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世界の神秘  アルジャナン・ブラックウッド『深山霊異記』
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 アルジャナン・ブラックウッド『深山霊異記』(渦巻栗訳 ※同人出版)は、ブラックウッドの未訳短篇と随筆を収録した作品集です。

「モートンの怪死」
 二人の男はジュラ山脈の山の中を歩いていました。片方の男は農家で出会った奇妙な少女が彼らをずっとつけているというのですが…。
 少女は一体何者なのか…? ブラックウッドとしては珍しいタイプの正統派怪奇小説です。

「生贄」
 様々な災難に見舞われ絶望のふちに立たされたリマソンは、不思議な二人組みと出会い、彼らと共に山に登ることになりますが…。
 精神的に追い詰められた男が、山の中で神秘的な体験をする、という神秘主義的色彩の濃い作品です。
 ブラックウッド作品の常で、現れる超自然現象は異教的なイメージが強いのですが、作品ではなぜかキリスト教的な儀式が描かれるのも興味深いです。

「旅人たち」
 友人のハッドンと落ち合おうとしていた「わたし」は事故で意識を失ってしまいます。目を覚ました「わたし」は最愛の女性マリオンに看護されていました…。
 意識を失った男が前世での恋を体験するという神秘的恋愛小説です。

「呼び声」
 ブロンディン夫人から招きを受けたヘッドリーは、そこに親友アーサー・ディーンと、ヘッドリーが憎からず思っている女性アイリス・マニングとが滞在しているのを知ります。アーサーとアイリスとをくっつけたがっているらしいブロンディン夫人でしたが、
アーサーは悲恋に終わった過去の女性を愛し続けていました。そんな折、ヘッドリーは不思議な鳥の鳴き声を耳にします…。
 死によって引き裂かれた恋人たちが再会し、生ある恋人たちも結ばれるであろうことが仄めかされるという、幻想的な恋愛小説。非常に後味の良い作品ですね。

「東へ西へ伸びる道」
 彼女にとって人生を象徴するその道は東と西に伸びていました。メキシコに出かけた婚約者ディック・メッセンジャーを待つ彼女でしたが、ある日ぼろぼろの格好ながら不思議な若さを感じさせる男に出会います。彼は彼女に「夢」を渡したいと話すのですが…。
 神秘的な運命に導かれて出会う恋人たちを描いた、寓意的な要素の強い恋愛小説です。神秘的な力によって引き寄せられる恋人たちが、しかしながらすぐには幸せを手に入れられないところに、また妙味が感じられますね。

「冬のアルプス」「松」「風」
 山や自然に関する随筆です。自然の美しさをたたえると同時に神秘的な感興も強いですね。




テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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