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恐怖の湖  クリストファー・パイク『謎の吸血湖』

謎の吸血湖 (集英社文庫) 文庫 – 1997/6/1


 クリストファー・パイクの長篇『謎の吸血湖』(黒木三世訳 集英社文庫)は、古来より禁忌とされてきた湖の水を飲んだことから、高校生たちが怪物化してしまうというホラー作品です。

 ミシガン州の田舎町ポイントの湖畔、高校生たちによるパーティーの席上、突然ショットガンを手に入ってきた女子学生メアリーによって、男女二人の生徒が射殺されます。さらに自らのボーイフレンドでもあるフットボール部のスター選手ジムを殺そうとするメアリーを見て、彼女の親友アンジェラはメアリーを止めようとします。警察の介入によりそれ以上の殺戮は防ぐことに成功しますが、メアリーは殺した二人は怪物であり、殺し損ねたジムもまた怪物だと話し続けますが…。

 何らかの原因により怪物化してしまった生徒たちの存在に気付いた女生徒メアリーが彼らを全滅させようと図りますが果たせず、その話に疑問を持つ友人のアンジェラが調査を進めていくうちに、恐るべき真実に突き当たる…というホラー作品です。
 主人公アンジェラの調査を追っていくものの、序盤で湖の水が恐らく怪物化の原因ということは薄々分かってしまいます。その意味で驚きはないのですが、その湖の形成に当たって、宇宙的なスケールの理屈が用意され、その壮大さに唖然としてしまいます。

 怪物化した生徒たちは、表面上からは分からないものの、強力な力と強靭な肉体を供えるようになります。その威力はフットボールの試合で当たった相手を全身麻痺にしてしまうほど。また極端な食欲があるため、常人の数倍の食事を取らねばなりません。やがて人間相手にも食欲を覚え始めるという質の悪さ。
 ショットガンでさえ止めをさせない彼らをどうやって倒すのか? また生徒たちの中から、表面上区別がつかない怪物をどうやって見つけ出すのか? というのも重要な要素になってきます。ただ、クライマックスでの、主人公アンジェラの大量殲滅作戦は強烈で、細かいところがどうでもよくなってしまうところは爽快ですね。

 著者のパイク、R・L・スタインと並ぶ年少読者向けの人気ホラー作家とのことですが、スタイン作品よりも残酷描写は激しく、その点、大人向けモダンホラー作品と遜色がありません。
 ショットガンで生徒が吹っ飛ばされるシーンから始まるなど、作品のつかみも上手く、その後も全篇、アクションとショックシーンが詰め込まれていて飽きさせません。爽快感のあるホラーを求める読者には、お薦めしておきたい作品になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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