FC2ブログ
めくるめく世界  イシュトヴァーン・オロス『タイムサイト』

 『タイムサイト』は、ハンガリーの作家・デザイナーである、イシュトヴァーン・オロスのアニメーション作品集。オロスは、エッシャーの影響を受けた、だまし絵的な作品を得意とするグラフィック・デザイナーとして有名で、日本で刊行されただまし絵作品集にも、よく取り上げられています。
 6つの短めのアニメ作品が収録されていますが、共通するのは、エッシャー風の不可能空間や図形が頻出すること、あるイメージが別の似た(あまり似てないこともありますが)イメージに変容する幻想的な光景が描かれること、寓意的なテーマが盛り込まれていること、などでしょうか。
 ストーリーはあってないようなもので、その華麗で緻密なイメージの奔流を楽しむのが、楽しみ方としては正解なのでしょう。以下、収録作のレビューです。

「マインド・ザ・ステップ」
 集合住宅地を舞台に引越しの情景が描かれる作品、といえば、そのとおりなのですが、その間に様々な人々の幻想的なイメージがどんどんと入れ替わっていきます。エッシャーのだまし絵的な空間が頻繁に登場するのが特徴で、それによって社会の閉塞感を表現しているといった感じです。
 たんすを運んでいる引越し業者がエッシャー的な空間ですれ違い、たんすの端がぶつかりあったり、ボールが無限階段を延々と落ち続ける…というシーンは圧巻ですね。

「ザ・ガーデン」
 少年が庭で車椅子の美しい女性に出会い、彼女の入浴を覗く…というのが幻想的かつ官能的に描かれる作品。
 全編、銅版画風の絵柄で構成されていて、場面場面が一つの絵として美しいです。女性が人魚に変容するシーンが幻想的に表現されています。

「叫び」
 赤ん坊の叫びから始まり、生まれた病院の鳥瞰図から宇宙にまで至るスケールが展開されたかと思うと、再び成人男性の画像へ…。
 人間の一生を象徴的に描いた作品なのでしょうか。

「ブラックホール-ホワイトホール」
 ペンを持つ手が描いた手がさらにペンを持って手を描いてゆくという、目くるめくイメージから始まり、様々なイメージが相似形に展開されてゆくという作品。
 次に何が出てくるのか分からない予想のつかなさが面白いです。

「タイムサイト」
男と女が時間と空間を越えて出会う…という象徴的な物語。銅版画が元になっているという線画が素晴らしいです。背景の一部が一時的に女性の顔になり、それがまた溶け込んでいくという、だまし絵的な技法が使われており、大変魅力的。
男性と女性のナレーションが同時に発音され、一人は過去形、もう一人は未来系で話すという前衛的な演出がされているのも面白いですね。

「迷路」
 数字をモチーフにした9つの迷路が現れ、その迷路が変容して様々なイメージを展開してゆくという、シュールな作品です。
 視覚的な効果としては、これが一番面白い作品でしょうか。


テーマ:映画 - ジャンル:映画

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/1141-de0dd5cd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する