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奇妙な放浪  エリック・フランク・ラッセル『自動洗脳装置』
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 エリック・フランク・ラッセルの長篇『自動洗脳装置』(大谷圭二 創元推理文庫)は、突然呼び覚まされた殺人の記憶から逃走する男を描いたサスペンスSF作品です。

 防衛科学研究所に勤務する冶金学者リチャード・ブランサムは、このところ同僚たちが次々と退職することに対し不審の念を抱いていました。不慮の事故だけでなく、特に理由もなく仕事を辞めたいという人間が増えていたのです。
 ある日、食堂で休んでいたブランサムは、近くにいた長距離トラックの運転手らしい男たちの話をふと耳にします。バールストンという町で洪水があり、街道の大木が倒れた結果、20年近く経過しているらしい女の白骨死体が発見されたというのです。
 その話を聞いたブランサムは、突然過去に自分が犯した殺人のことを思い出します。当時付き合っていた女アーリンを憎悪のあまり殺してしまったのです。なぜこのことを今まで忘れていたのだろうか? 殺人のことは思い出したものの、その前後についての詳細は思い出せません。
 ブランサムは真実を確かめるために休暇を取り、バールストンの町に向かいますが、以前から彼の周囲をうろついていた男リアーダンが、行く先々で現れます…。

 突然思い出した過去の殺人の記憶を確かめようと、旅に出る男を描いたサスペンス作品です。たどり着いた町でいろいろと調べてみるものの、白骨死体が見つかったという話もなく、そもそも女が行方不明になったという話すらないのです。
 この鮮明な記憶は何なのか? 自分を追いかけ回す男リアーダンの目的は? やがてたどり着いた真相は思いもかけないものでした…。

 正直、タイトルを読むと、何となく真相が分かってしまうとは思います。SF的なアイディアが使われているものの、それ自体は大したものではありません。むしろこの作品の面白みは、主人公が殺人と記憶の謎を求めてさまよう過程のサスペンスにあります。
 自らの殺人の記憶を確認に訪れるものの、その記憶自体に信用がおけない主人公。自分がおかしいのか、それとも記憶がおかしいのか…。
 自分の「犯行」を辿ろうとする主人公の行動が、ミステリジャンルで言うところの倒叙形式に近いのですが、そこにニューロティックな味付けも加わって、奇妙な味のスリラーとして楽しめる作品になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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