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閉ざされた町  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『七人の魔法使い』

七人の魔法使い 単行本 – 2003/12/17


 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの長篇『七人の魔法使い』(野口絵美訳 徳間書店)は、町を支配する七人の魔法使いの争いに巻き込まれた少年とその家族を描く、ファンタジー作品です。

 少年ハワードとその妹「スサマジー」ことアンシアの父親クェンティン・サイクスは小説家でした。ある日彼らの家に突然現れた大男「ゴロツキ」は、アーチャーという人物の使いで、サイクスが定期的に書いている二千語の原稿を取り立てに来たといいます。
 アーチャーはこの町を支配する七人の魔法使いの一人であるといいますが、サイクスの原稿のせいで彼を含む七人の魔法使いは皆、町から一歩も出られなくなっているというのです。やがてアーチャー以外の魔法使いたちも、ハワードたち家族の前に姿を現すことになりますが…。

 町を支配する七人の魔法使いの争いに巻き込まれた少年とその家族を描く、スラップスティックなファンタジー作品です。主人公ハワードの作家の父親の原稿には何らかの魔力があるらしく、その力によって魔法使いたちは町に閉じ込められているらしいのです。
アーチャーを始めとする魔法使いたちは町から出るために、ハワードたちの前に次々と姿を現すことになります。
 この魔法使いたちが、揃いも揃って変人で強烈なキャラクターとして描かれています。面白いのは、魔法使いたちには、町に関してそれぞれ管轄する部署があるというところ。法と秩序、音楽、犯罪、はたまた水道・ガス・電気などのインフラも、それぞれ分けられて担当しています。魔法使いたちが主人公たちを圧迫する手段も、魔法そのものによるというよりは、どちらかというとそうした「行政」を使ってくる、という面白い趣向です。電気を止められたり、税金を請求されたりと、いちいち手段が現実的で姑息なところに笑ってしまいます。
 次に現れる魔法使いがどんな人物で、どんな能力を持っているのか、というところにワクワク感がありますね。男なのか女なのか、どこにいるのか、何をしてくるのか? 彼らに会っているうちに、魔法使いたちを閉じ込めている本当の原因は、彼らのうちの一人にあることが分かってきます。すべてを仕組んだのは誰なのか? というのが分かる結末にはSF味も濃厚で驚かされます。

 頑固ながら落ち着いた気質の父親、芸術的センスに優れた音楽家の母親、激情的な妹スサマジーなど、主人公ハワードの家族たちのキャラクターも魅力的に描かれます。とくに後半、スサマジーとの兄妹関係に関しては、魔法使いたち同士の関係とも比較してクローズアップされることになり、作品のメインテーマとも関係してくることになります。

 町を仕切る魔法使いたちが、何やら行政を行う役所みたいに描かれていて、それもあって、彼らの「魔法」と世界観が上手く溶け込んでいます。果ては物語の舞台が「過去」や「未来」にまで広がるなど、そのスケールは壮大です。読み終えて、その壮大さ・複雑さにため息をついてしまうほどです。
 全体に陽気なトーンで描かれていますが、兄弟愛や家族愛など、真摯なテーマも盛り込まれている意欲的なファンタジーです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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