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明日なき戦い  ジョン・スティークレー『ヴァンパイア・バスターズ』

ヴァンパイア・バスターズ (集英社文庫) (日本語) 文庫 – 1994/4/14


 ジョン・スティークレーの長篇『ヴァンパイア・バスターズ』(加藤洋子訳 集英社文庫)は、ヴァンパイア退治専門の特殊部隊"チーム・クロウ"が、人間離れした力を持つヴァンパイア達と戦うという、アクション・ホラー小説です。

 ローマ法王庁から依頼を受け、ヴァンパイアを退治する特殊部隊"チーム・クロウ"と、そのリーダーであるジャック・クロウ。彼らは強力なヴァンパイアたちに襲われ、隊員のほとんどを失ってしまいます。戦いの中で、銀の弾丸がヴァンパイアに有効なことを確信したクロウは、部隊にガンマンが必要なことを認識します。
 彼が白羽の矢を立てたのは、過去に密輸をめぐってクロウと敵対したこともある男フィーリクスでした…。

 強力な力を持つヴァンパイアたちと戦う舞台を描いた、アクション要素強めのホラー作品です。
 登場するヴァンパイアたちの力がものすごく、素手で人間を引き裂き、片手で首の骨を折る、車を楽々持ち上げたりと、人間離れした力を持っています。
 そのため、武器を重装備した人間が複数でかかって、ようやく一匹を倒せるか、という具合。銃弾もほとんど効かないので、メインで使う退治方法は、ワイヤーのついた矢を相手に打ち込み、家の外まで引っ張り出して太陽光線で焼き殺す、という豪快なものになっています。
 しかも、ほとんど智恵の回らないヴァンパイアたちに比べ、彼らを作り出した「マスター」と呼ばれるヴァンパイアもおり、「マスター」に至っては更に強力な力と知性を持っているのです。実際「マスター」に襲われた部隊は、ほとんど壊滅状態に陥ってしまいます。

 そうした強力なヴァンパイアと日々相対している部隊員たちは、いつ自分が死んでもおかしくないという認識があるために、酒を浴びるように飲んだり、ある種捨て鉢な態度を取るようにもなっています。
 リーダーのクロウは、それが特に顕著で、人間としてはとてつもない実力の持ち主ながら、普段から死への恐怖に取り憑かれているという、弱さを持った人物として描かれているのが特徴的ですね。
 この恐怖感というのは、ヴァンパイアと戦う部隊員たちに共通しています。そもそもヴァンパイアと相対すると一瞬で殺される可能性があるわけで、主要な登場人物だと思っていた人間があっという間に退場してしまうということもあります。
 アクション・ホラーではあるのですが、一方的にヴァンパイアを退治する、というよりも、死への恐怖におびえながらギリギリのところで何とか撃退する、といった感じの作品になっており、またそこが魅力でもありますね。

 リーダーのジャック・クロウのほか、メインでスポットがあたるのは、サブ・リーダー的な存在として登場するフィーリクス。かってはクロウと敵対しながら、仲間となるキャラクターです。
 凄腕のガンマンながら、常に諦観に囚われているという翳のあるキャラとして描かれています。
 銀の弾丸の有効性がわかってからは、ガンマンであるフィーリクスが部隊の主力となっていくことになります。部隊の取材に訪れ一行の仲間となる女性ダヴェットとのロマンスも描かれ、殺伐とした作品に華を添えています。

 ほぼ全篇がアクション、といった感じの構成なのですが、戦闘シーンの合間の短い日常シーンにも味があり、それもあって、意外とメリハリのある物語になっています。娯楽味たっぷりのホラーとしてお薦めしたい作品です。
 ちなみに、この作品、ジョン・カーペンター監督の映画『ヴァンパイア/最期の聖戦』(1998年 アメリカ)の原作となった作品です(あくまでベースであって、詳細は変えてあるようです)。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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