FC2ブログ
暗黒のロード・ノヴェル   ジョー・R・ランズデール『テキサス・ナイトランナーズ』

テキサス・ナイトランナーズ (文春文庫) 文庫 – 2002/3/1


 ジョー・R・ランズデールの長篇『テキサス・ナイトランナーズ』(佐々田雅子訳 文春文庫)は、死んだ友人に憑かれた不良少年の一行が、過去に暴行した女性を殺すため殺人を繰り返しながら追跡するという、ホラー・サスペンス作品です。

 不良少年クライドに暴行された女性教師ベッキーは、それ以来悪夢に悩まされていました。静養するため友人ディーンのキャビンを借り、夫の大学教授モンゴメリーと共にそこで過ごすことになります。
 逮捕されたクライドは収監された場所で自殺していましたが、クライドに心酔する友人ブライアンのもとに夢を通して、死んだはずのクライドが姿を現します。彼によればダークサイドで力を得るためにあえて命を絶ったというのです。
 かって殺し損ねたベッキーを殺せという指示を受けたブライアンは、彼女を殺すため、仲間たちと共に車を駆ることになります…。

 死んだ少年クライドに憑かれたブライアン一行が、殺人を繰り返しながら、女性教師ベッキーを付け狙うというホラー作品です。ベッキー夫妻がキャビンにいることを知ったブライアンたちが、そこに向かうのですが、その途中で出会った人々は、次々と殺害されていってしまいます。
 このブライアンが完全に狂っていて、相手を少し痛めつけるというレベルではなく、目に付いた人間を片っ端から殺して回るという強烈な人間として描かれています。銃で撃ち殺したり、焼き殺したりと、やりたい放題なのです。
 ブライアンは、死んだ少年クライドを生前から崇拝しており、死んでからもその人格に取り憑かれることになります。その結果、二重人格のような状態になっているのです。しかもクライドは、別次元にいるらしい超自然的な存在「剃刀神」に従っているようで、間接的にブライアンにもその支配が及んでいます。
 この「剃刀神」なる存在、剃刀を身につけた異形の存在で、ビジュアル的にもインパクトがあります。ただ、この異形の存在が直接現実世界に現れることはなく、暴力や破壊行為を働くのは、あくまでブライアン(と彼に寄生したクライド)です。

 戦闘行為に長けた警官たちもあっさりと殺されてしまうので、彼らを止めることができるのか、ましてやそうした行為とは縁遠いベッキー夫妻が殺されずに抵抗することができるのか? といったところが、読みどころの一つになっています。
 トラウマにより精神的に弱っているベッキーはもちろん、非暴力主義を掲げる夫モンゴメリーも、いざというときには役に立たなそうな人物であるだけに、ブライアン一行が近づいてくるごとに、どうなってしまうのかというサスペンスが強烈に感じられますね。

 ターゲットとなるベッキー夫妻よりも、ブライアン一行の方に圧倒的に存在感があります。暴走する車と共に暴力行為を繰り返していくブライアンたちの旅路のスピード感は強烈。まさに暗黒のロード・ノヴェルといった趣です。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/1306-151606fe
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する