想像力の旅  ゴンサルヴェス絵、トムソン文『真昼の夢』
4593504694真昼の夢
セーラ・L. トムソン Sarah L. Thomson Rob Gonsalves
ほるぷ出版 2006-07

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 Acrobatic_Engineering.jpgロブ・ゴンサルヴェスとセーラ・L.トムソンのコンビによる絵本の第二弾『真昼の夢』(金原瑞人訳 ほるぷ出版)は、相変わらずゴンサルヴェスのだまし絵が魅力的な本です。
 前作『終わらない夜』は、まさに「終わりのない夜」を視覚化したような絵を集めた秀作でした。今回は、タイトルを見るとわかるように「真昼」の絵、白昼での幻想的な光景を描いた絵が多く集められています。前作の「夜」と今回の「昼」と、タイトルとコンセプトがうまく対応しているのにも、感心させられます。
high_park_pickets.jpg 文章に関しては、今回もトムソンの文は冴えません。というか、ゴンサルヴェスの絵自体に「物語性」が非常に豊富に含まれているので、どんな文章をつけても蛇足のような気がしてしまうのも確かです。その意味では、トムソンは絵の雰囲気をうまく壊さないように文章をつけている、といえるのかもしれません。
 ゴンサルヴェスの絵は、だまし絵の巨匠エッシャーの作品から刺激を受けているのがよくわかるのですが、それをさらに徹底したリアリズムで描いたところに特色があります。細部が非常にディテール豊かで現実味があるのにもかかわらず、全体として何ともいえない幻想的な雰囲気を醸し出すことに成功しています。
written_worlds.jpeg この画家は、やっぱり「夜」の光景を描いた方が精細があると思うのですが、「昼」の光景もなかなか捨てがたいものがあります。今回の絵の中で一番気に入ったのは巻末の『written worlds』という作品。図書館の光景を描いているのですが、そこから様々な世界へと扉がつながっています。「想像力の旅」を視覚化したような、本好きにはたまらない魅力を持った絵です。
 前回には絵本に使われた絵のタイトルの一覧が、巻末に収められていたのですが、今回はそれがないのが、唯一残念なところでしょうか。ちなみに、上に挙げた絵のタイトルは著者のサイトで参照しました。

テーマ:絵本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

エッシャーは知ってますが、 トムソンの名は初めて知りました。
現在よく知られている「トリック・アート展」はエッシャーの視覚トリックから生まれたといっていいほど。作家のイマジネーションの世界はものすごく惹かれますよね。

kazuouさんの記事内のトムソンを見た限りでは色彩豊かでリアル感満点!人間の組体操のようなレールは面白い!図書館の光景も気に入りました。なんといっても一番手前のドアの向こうに見えてる影が気になる~。いったいどんな世界が待ってるのか?!そしてこの図書館は大型本ばかりを綺麗に配架してるなと感心。大型本コーナーなのか?勝手な想像がどんどん膨らんでいきます(笑)。
絵は美術知識がなくても各々が純粋に見て楽しめるのがいいですね。
【2006/08/04 21:31】 URL | TKAT #- [ 編集]


『written worlds』は、おっしゃるように本好き、書棚好きにはたまらない絵ですね。ファンタジー映画の1シーンを観ているみたいです。
【2006/08/04 22:41】 URL | てん一 #- [ 編集]

>TKATさん
いえ、トムソンは文章のほうで、絵の作者はゴンサルヴェスなんです。
ゴンサルヴェスの絵は、ほんとうに一目見て楽しめるものが多くて、同じトリックアートでも、その点ではエッシャー以上かと思います。どの絵もエッシャーの基本的なコンセプトを見事に換骨奪胎している感じがします。
図書館の絵の一番手前のドアの向こうに見えてる影は、ミステリなんかの殺人者のモチーフを使ってるんでしょうけど、非常にうまいですよね。
【2006/08/04 22:52】 URL | kazuou #- [ 編集]

>てん一さん
「どこでもドア」じゃありませんが、扉を開くと別世界、というのはわりとよくあるアイディアではあります。その点で、アイディア巧者のゴンサルヴェスとしては、独創的なアイディアというわけでもないのですが、やはりその扱い方がものすごくうまい!
描かれたイメージがものすごく色彩豊かで、とにかく楽しいんですよね。映像でもCGで何でもできる世の中で、一枚の絵でこれだけインパクトを与えてくれる画家というのも、実に貴重だと思います。
【2006/08/04 22:56】 URL | kazuou #- [ 編集]

ものすごく見たくなってきました
>いえ、トムソンは文章のほうで、絵の作者はゴンサルヴェスなんです。

大変失礼いたいました。
しかし絵に文章がついているというのはどんな感じなんでしょう?ちょっとしたミニストーリー的なものなのかな?それとも一言メモって感じかな?
我が区の図書館で検索してみるとこの本はなかったのですが、中央図書館には蔵書があるようなので早速予約してきます!
【2006/08/05 11:59】 URL | TKAT #- [ 編集]

『終わらない夜』もいいですよ
そうですね、ゴンサルヴェスの絵に対して、トムソンがそれに見合ったイメージの詩をつけている…といったところなんでしょうか。とくに物語になってるわけでもなくて、ほんとうにただのイメージ、といった感じです。レビューの方でも書きましたが、そういう意味でトムソンの文章の方は蛇足っぽいんですよ。
この『真昼の夢』も傑作だと思いますが、前作の『終わらない夜』はもっと素晴らしいので、こちらもオススメですよ!
【2006/08/05 15:18】 URL | kazuou #- [ 編集]


人をうまく使っているといか、鉄橋の人間ピラミッドは前作「終わらない夜」っぽいですね。
「Written World」は本自体が扉代わりに描かれているのですね。気球が見えているのは「80日間世界一周」なのかなとか考えていると面白いですね。
とはいえ、何故手前だけ普通の扉なんだろう?そこの扉がだんだん気になってきます。
【2006/08/06 10:18】 URL | 加納ソルト #- [ 編集]

とびら
そういえば、人が鉄橋になる絵だけが「夜」の情景を描いた作品でした。やっぱりこの画家は夜の青が綺麗です。
ゴンサルヴェスの絵は、だんだんと変容するイメージ、がコンセプトなので『Written World』の手前上の扉というのも、左奥からだんだんと本が扉になっていった最終段階なのではないかと、思います。つまり右上だけでなくて、右側手前に並んだとびらは上から下まで、全部ふつうのとびらになってるんじゃないかと。
【2006/08/06 13:03】 URL | kazuou #- [ 編集]

興味津々です
すごく綺麗な絵本で、一目見て惹かれました。
エッシャーの絵ってあまり知らないので大きなことは言えませんが、
一目みてそれと連想できる世界ですね。

ところで、これは私だけかもしれませんが、子供の頃って絵本がすごく怖かったのです。
ミッフィーとかノンタンは別ですが、例えばいわさきちひろさんの絵や
外国のマザーグースなど、想像力を掻き立てられるようなものには、
夢に出てきそうな漠然とした恐怖感を持っていました。
もし、私が小さな頃にこの絵本を目にしたら、きっと怖かったと思います。
そういう部分で、文章が救いになっていればいいのですが……。

図書館などで探して一度読んでみたいです。
【2006/08/06 23:18】 URL | サファイア #GCA3nAmE [ 編集]

それはあるかも
小さいころって、たしかに絵柄によっては、とても怖い感じがするものもありますね。僕も、いわさきちひろの絵は、ちょっと無気味だと思ってました。
このゴンサルヴェスの絵本は、その点かなり、リアリスティックで、無気味な絵も多数あるので、子供には怖いかも。『真昼の夢』はそうでもないのですが、前作『終わらない夜』のほうは、夜の絵を集めているだけあって、かなり無気味なものも散見されます。大人の絵本といっていいんでしょうか。とにかくどちらもオススメの絵本です。

【2006/08/07 06:49】 URL | kazuou #- [ 編集]


こんにちは。この記事を読んでゴンサルヴェスにとても興味を引かれ、図書館から借りてみました。
今まで絵本は子どもが読むもの、と思っていたので驚きました。素晴らしいですね。
『真昼の夢』も借りようと思ってます。教えて下さってありがとうございました。
【2006/08/10 13:10】 URL | 猫のゆりかご #QG0IHlXE [ 編集]

それはよかったです
気に入っていただけましたか。紹介した甲斐があるというものです。
この本は、体裁こそ絵本ですけど、大人にも楽しめる、まさに「大人の絵本」ですね。プレゼントなんかにしても、喜ばれるんじゃないでしょうか。
ファンが増えて、さらに続編が出ることを祈っております。
【2006/08/10 20:56】 URL | kazuou #- [ 編集]


見ました!やはり現物の本を見ると詳細部まではっきりわかりいいですね(当たり前か)。
ゴンサルヴェスの考え出すイマジネーションにはただただ感動。どれも夢があっていい感じです。
「終わらない夜」にも興味があるのですが、こちらは少しダークな感じなのでしょうか。
また図書館に予約しに行こうかな(これも「真昼の夢」と同型サイズかな?なら今度は大きめのかばんを持って行かないと・・・)。

P.S トラックバックさせていただきました。

【2006/08/15 20:51】 URL | TKAT #- [ 編集]

やっぱり「夜」ですから
TKATさん、ご覧になられましたか。
本当にどれも想像力豊かで楽しいですよね。子供のころ出会っていたら、確実に思い出の一冊になったことでしょうね。もちろん今でも十分なインパクトがありますが。
『終わらない夜』は、夜の情景の絵を集めたものですが「ダーク」という感じとはちょっと違うかな。暗い夜の絵でも、どこか暖かみの感じられるところに好感を覚えます。何より青みがかった夜の空がとても綺麗です。個人的には『真昼の夢』より、こちらの方が好きですね。
ちなみに版型は、『真昼の夜』と同じ大きさです。
【2006/08/15 22:44】 URL | kazuou #- [ 編集]


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「真昼の夢」

『真昼の夢』 IMAGINE A DAY  文:セーラ・L・トムソン (Sarah L. Thomson) 絵:ロブ・ゴンサルヴェス (Rob Gonsalves) 訳:金原瑞人 出版社:ほるぷ出版<感想>kazuouさんの『奇妙な世界の TK.blog【2006/08/15 20:41】

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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