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怪談さまざま  南條竹則『ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚』

ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚 (日本語) 単行本 – 2020/1/7


 南條竹則『ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚』(KADOKAWA)は、英国の怪談や伝承、民話などについて語った随筆集です。

 主に英国の民間伝承的な題材を扱っていますが、関連して、そうした分野について書いた作家やその創作についても触れています。また東西における類似テーマや、著者自身の体験やエピソードなど、話題は幅広く、読んでいて非常に楽しいエッセイ集となっています。
 章によっては、ジェームズ・ブランチ・キャベルやフィオナ・マクラウドの短篇の翻訳がまるまる収録されている部分もあり、読み進めていくうちにそんな短篇に出会うと、ちょっと得した気分になりますね。

 肩の凝らない読み物ではあるのですが、ミルトンやコールリッジなど、英国の大詩人たちの作品について紹介した部分もあり、教養書としても役に立つ本です。詩人が紹介されていることからも分かるように、詩や韻文、古歌謡などが重要なテーマとして扱われています。
 怪談といえば散文という意識が強かったので、これだけ韻文による怪談の伝統がある、というのは目から鱗でした。

 面白く読んだのは、東西の類似テーマについて語った「アイルランドの「杜子春」物語」、バラッドを中心に魔性の恋人テーマを紹介する「魔性の恋人」、バーラム『インゴルズビー伝説』をメインに紹介した「栄光の手」、ファム・ファタルについて語る「おとこごろし」、ジョージ・ボロー『ラヴェングロー』を中心に、木に触るという迷信と強迫観念について語った「木にさわる男」、オーストラリアの有名な幽霊事件について語る「見えない幽霊」などの章でしょうか。

 博覧強記、ユーモアたっぷりの語り口で洒脱な本です。この分野では等閑視されがちな、詩や韻文を大きく取り上げているのもユニークですね。とにかく読んでいて楽しい本になっています。

 特筆したいのは、本の装丁と造本です。金の箔押しがされた表紙も美しいのですが、紫インキによる本文印刷も美しいです。色付きインキは読みにくいのでは?と思いがちですが、可読性は墨のインキとそう変わらないです。
 造本と内容、ともに瀟洒な本といっていいのではないでしょうか。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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