇小説の快楽》が国書刊行会から、刊行されることになったそうです。タイトルからして、短篇好きとしては、要注目のシリーズなのですが、ラインナップがまたマニアック。

ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』12月刊
キャロル・エムシュウィラー『すべての終わりの始まり』
レーモン・クノー『あなたまかせのお話』
アドルフォ・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』
イタロ・カルヴィーノ『最後に烏がやってくる』

 ウィリアム・トレヴァーは、この中では、いちばん名前が知られていない作家でしょうか。アイルランドの作家で、短篇の名手と言われている人です。邦訳もあって、長編では『フェリシアの旅』(角川文庫)、短篇も雑誌やアンソロジーなどに、いくつか収録されています。ジャンル作家というわけではないようですが、短篇をいくつか読んだ感じでは、パトリシア・ハイスミスとかルース・レンデルとかに近い味のする心理小説的な作風が持ち味のようです。先日読んだ『ピアノ調律師の妻たち』(朝日新聞社『むずかしい愛』収録)は、ジャンル云々以前に、すごくインパクトのある作品でした。ちなみに、以前書いた感想はこちら
 キャロル・エムシュウィラーは、女流SF作家ですが、SFアートの巨匠エド・エムシュウィラーの夫人としての方が有名かもしれません。いくつか邦訳短篇がありますが、繊細な筆致は感じられるものの、とらえどころのない感じのする作家ですね。
 レーモン・クノーは『地下鉄のザジ』『はまむぎ』『文体練習』などで知られる、フランス冗談文学の巨匠。まあ、フランスの筒井康隆みたいな人です。タイトルからしても、実験的なユーモア短篇集になるはず。
 アドルフォ・ビオイ=カサーレスは、ボルヘスの盟友にして、ラテンアメリカ文学の巨匠。知名度の割には、あまり邦訳に恵まれていない人ですが、シリーズ中では、個人的にいちばん期待している作品集です。SFやファンタジー的な要素が濃い作品を書く人で、邦訳のある短篇では『大空の陰謀』(河出文庫 鼓直編『ラテンアメリカ怪談集』収録 )、『パウリーナの思い出に』(白水uブックス マイケル・リチャードソン編『ダブル/ダブル』収録)、あとタイトルがすごい『烏賊はおのれの墨を選ぶ』(国書刊行会 ボルヘス編 バベルの図書館20『アルゼンチン短篇集』収録)などが印象に残っています。とくに『パウリーナの思い出に』は、〈分身〉テーマの幻想的なラブストーリーで、非常に面白いです。
 イタロ・カルヴィーノは、いわずとしれたイタリアの作家。リアリズムからSF、寓話、メタフィクションと変幻自在な作風を誇る天才肌の作家。この人、時期によって極端に作風に差があるんですが、この作品集はいつごろの時期のものなんでしょうか。物語的要素の強い作品だといいんですが。

テーマ:オススメ本!! - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

 キャロル・エムシュウィラー!
 80歳を超え,なお,かくしゃくとして,作品を発表する女流SF作家。
 「順応性」,「浜辺に出かけた日」なんか好きですねえ。
 それにしても,国書刊行会はやりますなあ。
 だいたい,何部ほど出れば,まあまあ採算に乗るのでしょうや。
 キャロル・エムシュウィラーが,それなりに有名であってもしてもねえ。
【2006/10/29 23:56】 URL | おおぎょるたこ #- [ 編集]

楽しみです
シリーズの他の顔ぶれをみる限り、キャロル・エムシュウィラーもSF小説というよりは、ノンジャンルの「短篇」として出そうという試みなんでしょうね。国書刊行会にはすでに〈未来の文学〉というSFシリーズがあるので、そちらに組み込んでもよかったような気もします。あっちはニューウェーブ作品が対象だからでしょうか。
『順応性』はいい作品ですね。エムシュウィラーの作品は、今まで読んだものはどれもまあまあ面白かった覚えがありますが、まだ作風のトーンを掴むほど読んではいないので、短篇集の出版、楽しみにしています。
国書の出版物は初めからマイナー指向で、少人数を対象にしているので、ものすごく少部数だと聞いたことがあります。それにしても、よく毎回こんなマニアックなシリーズを企画できるものだと、驚かされますね。
【2006/10/30 07:05】 URL | kazuou #- [ 編集]


初めまして。
履歴から飛んできました、ご訪問ありがとうございます。
海外マイナー短編ですか?
SFとかブラックならばまだ読むんですけど、難しそうですね。
ご紹介内容から 『ピアノ調律師の妻たち』 に目を通してみたいです。

【2006/10/31 02:30】 URL | 猫まんま #XPf/GE5Q [ 編集]

>猫まんまさん
はじめまして。
僕は、海外の短篇が好きで、よく読むのですが、時折すごい傑作に会えるのが嬉しいところです。『ピアノ調律師の妻たち』は、テーマも興味深いものがありますが、お話自体もすごく面白いので、機会があったらお読みになるといいですよ。
【2006/10/31 07:00】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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