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破天荒な世界  トッド・ロビンス『侏儒と拍車 トッド・ロビンス短編集』
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 トッド・ロビンス『侏儒と拍車 トッド・ロビンス短編集』(蟻塚とかげ編訳 爬虫類館出版局 ※同人出版)は、映画「フリークス」(トッド・ブラウニング監督 アメリカ 1932年)の原作者として有名なアメリカの作家、トッド・ロビンスの怪奇幻想味の濃い短篇を集めた作品集です。

「侏儒と拍車」
 サーカスの侏儒として働くジャック・クーベは、親戚の死でかなりの遺産を相続したのを機に、サーカスの花形ジャンヌ・マリーに求婚します。美男のシモンとつきあっていたジャンヌ・マリーでしたが、財産目当てにジャックと結婚することになります…。
 ロマンチック(というか思い込みの激しい)侏儒の男が、自分を侮辱した妻やその元情夫に復讐するという物語です。本人に力はないものの、飼い犬の聖ユースタッシュ号が凶暴で、犬を使って他人を従わせるという、強烈な展開です。
 映画化された「フリークス」とは少々異なるお話になっているようです。原作の方は、たまたまサーカスが舞台になっているだけで、フリークスたちが特に活躍するわけではなく、そうした趣味も作者にはあまりないようです。

「誰が欲しがる、緑の瓶を?」
 嵐の夜に車の故障で立ち往生したオブライエン医師は、近くの屋敷を訪ねますが、そこは精神を狂わせた領主として有名なキルゴアの屋敷でした。医師はキルゴアからおかしな話を聞くことになります。
 キルゴアの叔父の死後、小さい妖精のようなものを捕まえると、それは小さい叔父の姿をしていました。彼によれば、人間の魂は小さい人間の姿をして体にひそんでいるというのです。キルゴアは叔父に頼んで、地獄を案内してもらうことになりますが…。
 人間の魂は小人の形をしていたという発想もすごいのですが、そのまま地獄めぐりをしたり、魂が地獄にとらわれないように死後の魂を捕まえようとしたりと、とんでもない展開が続きます。強烈なインパクトを持つ怪奇作品です。


「告白」
 十数件の殺人を犯し、世間から恐れられた連続殺人者エミール・パーネル。独房を訪れたのは、彼に死刑を宣告したモーリス・レオン判事でした。赦免状を持ってきたのではと希望を抱くパーネルでしたが、判事は思いもかけない告白を始めます。
 なんと、判事は過去にパーネルをはるかにしのぐ大量の殺人を犯している大悪人だというのですが…。
 連続殺人者のもとを訪れたのは、彼をはるかにしのぐ殺人者だった…という残酷奇談です。芸術的な殺人者を自負するパーネルが、判事の話を聞くにつれ、そのプライドをズタズタにされてしまうという、シニカルな作品になっています。

「バンシーの声を持つ女」
 貧乏な詩人シーマ・オシーアが歩いていると、突然美しい少女にひっぱられ、彼女の家に連れていかれてしまいます。家には危篤状態の少女の母親がおり、彼女の千里眼によって選ばれたオシーアは、少女ブリジットと結婚する運命だというのです。
 しかも、ブリジットはバンシーの声を持つ女だと言います。困惑しながらもオシーアは彼女と結婚することになりますが…。
 人の死を予言する精霊バンシーの声を持つ少女を妻に迎えた詩人の奇妙な体験を描く幻想小説です。主人公オシーアが詩人でありながら、金持ちの親戚の死を予言させたりと、現実的に妻の能力を利用していくところが面白いですね。
 陽気な雰囲気で展開されていた物語が、どこか哀切な結末を迎えるところも、味わいがあります。

「モグラ」
 妻と親友に裏切られた美男子で資産家の「ぼく」は、別の町で別の名前の人間として現れ、女性たちをもてあそぶようになります。美女に飽きた「ぼく」は、存在感の薄い女性「モグラ」とつきあうことになりますが…。
 裏切られたショックゆえか、いささかサイコパス的傾向のある青年が「モグラ」と渾名する女性とつきあうことになる、という物語。この女性「モグラ」も、束縛が強かったり、嫉妬深かったりと、あまり良く描かれてはいないところが特徴ですね。
 彼女の挑発的な「嫉妬」に応えて派手なパフォーマンスをするなど、全体にユーモラスなタッチになっているのもユニークなところです。

「運命の玩具店」
 列車の中でクレストン出身だという男と出会ったバートンは、彼から不思議な話を聞きます。クレストンは地震で壊滅したことで有名な町でした。町で玩具店を経営していた男の自慢は、クレストンの町並みを再現したミニチュアでしたが、ある日それを買いたいと、不気味な老人が現れます。
 老人は突然マッチを取り出し、ミニチュアのある家を燃やしてしまいます。それは男自身の家のミニチュアでした。家に帰った男が見たのは、全焼した自分の家でした…。
 運命の神に遭遇した男の奇怪な体験を描く怪奇小説です。この神が非常に残酷で、人間の災難を自分にとっての刺激としてしか捉えておらず、語り手の男の懇願にも関わらず、災難を引き起こし続けるのです。
 序盤で町が壊滅させられたことが示されており、どこまで神である老人の行為がエスカレートするのかが、サスペンスたっぷりに描かれています。結末まで救いがほとんどなく、恐怖感の強い作品になっています。

 トッド・ロビンス作品、本邦初訳ということで、初めてまとまった作品を読むことになりましたが、ユニークな怪奇幻想小説の書き手だと思います。発想自体はいわゆるB級的な題材が多いのですが、その力強い筆致と人を食ったような物語展開には、オリジナリティが感じられますね。
 解説として、訳者によるトッド・ロビンスの主要作品の梗概が紹介されており、こちらを読むと、ほかにも面白そうな作品が多数あるようです。特に、読むと人を殺したくなる小説を扱っているという「ミステリアス・マーテイン」なる長篇は面白そうですね。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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