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闇の図書館  ハンス=オーケ・リリヤ編『闇のシャイニング リリヤの恐怖図書館』

闇のシャイニング リリヤの恐怖図書館 (海外文庫) 文庫 – 2020/9/2


 ハンス=オーケ・リリヤ編『闇のシャイニング リリヤの恐怖図書館』(友成純一、白石朗、金子浩、金原瑞人訳 扶桑社ミステリー)は、世界最大のスティーヴン・キングのファンサイトを20年間運営してきた編者が、キングゆかりの著者たちに自ら執筆、掲載の交渉を重ねて編集したという、ホラー・アンソロジーです。

 海辺のコテージを訪れた作家が巨体の家主の夫人からインスピレーションを得て作品を書き始めるという「青いエアコンプレッサー」(スティーヴン・キング)、チャットで若い女性に恋した中年男性が彼女に会いに行くという「ネット」(ジャック・ケッチャム&P・D・カセック)、自身のホロコースト体験を描いた小説が評価され、トーク番組に出演することになった作家の葛藤を描く「ホロコースト物語」(スチュアート・オナン)、獣に変身する能力を持つ少女と女性警官の出会いを描いた「アエリアーナ」(べヴ・ヴィンセント)、天使によって昇天させられた聖人のペットがその影響で人間のように変容するという「ピジンとテリーザ」(クライヴ・バーカー)、妻子を失い、世界の終わりを待ち望む男の心理を描いた「世界の終わり」(ブライアン・キーン)、かって手にかけた少女の墓を訪れる男を描いた「墓場のダンス」(リチャード・チズマー)、カーニバルを訪れた少年たちが監禁された屋敷から逃げ出そうとする「炎に溺れて」(ケヴィン・キグリー)、遊園地を訪れた男が何処とも知れない世界に入り込むという「道連れ」(ラムジー・キャンベル)、老人を殺した男が自らに裏切られるという古典的作品「告げ口心臓」(エドガー・アラン・ポー)、愛する母親のために追い詰められた息子を描く「愛するお母さん」(ブライアン・ジェイムズ・フリーマン)、テーブルトークRPGの最中に本物の怪物を呼び出してしまった少年の恐怖を描く「キーパー・コンパニオン」(ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト)の12篇を収録しています。

 キングの作品を始め全体に短めの作品が多く、「小品集」といった趣が強いアンソロジーなのですが、なかでは「ピジンとテリーザ」(クライヴ・バーカー)、「炎に溺れて」(ケヴィン・キグリー)、「キーパー・コンパニオン」(ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト)などが印象に残る作品でしょうか。

 クライヴ・バーカー「ピジンとテリーザ」は、天使が存在する世界を描いたホラー・ファンタジー。天使によって聖人レイモンドは強制的に昇天させられてしまいます。その影響で、彼の部屋で飼われていたオウムのピジンと陸亀のテリーザは、人間のような姿に変容してしまいます。
 知能を得た二人は、天使に見つからないよう逃げ出すことになりますが…。
 天使がまるで「災害」のように描かれるのがユニーク。聖人とされた男も、それに値しないと判断された後、とんでもない姿にされたりと、バーカーらしいグロテスクな情景が展開される作品です。

 ケヴィン・キグリー「炎に溺れて」は、カーニバルを訪れた少年たちの恐怖体験を描くホラー。
 ジョニー、チップ、ボビーの三人の少年は、カーニバルを訪れ、エティエンヌ・ラルーという男が案内する屋敷で<炎に溺れて>というイベントにチャレンジしますが、屋敷に閉じ込められてしまいます。
 脱出しようとしますが、屋敷にはところどころに罠がしかけられていました…。
 いわゆるお化け屋敷テーマの作品ですが、それぞれのトラップが死に直結するレベルのものであったり、ある生き物が大量に襲ってきたりと、生理的にも気色の悪い作品になっています。後半、少年たちが反撃に転ずる部分は爽快ですね。

 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト「キーパー・コンパニオン」は、テーブルトークRPGをテーマにした作品。
 自尊心の強い少年アルバートは、テーブルトークRPGのゲームマスターとして評判を得ていました。クトゥルフをテーマにした<クトゥルフの呼び声>にのめり込んだアルバートは、いじめられっ子の少年オズワルドの参加希望を断り続けていました。ようやくオズワルドの参加を許可するものの、彼の知識はアルバートに劣らぬもので、皆の評判も上々なのを見てアルバートは不満に思います。ゲームの途中、即興の呪文を唱えた後、気がつくとアルバートの目の前に奇怪な怪物が出現していました。他の者には見えないらしい怪物に恐怖感を抱くアルバートでしたが、やがて怪物が自分の力の源泉になっているのではと考えたアルバートは全能感を抱くようになっていきます…。
 クトゥルフのゲームを楽しんでいた少年が、本物の怪物を呼び出してしまう、という物語。怪物が何か行動を起こすわけではなく、ずっとそばに存在し続けるだけ、というシチュエーションなのですが、それに対する少年の意識の変化を描くという、ユニークな作品になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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