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動物たちと人間たち  オラシオ・キローガ『南米ジャングル童話集』

南米ジャングル童話集 (日本語) オンデマンド (ペーパーバック) – 2017/8/29


 ウルグアイの作家オラシオ・キローガ(1878~1937)の『南米ジャングル童話集』(だいこくかずえ訳 ミヤギユカリ絵 葉っぱの坑夫)は、南米のジャングルを舞台に、様々な動物たちと人間との関わりを描いた童話集です。

 恩返しのためヒョウから人間を守ろうとするエイたちを描く「浅瀬をまもったエイ」、人間の家族に愛されるようになったハナグマの子どもとその家族を描く「二ひきのハナグマの子とふたりの人間の子」、ヒョウに襲われしっぽをなくしてしまった誇り高いオウムの復讐を描いた「しっぽをなくしたオウムの話」、ハチにさされ目が見えなくなってしまった子ジカとその友人になった男の物語「目の見えない子ジカ」、魚を追い払ってしまう人間の船を妨害しようとワニたちがダムを作り抵抗するという「ワニ戦争」、フラミンゴの足が赤くなった由来を描いた「フラミンゴがくつしたを手にした話」、怠け者のハチが巣を追い出されて改心するという「なまけもののハチ」、命を助けられたカメが、人間を背負って長距離を踏破するという「ゾウガメ」の八篇を収録しています。

 オウム、シカ、ヘビ、ヒョウ、ハチ、カメ、アリクイなど、様々な動物たちが登場する楽しい物語集になっています。変わったところでは、カピバラやハナグマ、ドラド、大トラナマズなんて動物も登場していますね。
 善い人間が動物を助ける「浅瀬をまもったエイ」「ゾウガメ」があるかと思えば、人間側が悪役として描かれる「ワニ戦争」のようなエピソードもあり、人間には善人も悪人もいるという描かれ方になっています。単純に「自然」が正しくて「文明」が悪いという感じにはなっていないところも好感触ですね。
 また、動物にも善側と悪側がいたりと、そのあたりバランス感覚が取れています。複数のエピソードで、ヒョウが悪役として描かれるのは、現実的にジャングルで恐れられている動物ゆえでしょうか。

 印象に残るのは「二ひきのハナグマの子とふたりの人間の子」「フラミンゴがくつしたを手にした話」でしょうか。

 「二ひきのハナグマの子とふたりの人間の子」は、人間に飼われ、互いに愛情を抱くようになったハナグマの子どもを描いた物語。子どもはヘビに噛まれて死んでしまいますが、兄弟のハナグマは死んだ弟のふりをしようと考えます…。
 弟が愛した人間の悲しませまいとして、弟のふりをするハナグマの兄弟が描かれます。哀愁ただようお話になっていますね。

 「フラミンゴがくつしたを手にした話」は、仮装舞踏会用のコスチュームとして、ヘビの皮を靴下代わりに履くことになったフラミンゴを描いた物語。ヘビたちにそれがばれないように、舞踏会の間中、ずっとフラミンゴたちは踊り続ける必要があるというのです…。
 フラミンゴの足がなぜ赤くなったかの起源話になっているのですが、その設定が残酷でありながらシュールだという、ユニークな作品になっています。

 翻訳のせいもあるのでしょうか、全体にテンポが良く、さらっと読める作品になっています。特に、ヒョウたちとエイたちとの争いが描かれる「浅瀬をまもったエイ」、人間とワニたちとの争いが描かれる「ワニ戦争」などでは、その戦いのシーンにも躍動感があふれています。
 ミヤギユカリによるイラストがふんだんに使われているのも楽しいところ。登場する主な動物がイラスト入りで紹介されるところなども、親しみやすくて楽しい趣向ですね。

 ちなみにこの本、アーサー・リヴィングストーンによる英訳(1922年)を元に、原文のスペイン語版を適宜参照して翻訳を行ったとのことです。動物の名前をアメリカの子どもになじみのあるものに変えているところなど、原文から逸脱しているところもあるそうですが、リヴィングストーンの翻訳は分かりやすく面白いので、これをベースに、原典から変えられたところなどを、原文に戻す作業をしているそうです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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