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破天荒な物語  ジョン・ガードナー『光のかけら』

 ジョン・ガードナー『光のかけら』(八木田宜子訳 ハヤカワ文庫FT)は、パロディ味が強く、破天荒なユーモアが特徴の童話集です。

 国を悩ますドラゴンを退治しようとする靴屋の三人の息子を描いた「ドラゴン、ドラゴン」、変身能力を持つ小鬼が親友の雄山羊にだまされてドラゴンと戦わされる「小鬼とドラゴン」、教会で改心した性悪の魔女が善人になりたいと願う「魔女の願いごと」、ハチドリの王からその位を譲ってもらった頭の弱い青年が王女を助けようとする「ハチドリの王さま」、人間を食べる大男と臆病な仕立屋を描いた「仕立屋と大男」、世界中から光が盗まれ暗くなってしまうという「光のかけら」、完全なナシの木を持ってきたものは王女と結婚できるという「ナシの木」、ずるがしこいラバが主人の粉屋を亡き者にしようとする「粉屋のラバ」、国民を悩ませるグリフィンの退治をおおせつかった老哲学者の物語「グリフィンと賢い老哲学者」、突然別のものに変身する種族の壊滅が王のおふれで出されるという「ショルムの変身野郎」、自分の家族たちの命を交換条件に魔女と取引をしてしまう王とその家族の物語「海のカモメ」、意地悪な継母にいばら集めを命じられた娘が妖精に助けられて幸運を手に入れるという「いばら娘のガジャキン」の12篇を収録しています。

 おとぎ話のフォーマットにしたがってはいるものの、登場人物が妙な行動を取ったり、その結果不条理な状況に陥ったりと、奇妙な味わいの物語が多く、非常にモダンな感触の童話集になっています。結末も、必ずしもハッピーエンドで終わるわけではないところもユニークです。
 特に印象に残るのは「小鬼とドラゴン」「粉屋のラバ」「グリフィンと賢い老哲学者」「ショルムの変身野郎」などでしょうか。

 「小鬼とドラゴン」は、あらゆる物をあらゆる姿に変えることのできる能力を持つみにくい小鬼を主人公にした物語。生き物も見た瞬間に別の姿に変えてしまうので、小鬼自身にも元の姿は何だったかわからなくなってしまう始末。しかし彼にもドラゴンの姿だけは変えられません。
 小鬼の買っている山羊のビリー・ゴートは、ドラゴンを退治すれば莫大な報酬が出るという王さまのおふれを聞き、小鬼を上手く誘い出してドラゴンを退治させようとしますが…。
 山羊にそそのかされて、ドラゴンと相対させられる小鬼を描く物語なのですが、この小鬼が凄まじい変身能力を持つというのが面白いところ。結末では世界観が崩れていくようなショッキングな展開もあり、どこか哲学的な味わいもある作品になっています。

 「粉屋のラバ」は、年老いて殺されそうになったラバが、主人である粉屋に対して、口先で富を約束して、彼を陥れようとする物語。ところが窮地に陥るたびに、粉屋は幸運を得て富を手に入れていきます…。
 陥れておきながらも、成功するとそれは目論見どおりと話すラバがたくましいですね。
 憎みあうことになるのかと思いきや、いつしか二人の関係も不思議なものになっていくという、皮肉な展開が魅力的です。

 「グリフィンと賢い老哲学者」は、グリフィンが人々を悩ませている国が舞台の物語。その国では、人々が仕事をしている最中にグリフィンが現れ、じっと見つめているのです。そのうちに人々は、仕事に集中できずに、根本的な疑問に囚われてしまうというのです。グリフィンを追い出すよう命じられた老哲学者は、考え込んでしまいますが…。
 単純な怪物退治の物語かと思いきや、何ともシュールな展開に。主人公が哲学者だけに、哲学的な方向に進んでしまうというナンセンスな童話作品です。

 「ショルムの変身野郎」は、突然別のものに変身してしまういたずら好きの種族を扱った物語。害は与えないものの、人々を驚かす彼らは「ショルムの変身野郎」と呼ばれていました。彼らを退治した者には褒美をとらせるという王様のおふれに対して、騎士や魔法使いなどが討伐に旅立ちます。
 一方、きこりは出会った「変身野郎」たちの首を切り落としていました…。
変身能力を持つ種族と、彼らを退治しようとする人々の物語です。主人公のきこりが、片っ端から首を切り落としていくのですが、そのうち間違えて普通の人間たちも殺してしまいます。
 それもしょうがないか、というトーンで進んでしまう展開がすごいですね。「変身野郎」たちの由来や正体も全く明かされないのも、どこかシュール。残酷味も強いナンセンス・ストーリーです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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