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子供たちの運命  R・L・スタイン監修『不気味な叫び Scream!絶叫コレクション』

不気味な叫び (Scream!絶叫コレクション) 単行本 – 2020/9/24


 R・L・スタイン監修『不気味な叫び Scream!絶叫コレクション』(三辺律子監訳 理論社)は、年少読者向けに編まれたホラー・アンソロジーの第二弾です。

ジェフ・ソロウェイ「首飾りとモンスター」
 父親が窃盗容疑で逮捕され、ミナおばさんの家に世話になることになった少年ピーターは、いじめっ子のオスカー・エデルマンに目をつけられていました。従弟のティミーが言うには、ミナおばさんがある首飾りを手に入れてから、彼女が話すお話が現実になるようになったというのですが…。
 魔力によりお話が現実になってしまうという物語。父親の苦境を助けようとするものの、事態はとんでもない方向に。楽しい物語ですが、描かれる少年たちの環境にはシビアなものが感じられますね。

ブルース・ヘイル「血の支払い」
 自分たちの作るお化け屋敷をめぐって、ルイス・デ・ラ・ベガと競っていた双子のゲイブとタリーのソト兄妹。恐ろしいお化け屋敷を作ってルイスを出し抜こうと、双子は小道具の店を訪れますが、そこで奇妙なものを買わされることになります…。
 お化け屋敷を引き立てるための道具は本物の悪魔を呼び寄せるためのものだった…というブラックなホラー作品です。お化け屋敷で競い合う少年少女、というテーマも良いですね。

フィル・マシューズ「ブラッドストーン」
 ある日声だけの存在から話しかけられた少年グレッグ。ラリーと名乗る声は自分は幽霊であり、悪霊ディラード・ブレイクがグレッグの家庭教師ローラの命を狙っていると話します。グレッグはローラの命を守ろうと、彼女の周囲に気をつけることになりますが…。
 悪霊から少女を守ろうとする少年を描く物語です。ローラの危機を予知する「良き幽霊」ラリーの正体とは…? ひねった仕掛けもあり、面白い作品になっています。

トーニャ・ハーリー「ショーウィンドウの女の子」
 さびれた町の唯一のデパート、ヒギンズのショーウィンドウに飾られたマネキンはリディアと名付けられ、彼女の着る服は町の女の子たちの憧れになっていました。そのワンピースを欲しがる「わたし」は、家の経済的な理由からそれを買うことはできず、代わりに毎日のようにリディアのもとを訪れていました。誕生日の直後、クローゼットに憧れのワンピースがかかっているのを見た「わたし」は、母親がプレゼントしてくれたのだと思い込みますが…。
 美しいマネキンとその服に憧れる少女、その日常を繊細かつ幻想的に描いた作品、なのですが、後半の展開は非常にブラック。子供が読んだらトラウマになりそう。これはなかなか怖い作品です。

ウェンディ・コルシ・ストーブ「しゃべらない子ども」
 父と共にミリーおばの家に厄介になることになった少女テイシー。隣人であるフェリシアが全くしゃべらないことを不思議に思ったテイシーはいとこのジャックスに訊ねますが、フェリシアはある時、悲鳴を最後にしゃべらなくなったというのです。
 魔女の家だと噂される丘の上の家に何かがあるのではないかと考えたテイシーは、その家を訪れますが…。
ブラックなフェアリーテールといった雰囲気の作品です。しゃべれない少女というテーマから、ちょっとシリアスなお話を思い浮かべるのですが、どこか妙なユーモアもありますね。

ヘザー・グレアム「バイロン湿地の魔女」
 姉のエミーや友人たちと一緒に墓地に行くことになった少年リアム。その土地には処刑された魔女の伝説がありました。怖がりのエミーにうんざりしていたリアムでしたが、友人の一人ジェニーの母親から、死刑囚が脱走したので気をつけてという連絡が入ります…。
 魔女の伝説がある墓地と、そこに現れる殺人鬼、ホラー要素を煮詰めたような道具立てなのですが、思わぬ展開に。姉が思いを寄せていた少年が臆病で、逆に姉を疎ましく思っていた弟の男気がわかる、というところも良いですね。
 結末の情景もユーモラスで楽しいです。

スティーブン・ロス「鳥にエサをやるな」
 両親がなくなり、アベレージおじとゼルダおばの家に引き取られることになった少年の「ぼく」。彼らの家は町から十五キロも離れた森の真ん中に建っていました。家のそばで見つけた鳥たちにたびたびエサをやる「ぼく」でしたが、おじは鳥にエサをやるなと強く言います。そもそもこの森には鳥など全くいないと言うのですが…。
 森の中の家、動物のほとんどいない森、何かを隠しているらしいおじとおば…、序盤から不穏の塊のような物語です。主人公が見た鳥とは何なのか? 鳥にエサをやってはいけない理由とは…?
 寓話的・象徴的な要素も強い怪奇幻想作品です。集中でもいちばんの力作ではないかと思います。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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