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支配する菌  デヴィッド・コープ『深層地下4階』

 デヴィッド・コープ『深層地下4階』(伊賀由宇介訳 ハーパーBOOKS)は、地下施設に封印された致死率100%の菌が漏れ出し、人々を襲うというバイオ・ホラー作品です。

 前科持ちの青年ティーケイクは、ようやく見つけた貸倉庫に勤め始めます。上司であるグリフィンから盗品の転売の手伝いを要求されますが、それを何とか断っていました。夜勤シフトに入っていたある日、どこからかブザー音が聞こえます。
 たまたまた同じシフトに入っていた、シングルマザーのナオミと意気投合したティーケイクは、音の出所らしい壁を壊しますが、そこにはブザー音と異常を知らせるランプが点滅する、聞いたこともない深層地下階の図面パネルがありました。好奇心を刺激された二人は、その深層階に降りていこうと考えます。
 一方、40年前に仕事としてある菌を封印したロベルトは、封印された施設から非常ブザーが発信されていることを知らされ、菌を殲滅するため、元同僚のトリーニと現場に向かいますが…。

 突然変異した菌をめぐって展開されるバイオ・ホラー作品です。菌に寄生された人間は短時間で100%死んでしまうのです。その恐ろしさゆえ地下施設に封印され、その存在も秘密にされていたものが、後年その場所を買い取った民間施設の貸倉庫会社の社員が見つけて、それを解放してしまうことになります。

 この菌が強力で、傷口などがあればあっという間に侵入し、菌をばらまくために人体を破裂させてしまいます。餌は有機物であれば何でも良く、封印されても何十年も生き延びると言うタフさ。しかもどんどんと進化し、知能を高めていきます。
 果ては脳を乗っ取り、人間の行動を操ることにもなるというのだから、手に負えません。プロローグで、軍人のロベルトと相棒のトリーニが、その菌が発見された場所に赴き、その恐ろしさを知る場面が描かれ、それがために読者にはその菌の恐ろしさが刻み込まれます。
 それだけに、本編で主人公二人が菌を本当に解放してしまうのか、二人は生き残ることができるのか? というハラハラドキドキ感がありますね。また、救援に向かうことになるロベルトもすでに高齢になっており、充分に動けるのか、といったところもサスペンスを高める要因になっています。

 主人公ティーケイクが、非常に間の悪い青年で、前科持ち。ヒロインとなるナオミも、宗教一家に絡まれたりと、こちらもめぐり合わせの悪い人物になっています。そんな二人が非常事態において仲良くなり、また強い意志を持つ人間に成長する…というのも良いですね。
 菌に汚染されてしまった人間はもちろん、動物や虫なども菌によって変容し、怪物じみた存在になったりと、モンスター・ホラー的な一面もあります。

 著者のデヴィッド・コープ、小説としてはこの作品がデビュー作となりますが、脚本家としては『ジュラシック・パーク』など多くの作品を手がけた、ベテランかつ名手です。それだけに、小説作品の方も、構成が上手いだけでなく、描写も映画的というか視覚的になっていますね。
 エンターテインメント・ホラーの快作といっていいかと思います。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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