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恐怖のツイスト  R・L・スタイン『恐怖のヒッチハイカー』『呪われたビーチハウス』
 年少読者向けホラーシリーズ<グースバンプス>で知られる、アメリカの作家R・L・スタイン。彼のノンシリーズのホラー作品もなかなかに面白い作品です。二作ほど紹介していきます。


恐怖のヒッチハイカー ヤングホラー・シリーズ (集英社文庫) 文庫 – 1997/6/20


R・L・スタイン『恐怖のヒッチハイカー』(馬場ゆり子訳 集英社文庫)
 短気で暴力的な青年のヒッチハイカーを乗せてしまった女性二人組を描く、サイコ・サスペンス作品です。

 休暇でフロリダにやってきた女性二人組、クリスティーナとテリーは、車を運転中、ヒッチハイクしていたハンサムな青年ジェームズを拾います。ジェームズを気に入ったクリスティーナに対して、テリーは彼に危険なものを感じていました。
 ジェームズは、食堂で冷たい態度を取ったウエイターに暴力を働いてしまいます。彼を乗せたことを後悔するテリーでしたが、クリスティーナはジェームズの危険な香りに魅力を感じていました。やがてジェームズのいとこポールの家にたどり着いた三人は、ポールの家に泊めてもらうことになりますが…。

 ヒッチハイクしている短気で攻撃的な青年を乗せてしまった女性二人組の恐怖を描くホラー作品、なのですが、一概にそういう作品にならないところに、この作品の面白みがあります。
 同乗しているうちに、いくつも問題を起こす青年ジェームズなのですが、彼の脅威とは別に、彼らを尾行する車が現れたり、車がなくなってしまったり、女性の片方が消えてしまったりと、いくつもの不条理で不穏な出来事が起こることになります。これらの出来事の原因はジェームズなのか? ラジオでも言及される殺人の犯人はジェームズなのか、それとも彼とは無関係の出来事なのか?
 ヒッチハイカーの脅威を描くシンプルなホラーと思っていると、次々と不穏な出来事が続き、事件の全体像が分からなくなってきます。女性二人組の過去に怪しい節もあり、誰が善人で誰が悪人かも混乱してくるという部分はサスペンスたっぷりです。
 後半では「どんでん返し」というほどではないですが「ひっくり返し」レベルの出来事が続き、読者を引き回してくれます。エンタメ・ホラーの快作といっていい作品ではないでしょうか。



呪われたビーチハウス ヤングホラー・シリーズ (集英社文庫) 文庫 – 1997/7/18


R・L・スタイン『呪われたビーチハウス』(黒木三世訳 集英社文庫)
 二つの時代を舞台に、ビーチハウス周辺で起きる殺人や行方不明事件を描いたホラー・サスペンス作品です。

 1956年の夏、マリアとエイミーは海に遊びに来ていました。ボーイフレンドのロニーとつきあっているエイミーを羨むマリアでしたが、マリアの前にも、ハンサムながら生真面目なバディと反抗児のスチュアート、二人の恋人候補の青年が現れます。
 ある日、友人たちは海の中でバディの水着を脱がせるといういたずらを仕掛けます。また、スチュアートに強引に誘われたマリアは、バディとの約束を反故にしてスチュアートとのデートに出かけてしまいます。その翌日、バディとマリアは海に出かけたまま行方不明になってしまいます。
 バディは海のそばにあるビーチハウスに住んでいると話していましたが、そこには誰も住んでいませんでした。バディの本名も家族がどこにいるかも全く分かりません。
 一方、現代では、ボーイフレンドのロスと共に海に遊びに来ていたアシュレーは、現地で出会った資産家でハンサムな青年ブラッドに惹かれていました。嫉妬深く強引なロスに冷めつつあったアシュレーは、ブラッドの誘いを受けて彼の家に遊びに行くことになりますが…。

 1956年と現代、二つの時代で、それぞれビーチハウスの周囲で発生する殺人や行方不明事件が描かれるという作品です。
 どちらのパートでも、男女の三角関係をめぐって不穏な事件が起こるという構成は共通するのですが、1956年では、明確に事件の犯人が分かるようになっています。
 犯人はサイコパス気質で犯行を繰り返した後、姿を消してしまいます。現代でも同じような男女の三角関係が描かれ、過去と同じような惨劇を予感させるのですが、単純な繰り返しにはならず、そこに謎のビーチハウスが絡んでくることにより、驚きの展開になってゆきます。
 リゾート地での若い男女たちの恋愛模様、次々と起こる殺人や行方不明事件…、ある種ステレオタイプな情景が展開されることから、単純なスラッシャー・ホラーだと思っていると、驚かされるかと思います。そこに超自然的な趣向が加わって、二つのパートの物語が合流するクライマックスには感心しますね。
 児童向け作品で知られる著者のスタインなのですが、本作品では登場人物の年齢層がちょっと高めになっているのと、作品の刺激度も高いことから、割と大人向けの作品といっていいのかなと思います。



テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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