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かげの国の王  ジョージ・マクドナルド『かげの国』
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 ジョージ・マクドナルド『かげの国』(田谷多枝子訳 太平出版社)は、かげの国の王になってしまった老人を描く物語です。

 妖精たちは、自分たちの国の王として人間を招きたがっていました。しかし国で式を上げるために連れてくる人間は生と死の境目にいなくてはいけないのです。重い病気で臥せっていたラルフ・リンケルマンじいさんは、妖精に連れていかれ王として戴冠した後、再び自分がベッドに寝ていることに気付きます。
 ベッド上に現れた妖精たちは、自分たちは「かげ」だと名乗り、アイスランドにあるという「かげの教会」に一緒に来てほしいと嘆願するのですが…。

 妖精たちに王にさせられてしまった老人が、「かげの国」を訪れるという、ファンタジー作品です。主人公のラルフ老人が妖精の国に行ったり「かげの国」に行ったりしている時間が、妻のリンケルマン夫人にとっては夢でしかない…というあたり、別世界に行く行為は「死」の象徴とも読めそうです。
 「かげの国」を訪れた老人が「かげ」たちの願いを叶えるために彼らの話を聞くという構成になっており、実際お話の大部分は「かげ」が話す様々なエピソードになっています。人殺しを止めたり、子供をあやしたり、老人の不安を鎮めたりと、「かげ」の行為もほとんどが善行となっていて、どこか暖かさを感じさせるエピソードが多いですね。

 物語全体に劇的な起伏はなく、ラルフ老人と「かげ」とのやりとり、「かげ」たちが語るエピソードが続き、そのまま夢うつつで終わってしまいます。
前半で示唆される通り、物語全体が主人公のラルフ老人の「夢」であると解釈することもできそうです。結末でキリストらしき存在が一瞬姿を見せるなど、キリスト教的な象徴も込められているようですね。
 老人が「かげの国」に行く際に、現れる担架のイメージも象徴的で印象的です。
 生と死を扱った寓話的ファンタジーとして、魅力的な作品となっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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