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キリストと会った男  デイヴィッド・グレゴリー『ミステリー・ディナー』

ミステリー・ディナー 単行本 – 2005/11/26


 デイヴィッド・グレゴリー『ミステリー・ディナー』(西田美緒子訳 ランダムハウス講談社)は、イエス・キリストと名乗る男からディナーの招待を受けた男の不思議な体験を描く作品です。

 サラリーマンのニックのもとに、夕食会の招待状が届きます。場所はイタリアン・レストラン、差出人は「ナザレのイエス」を名乗っていました。現れたのは30代のスーツ姿の男でした。男の言葉を疑いながらも、彼がニックしか知りえない事をいくつも知っていること、そして彼の言葉に説得力があることなどから、本当に目の前の男はイエスではないのかと信じ始めます…。

 あらすじから、コメディ調の作品を予想したのですが、案に相違して、しごく真面目な作品でした。
 仕事の忙しさから、幼い娘の世話をする時間も取れず、それにより妻との仲もぎくしゃくしている男ニックが主人公。イエスを名乗る男とニックは、神と人間との関係について議論をすることになります。
 「イエス」の話の中で、ヒンズー教や仏教、イスラム教など、他の宗教との比較も行われ、真面目な宗教論が戦わされていくのですが、その論旨は優しく、分かりやすいものになっています。「イエス」が話すキリスト教の話はいささか逆説的な表現が多く、ユニークなものになっていますね。
 いくら善行をしても修業をしても、それだけでは神には近づけないとか、善人も悪人も神から見れば大して変わらない、というのも、解説されると、なるほどという感じです。
 宗教心が強いわけでも、「イエス」の言葉を信じきったわけでもない主人公ニックが、それでも何か人生を変えるような決意を抱いて帰宅する…というのも、良いラストになっていますね。
 「イエス」が語る言葉は、キリスト教徒でなくても分かりやすいものになっています。風変わりな設定ではありますが、瀟洒なキリスト教的ファンタジーとして良い作品ではないかと思います。

 この作品、『神様の食卓』(ランダムハウス講談社文庫)というタイトルで文庫化もされていますが、版元がなくなってしまったため、どちらも廃版になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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