〈KAWADE MYSTERY〉と〈ダーク・ファンタジー・コレクション〉
484600760X人間狩り
フィリップ・K. ディック Philip K. Dick 仁賀 克雄
論創社 2006-08

by G-Tools
4846007618不思議の森のアリス
リチャード マシスン Richard Matheson 仁賀 克雄
論創社 2006-08

by G-Tools

 シオドア・スタージョン、デイヴィッド・イーリイ、ヘレン・マクロイ、ジェラルド・カーシュ、A・H・Z・カー、ジャック・リッチーなど、マイナーな欧米作家の短編集を次々と出版していた〈晶文社ミステリ〉。 
 現在の短編集ブーム(?)のきっかけを作ったのも、このシリーズの影響によるところが大きいでしょう。それだけにジャック・リッチーの本を最後に〈晶文社ミステリ〉が終了するという知らせは、非常に残念なものでした。
 ですが、このシリーズを河出書房新社が引き継いで、あらたにミステリシリーズ〈KAWADE MYSTERY〉を発刊することになったそうで、非常に喜ばしい限りです。
 本棚の中の骸骨に、そのラインナップが紹介されていたので、紹介しておきたいと思います。

ジャック・リッチー『10ドルだって大金だ』 10月刊
マイクル・イネス『アララテのアプルビイ』
法月綸太郎編 ロバート・トゥーイ『物しか書けなかった物書き』
グラディス・ミッチェル『The Mystery of a Butcher's Shop』

 ジャック・リッチーの短編集第二弾も、もちろん嬉しいのですが、何といっても、注目すべきはロバート・トゥーイ! 個人的に大好きな作家です。人を喰ったユーモア、という点ではジャック・リッチーと共通するところがありますが、トゥーイはもっと無気味でブラックな要素が強い作家ですね。
 短編はいくつも訳されていますが、雑誌に載ったきりで、単行本は出ていないはず。リッチーの短編集が出たときに、この分だとトゥーイも出そうな気がするなあ、とか思ってたら案の定。快挙ですね。
 ちなみに、このブログの「埋もれた短編発掘!」でも二編ほど紹介しています(『物しか書けなかった物書き』『階段は怖い』)。タイトルストーリー以外の収録内容はまだ不明ですが、ものすごい傑作なので、できればぜひ『階段は怖い』も入れて欲しいところです。以前書いた『物しか書けなかった物書き』の感想はこちら『階段は怖い』の感想はこちらになっています。
 でもこの〈KAWADE MYSTERY〉、河出の既存のシリーズ〈奇想コレクション〉とちょっとかぶるような気もします。編集中のスタージョンもあるそうですが、どちらのシリーズで出すんでしょうか。まあ、ファンとしてはどちらでも構いませんが。
 あともうひとつ、先日の記事でもちょっと紹介した論創社の〈ダーク・ファンタジー・コレクション〉。こちらのラインナップも見逃せません。

フィリップ・K・ディック『人間狩り』 仁賀克雄訳
リチャード・マシスン『不思議の森のアリス』 仁賀克雄訳
アントニー・バウチャー アントニー・バウチャー短編集  白須清美訳
ヘンリー・スレッサー ヘンリー・スレッサー短編集  森沢くみ子訳
オーガスト・ダーレス編 アーカム・ハウス・アンソロジー  三浦玲子訳
フィリップ・K・ディック フィリップ・K・ディック短編集  仁賀克雄訳
シーバリー・クイン シーバリー・クイン短編集  熊井ひろ美訳
チャールズ・ボウモント チャールズ・ボウモント短編集 仁賀克雄訳
ヴァン・サール編 英国ホラー・アンソロジー 金井美子訳

 監修者といい、ラインナップといい、かっての〈ソノラマ海外シリーズ〉を彷彿とさせるシリーズですね。〈ソノラマ…〉と同じように、すぐ入手困難になりそうな気もしますが、これだけマニアックなタイトルを並べてくれるのは、嬉しいところです。
 隔月刊だということですが、今までの様子を見る限り、この出版社、予告から実際の刊行まで異様に速いのが持ち味のようで、その点は期待できそう。
 すでにディック『人間狩り』 とマシスン『不思議の森のアリス』 は刊行されていますね。本邦でもいくつか作品集が出ている作家はともかく、単行本のまだない、アントニー・バウチャーやシーバリー・クインあたりに、要注目。
 ちなみに『人間狩り』 は、かってちくま文庫から出ていたものの再刊だったのが残念。もう一冊刊行予定のディックの短編集は、未訳のものであることを期待しています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ミステリシリーズ〈KAWADE MYSTERY〉…楽しみです!有難う河出書房さん(^_^)
kazuouさん大プッシュの「ロバート・トゥーイ」是非読んでみたいです。
10月刊か~忘れないようにメモメモ。
【2006/09/05 22:33】 URL | そら #- [ 編集]


ダーク・ファンタジー・コレクション、くすぐる内容のラインナップですね。
シーバリー・クィンは”ジュール・ド・グランダン”選ということもあってどんな話を
もってくるのか気になります。

売り上げ好調だと以下続刊、となるのでしょうか。
【2006/09/05 22:58】 URL | shen #SgmGMb7Y [ 編集]

>そらさん
〈KAWADE MYSTERY〉、公開されているラインナップはまだ4作ですが、たぶんもっと続刊が出るかと思います。たしか晶文社ミステリ用に編集していた作品集があるとかないとか、言っていましたし。
ロバート・トゥーイは、オススメですよ。僕の好きな短編作家のなかでも、上位にランクされる作家です。編者の法月綸太郎の名前で、それなりに売れるといいんですが。そうすればトゥーイ第二弾も出るかも(笑)。
【2006/09/06 07:28】 URL | kazuou #- [ 編集]

>shenさん
〈ダーク・ファンタジー・コレクション〉は、もうラインナップを見ただけで、買い決定です。マシスンの巻はすでに手に入れたのですが、もったいなくて読めません。
シーバリー・クィンも創元から傑作選が出る、という噂もありましたが、論創社に先を越されてしまった形ですね。「ジュール・ド・グランダン」もの、ということですが、できればあの名作『道』も入れてほしいところです。
続刊はぜひしてもらいたいところです。かってのソノラマシリーズの遺産を復活させるというのであれば、アルジス・バドリスとかフリッツ・ライバーとかも欲しいところ。そうだ!ヘンリー・カットナーあたりも出してほしいですね。
【2006/09/06 07:33】 URL | kazuou #- [ 編集]


監修が仁賀克雄でなければもっと素直に喜べたんですがねえ……
ディックを二冊も入れたりするあたりが実に香ばしいというか仁賀克雄の独断場っぽいです。
ジェラルド・カーシュの「壜の中の手記」が角川から文庫化されるので角川もちょっと期待できそうですが、単発なのかな。
【2006/09/06 17:27】 URL | Takeman #- [ 編集]

まあ、たしかに
ディックが二冊も入っているのは、ちょっとアレですね。その分もっと入れるべき作家があるような気が。シリーズが売れて、続刊がもしあれば、もう少し風合いも変わってくるのかもしれません。
そういえば、カーシュが文庫化だそうで。親本は持っているのですが、増補作品があるそうなので、とりあえず買いです。僕も、出版元が、角川なので、あれっ?と思いましたね。
【2006/09/06 18:25】 URL | kazuou #- [ 編集]


KAWADE MYSTERY、滅茶苦茶楽しみです。ロバート・トゥーイは全く名前を聞いたこともなかったのですが、kazuouさんの感想文を拝見したところ、凄くよさそうですね。早く読みたいです。
【2006/09/06 21:18】 URL | あや #mQop/nM. [ 編集]

>あやさん
コメントありがとうございます。こちらでは、はじめてだったでしょうか?
〈晶文社ミステリ〉の休刊にはすごくがっかりしていたので、〈KAWADE MYSTERY〉で再スタートという知らせを知って、喜んでおります。
ロバート・トゥーイは個人的に一押しの作家なので、とくに楽しみです。これを機会に、これからちょくちょく、トゥーイの短編紹介でも重点的にやろうかな?とか思ったりして。
【2006/09/06 21:32】 URL | kazuou #- [ 編集]


あ、そうでした、こちらでは“はじめまして”でした……(何かいきなり書いてしまってすみません。私のブログの方には何度かコメント頂いていたので、すっかりそのことを忘れてました……)。
私も本当に晶文社ミステリが終わってしまったのはショックでした。河出でもっと様々な奇妙な作品を出してほしいなと思います。
【2006/09/06 23:45】 URL | あや #mQop/nM. [ 編集]


ヘンリー・カットナーといえば、国書の「グラックの卵」(未来の文学)に一遍本邦初翻訳が
載っていますね。もっともこちらはユーモアSFでホラーではありませんが。
ムーアと結婚したことによって作風がかわってしまいましたが、それはそれで面白いので
こちらもどんどん翻訳されて欲しいものです。
【2006/09/08 19:33】 URL | shen #SgmGMb7Y [ 編集]

カットナー
shenさんもカットナーお好きでしたか。僕もこの作家、大好きなんですよ。『今見ちゃいけない』とか『大ちがい』『トオンキイ』なんか、本当に絶品です。古本屋で手に入れた『ボロゴーヴはミムジイ』は大切にしてます。ものすごく器用で何でもこなす作家、というイメージがありますよね。ムーアと結婚後の作風もわりと好きです。
河出の〈奇想コレクション〉あたりに、ぴったりの作家だと思うんですけどね。これだけ欧米の短編集が出るようになっても、カットナーの名前はなかなか出てこない!〈ダークファンタジー・コレクション〉に期待しましょう。
『グラックの卵』は、僕も早速手に入れました。けっこう既訳が多いのが残念でしたが。同じ浅倉久志編のアンソロジーであれば、むかし講談社文庫から出ていた『ユーモアSF傑作選』に勝るものはありませんね。
【2006/09/08 21:46】 URL | kazuou #- [ 編集]


どうも、こんばんは。
足跡から訪問してみました。

晶文社ミステリって休刊してしまったんですね。
とても残念です。
数年前のバークリーブームの時に晶文社からも5冊ほど翻訳され、晶文社って凄いなぁと思ったり、年末の各誌ミステリランキングでも上位の作品を翻訳していたので、ハードカバーはお財布には厳しいかったですが、楽しみにしていたシリーズでした。

新刊情報など、新しい情報には疎いですが、翻訳ミステリ好きですので、よろしくお願いします。
【2006/09/18 19:38】 URL | Cozy #E6kBkVdo [ 編集]

>Cozyさん
こんばんは、ちょくちょく拝見させていただいています。
そうですね、晶文社は〈晶文社ミステリ〉だけでなく、文芸部門の縮小ということで、とても残念です。昔出ていた〈文学のおくりもの〉シリーズを始め、最近ではチャペックの短編集だとか、ミステリ以外のものでも、けっこういいものを出してくれていただけに、感慨もひとしおです。
ただ、既刊を絶版にするわけではないらしいので、それだけは救いでしょうか。
さて、〈ミステリ〉のほうでは、河出書房にシリーズを引き継いでからも、マニアックなラインナップが変わらないところが嬉しいですね。これからの展開に期待しているところです。
【2006/09/18 21:03】 URL | kazuou #- [ 編集]


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フィリップ・K・ディックが好き

今日も「まるごと苺」を食べた。苺ばかりもあれなので、そろそろ他のに変えようか。生クリームも良いけどチョコレートも好きなんだな。フィリップ・K・ディックの「人間狩り」を読み終えた。論創社というところから出ている、「ダーク・ファンタジー・コレクション」と謳わ ネヤガワ・デイドリーム【2007/01/26 00:52】

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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