理想の箱付き本
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 昨今は、箱付き本というのは、珍しくなりました。不況によるコスト削減、が主な原因なんでしょうね。個人的には、この箱付き本というのが大好きで、箱をみると嬉しくなってしまいます。
 一昔前の文学全集などは、必ず箱に入っていたものですが、現在では、そうした全集でも、箱なしが大部分のようです。箱というのは、本の保存という機能が第一だと思いますが、それ以上に装丁の一部という面が強くあると思っています。それゆえ、箱付き本が減っているのは、非常に残念に思います。
20060717075248.jpg ただ、箱なしといっても、コスト削減が理由ではなく、積極的なデザインとしての軽い装丁、というのもあるようです。いわゆる「フランス装」というやつでしょうか、非常にやわらかい厚紙をつかったソフトカバーなんかの本ですね。
 そういう系統で思い浮かぶのは、近年発行された〈稲垣足穂全集〉(筑摩書房)。これ全集だし、一応箱付きなんですが、非常に薄くて軽い材質をつかってるんですよね。装丁者は最近人気の「クラフト・エヴィング商會」。ものすごく魅力的な装丁なのですが、保存するにはどうかなあ、と考えてしまいます。どう考えても何十年持つとは思えない装丁なんですよね。
 現代は、たしかにデザインが非常に洗練されてきて、思わず見入ってしまうブックデザインも少なくありません。けれど、あまりにデザイン方面を重視したあまり、保存に関してはあまり信頼できないような本作りが増えてきているような気がします。
 初めから、そんな何年も保存されることは考えてないよ、と言われればそれまでですが、やはり本というのは保存メディアであって、本を愛する人にとっては長く所蔵したい、というのも正直なところなのです。お菓子や食べ物の袋に、凝った印刷や材質を使用したものが「過剰包装」と言われて久しいですが、すぐ廃棄されるのを前提にしたブック・デザインというのも、同じく「過剰包装」なのではないでしょうか。
20060715121314.jpg そうした点を考えると、長年の保存に耐えるしっかりとした素材というのも、ブックデザインの重要な要件なのではないかと思います。
 それで、現在では唯一といっていいくらい、箱付き本を重視している出版社は、やはり国書刊行会ですね。初めからベストセラーを狙わず、あくまで少数の趣味者のための本作りに徹しているその姿勢には、頭が下がります。
 この会社の出版物はどれも好きなのですが、装丁の魅力ということでは、やはり〈世界幻想文学大系〉〈ドイツ・ロマン派全集〉が挙げられます。
 堅牢な箱、本文の装飾的な柱が、いかにも硬質な〈世界幻想文学大系〉。ドイツ・ロマン派の絵画を使用した、ため息のでるほど美麗な箱、色インクを使った非常に軽みのある本文の〈ドイツ・ロマン派全集〉。個人的に見てきた中では、この二つの全集が、いまのところ僕のブックデザインの理想型となっています。

テーマ:お気に入りの本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
ハヤカワポケットSF
〈世界幻想文学大系〉と〈ドイツ・ロマン派全集〉は妻の愛蔵書です。幻想派でもなく愛書魂(あいしよこん)も乏しい私は手をのばすこともなく、あまりピンと来ないのですが‥。美しい本ではありますね。
ところで、箱入りで思い出したのが、昔のハヤカワポケットSFシリーズ。ビニールカバーになる前に箱というか、やわな紙ケースに入れて書店に並んでましたね。何冊か持ってますが、あれはなんだったのでしょう。今考えると不思議です。
【2006/07/19 19:42】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

そうでしたか!
奥様は幻想文学ファンでしたか。いいなあ。僕は、身の回りに本を読む人がほとんどいないので、羨ましいです。〈世界幻想文学大系〉と〈ドイツ・ロマン派全集〉ということは、かなりの筋金入りですね!
SFシリーズの箱ですか。そういえばポケット・ミステリの方も、やわらかい箱がついてましたね。あれ、お買いあげ後はお捨てください、なんて書いてありましたが、版元としては、お客が購入するまでの保護のつもりだったようです。いまでも古書店では、たまに見ますね。
【2006/07/19 21:07】 URL | kazuou #- [ 編集]

http://tkat.blog55.fc2.com/
我が家にもあります。といっても母親の本ですが・・。河出書房から出てる「世界文学全集」(我が家のは今から約40年前に発行)、しっかりした箱(しかも帯付き)で、箱にも本にもちょっとやそっとじゃ破れないビニールカバーが。うーん、まさしく保存向きです。
余談ですが全集ものって各本に月報のようなものがよく付いてますよね。中にはちょっとしたプチ情報などが載っていて結構楽しみだったり。
あと学研から出てる「近代日本文学読本」。こちらもかなり古いシリーズでもうボロボロ状態。しかし嬉しい発見が!母が16歳の誕生日に祖母から貰ったものらしく、母へのメッセージと日付けと名前が記入されてます。
最近ではほとんどしないと思いますが、昔はよくこのように本の巻末などに日付や名前を入れてましたよね(贈呈する時だけでなく、本は高価なものだったので自分の所有と記すために)。古書などを購入するとたまに見かけますが、メッセージなどが入っているとこの本にもいろんな歴史があるんだな~としみじみ。というか本よりも心温まるメッセージの方に感動したりして(笑)。
【2006/07/21 21:38】 URL | TKAT #- [ 編集]

追記
先ほどのコメントで、間違ってSUBJECTにURLを入れちゃいました(汗。
ごめんなさい~。

追記ですが、ポケット・ミステリにも箱付きがあるんですね。知りませんでした・・。
まだ出会ったことはないのですが、一度お目にかかりたい!!今度探してみます♪


【2006/07/21 22:06】 URL | TKAT #JPG8Eu66 [ 編集]

感慨深いものがあります
世代間で受け継がれる蔵書!
なんか、いい感じですね。うちにも父親が買った日本文学全集と母親が祖母に買ってもらったという世界文学全集(河出版!)があります。父親の本には、漢字に読み仮名がふってあったり、書き込みがしてあったりします。いかにもお勉強で読みました…というのがわかるのがなんとも。
でも、親も読んだ本なんだ、というつながりが感じられる読書、というのもいいものですね。もっとも全集を全部読んではいないんですが(笑)。
そうそう、全集ものの月報って、けっこう面白いんですよね。肩の抜けたエッセイが多くて、下手すると内容より面白かったりすることが(笑)。記事にあげた〈世界幻想文学大系〉にも月報があるのですが、これが内容に劣らずマニアックなエッセイが盛りだくさんで、大切に保存しています。
そうです、ポケット・ミステリも昔のやつは箱がついてました。たしか1993年の40周年記念復刊のときは、箱付きだったので、そのときの本も、古書店ではたまに見ますね。捨てるのが前提、ということだけあって、非常に壊れやすいので、完全な状態で残ってるのって、あんまりないみたいです。
【2006/07/21 22:28】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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