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子どもたちの災難  R・L・スタイン監修『消えない叫び Scream! 絶叫コレクション』

消えない叫び (Scream!絶叫コレクション) (日本語) 単行本 – 2020/12/21


 R・L・スタイン監修『消えない叫び Scream! 絶叫コレクション』(三辺律子監訳 理論社)は、年少読者向けに編まれたホラー・アンソロジーのシリーズ三冊目にして最終巻です。

R・L・スタイン「最高の仕返し」
 フレディとテディの兄妹は、悪質ないじめっ子のダロウ兄弟から嫌がらせをされ続けていました。兄妹は仕返しすると息巻きますが、父親は、我慢すればそのうち良くなると二人をたしなめます…。
 いじめっ子に仕返ししたいと願う兄妹の物語なのですが、父親が徹底的に弱気で、我慢しなさいの一点張り。そこに不審な点を感じていると、思わぬどんでん返しがやってくる、という楽しいお話です。
 いたずらの一環で溺れさせられそうになる、というシーンがあるのですが、それが結末の伏線(というか、皮肉?)になっているところも良いですね。

リサ・モートン「サメがいた夏」
 人気者の姉ヴァネッサに引け目を感じていた妹のミキは、姉の誕生パーティーから抜け出したところ、野外でコヨーテらしき獣を目撃します。数日して再会したコヨーテは、プリントした紙をくわえていました。そこには知り合いのダニがサメに襲われて怪我をしたときに、パーカー・マディガンのボートにいたと書かれていました。
 パーカーはヴァネッサのボーイフレンドでした。ヴァネッサにも危険が迫っているのではと考えたミキは、親友のラファエルにコヨーテの一件を相談しますが、ラファエルの答えは思いもかけないものでした…。
 美しく人気者の姉に引け目を感じる妹が、友人とともに、姉の危機を救うことになる…というお話です。サメやコヨーテ、登場する動物たちの描かれ方がユニークで、まさかそうくるとは…という感じですね。

カーター・ウィルソン「エリアコード666」
 母親を失い、父親と共に暮らす少女ジュリア。彼女は事故で亡くなった母親が悲鳴を上げる悪夢を何度も見続けていました。父親からスマホをプレゼントされたジュリアは、番号を誰にも教えていないのにメッセージが届いたのに驚きます。メッセージのエリアコードは666、写っているのは見知らぬ人形でした…。
 不慮の事故で母親を亡くした少女が、スマホに届いた謎のメッセージを通して、亡き母の愛情を再確認し悪夢を克服する…という物語です。自分でも忘れていた幼き日の思い出が蘇る、というクライマックスのシーンは感動的ですね。

ダグ・レビン「リス問題」
 少年ダンカンは動物好き。動物の肉を食べないようにベジタリアンになるほどでした。ダンカンはこのところ、家の近くでやたらとリスが増えているのに気づいていました。友人のネイサンとその父親は、リスに悩まされているといいます。さらに、ネイサンは失踪した飼い猫シシーはリスに食べられたと言い張っていました。
 ある日、リスのえさ箱を見つけたダンカンは、リスの増えている理由に思い当たり、その家の住人に話をしようと考えます。家の中から出てきたのは小柄なおじいさんとおばあさんでした…。
 害獣になりつつあるリスに同情的な少年が、その問題を解決しようと、えさをやっている老人たちにかけあおうとしますが、事態は思いもかけないものだった…というお話です。
 トラブルの原因は善意の老人だったと思わせて、非常にブラックな展開になるところが面白いですね。

スティーヴ・ホッケンスミス「ピンポンダッシュ」
 幼い少年クーパーは、兄のダンにけしかけられて、姉のアビーと共に、嵐の夜の中、ハロウィンのお菓子をもらうために出かけることになります。古びた屋敷から出てきた女性の背後にガイコツのようなものを目撃したクーパーは驚きますが…。
 繊細な少年がハロウィンの夜に恐ろしいものを目撃する…という物語です。彼が見たものとは何なのか…?
 ハロウィン行事のやりとりを通して、彼らの母親が亡くなっていること、ちょっと強引な兄、優しい姉といった家族との関係がさらっと描かれる部分は上手いですね。

エミー・レイボーン「レンガに埋もれたガイコツ」
 廃工場で友人のベンと共にスケートで遊んでいたジャマルは工場が取り壊されることを知って残念に思います。夜中にもう一度来ようというベンは言いますが、本気ではないとジャマルは考えます。
 深夜、部屋の中にレンガが落とされたのを見て、ベンの仕業だと考えたジャマルは、工場を訪れます。子どもの泣き声のようなものを耳にして小部屋に入っていくと、そこにいたのは半透明の少年の幽霊でした。彼はジャマルに何かを伝えようとしますが…。
 廃工場で幽霊に出会った少年が、幽霊の願いを聞くことになる…という物語。幽霊が何者なのか、何を求めているのか? という謎と共に、廃工場での宝探し的な雰囲気もあり、楽しい作品になっています。遠い昔の家族の絆が回復される、というモチーフも良いですね。

 これで<Scream!絶叫コレクション>全三巻を読み終わりました。テーマやモチーフもさまざまな作品が揃えられており、楽しく読めるシリーズでした。オーソドックスなもの、捻ったもの、前衛的なもの、作風もそれぞれですが、どれも丁寧に作られた趣がありますね。
 大人が読んでも面白いので、子どもが読んだらもっと面白いと思います。年少読者のホラー入門書的な役目を担えるアンソロジーなのではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
図書館の新刊コーナーにありました。
最後のガイコツのお話はジェントルゴーストストーリーでホロリ。両親も良い人達でした。一番目の仕返しの話も面白かった!でも学校に通う事は御馳走山盛りのビュッフェで、ずっとお預けをくらっているのと同じだから教養のためならオンライン授業に切り換えた方が楽かも。
【2021/01/14 18:38】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
最終巻は、ちょっと凝った感じのお話が多かったですね。「レンガに埋もれたガイコツ」はじんと来るお話で、僕も好きな作品でした。

現状の情勢だと、授業もオンラインのものが増えてきそうな感じではありますが、小さい子供だと、オンライン授業をおとなしく聞いている、というのは難しいかもしれないですね。
【2021/01/14 19:50】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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