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家に棲むものたち  ペネロピ・ライヴリー『犬のウィリーとその他おおぜい』

 ペネロピ・ライヴリー『犬のウィリーとその他おおぜい』(神宮輝夫訳 ディヴィッド・パーキンス絵 理論社)は、犬やネズミ、クモなど、とある家に住み着いた小動物たちの生活や冒険が描かれる連作短篇集です。

 パヴィリオン・ロード五四番地に建つディクソン家。ディクソン家の飼い犬ウィリーを始め、家に住み着いたネズミの一族、クモ、ワラジムシ、家に立ち寄るレース鳩などを主人公にして、それぞれの生き物の視点から彼らの生活や冒険が描かれるという趣向の連作になっています。
 それぞれのエピソードでは、登場する生き物の視点から物語が描かれるので、家の持ち主であるディクソン家の人々は最後まではっきりとしたキャラクターとしては現れてきません。彼らとのつながりが深い犬のエピソードでは、背景として飼い主家族が登場しますが、それも飽くまで背景程度。
 主人公たちは飽くまで人間以外の動物であって、彼らの物語が合わさって「一つの家」が現れてくる…という面白い趣向です。

 登場する生き物たちは、それぞれの動物としての特性にとらわれてはいあるものの、ある種人間のように考えたりと、微妙なレベルの擬人化がされているのが特徴です。
 その点面白いのが、クモやワラジムシを主人公としたエピソードでしょうか。特にワラジムシのナットを主人公としたお話では、仲間のワラジムシの考え方を否定せず、自分は自分として、与えられた環境で身の丈にあった生活をしようとするナットの様子が描かれます。そんな彼に「新しい世界」を見せようと現れるクモの存在はいい味を出していますね。

 生き物たちも一つのエピソードだけでなく、何回か再登場したり、また別の生き物が中心となるエピソードでも背景にちらっと登場したりするのが楽しいです。犬はおっちょこちょい、ネズミは亭主関白で冒険家気質、ハトは自信家であるなど、それぞれの生き物に性格づけがはっきりされているのも面白いところです。
 作中一番活躍するのは、ネズミのサムでしょうか。家の中だけでなく、外に出たりと、様々な冒険が描かれます。

 登場する生き物たちが等身大に、しかも愛らしく描かれており、読後感の非常によい作品になっています。原題は「裏返しの家」というような意味のタイトルだそうで、こちらの方が作品の内容を上手く言い表していますね。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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