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快楽の土地  オーブリ・ビアズレー『美神の館』

美神の館 (中公文庫) 文庫 – 1993/1/1


 オーブリ・ビアズレー『美神の館』(澁澤龍彦訳 中公文庫)は、耽美的・幻想的な画風で知られるイギリスの画家ビアズレーによる、芸術至上主義的な幻想小説です。

 騎士タンホイザーはウェヌスの丘にたどり着き、そこで女主人ウェヌスやその従者たちに歓待され、歓楽の限りを尽くします…。

 お話としては、上記のような至極単純なストーリーなのですが、主人公とウェヌス、またその従者たちとかわす倒錯じみた歓楽が幻想的に描かれていくという、その部分に魅力のある作品になっています。いわば、ポルノグラフィー的な作品なのですが、ポルノグラフィーと呼ぶには文学性・幻想性が強いです。

 作家や芸術家、事物といった固有名詞がやたらと頻出して衒学的な香りも強いのですが、その大部分は実在せず、作者の創作になるものなのだとか。
 献辞が捧げられている、高位の聖職者らしき人物「ペッツォーリ師」自体が架空の人物だというのだから、人を食っていますね。実際読んでいて、登場する人物や事物が実在するのかどうか、なかなか判別がつかなかったりと、作者の「いたずらっ気」が強烈です。
 テーマとなっている、タンホイザーとウェヌスの伝説は13世紀のものらしいのですが、ビアズレー作品では、物語の引き合いに出される芸術家は現代やそれに近い時代の人だったりします。ただ、作品の雰囲気を考えると、これはわざとやっているのでしょう。

 本職が画家の人らしく、描写は視覚的で幻想的。官能的な要素が強いのに加えて、作者独特のひねくれたユーモアが加わって、独特の作品になっています。未完の作品だそうですが、もともとストーリーはあってないようなもので、独自の描写を楽しむタイプの作品ではあるので、未完であっても、作品として楽しむのには、あまり影響はないかと思います。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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