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怖がる人々  クリス・プリーストリー<怖い話>シリーズ
 イギリスの作家、クリス・プリーストリー(1958~)による<怖い話>シリーズは、連作短篇集3冊と長篇1冊が邦訳されています。児童書として書かれた作品ですが、どれも恐怖度が高く、大人が読んでも楽しめる作品集になっています。順に見ていきましょう。



クリス・プリーストリー『モンタギューおじさんの怖い話』(デイヴィッド・ロバーツ画 三辺律子訳 理論社)

 少年エドガーは、子供が苦手な両親から、親戚であるモンタギューおじさんの家に遊びに行くように言われていました。おじさんはかなり上の世代で、両親も正確にはどんな関係にあたるのかも分かりません。
 やがて森の中の先にあるおじさんの家に着いたエドガーは、おじさんから話を聞くことになります。それはことごとく、恐ろしい経験をしたという子どもたちの物語でした…。
 もはや何歳かも分からないという、遠縁のモンタギューおじさんから、怖い話を聞かされる少年を描く怪奇小説です。
 それぞれ趣向は異なるものの、大抵において、わがままだったり、いたずら好きだったりと、性格の悪い少年少女たちが、禁忌を犯したために、不幸な目に会う…というパターンの物語が多いです。
 不幸な目といっても、そのほとんどが死んでしまったり、それに近い状態になってしまうという意味で、とてもブラックな味わいが強くなっていますね。
 怖いエピソードの前後に主人公エドガーとモンタギューおじさんの会話が挟まれる体裁になっているのですが、話が進むにしたがって、おじさんやおじさんの屋敷、家具、そして使用人など、不穏な点がどんどんと増えていきます。特に、全く姿を見せない使用人フランツの存在感は強烈です。
 最終的には、おじさんがなぜこれらの怖い話を知っているのか? おじさんは何者なのか? といった疑問も含めて、大枠となる物語の謎が明かされることにもなります。

 登ってはいけないと言われる木に登った少年が恐ろしい目に会う「ノボルノ、ヤメロ」、降霊会に訪れた家で塗り込められた元ドアをめぐる怪奇現象が起きる「元ドア」、呪われたベンチ飾りを盗んでしまう少年の物語「ベンチ飾り」、牧師の息子が霊に取り憑かれるという「ささげもの」、目の見えない老婆の家に盗みに入った少年が体験する恐怖を描く「剪定」、三つの願いを叶える額ぶちを手に入れた少女の物語「額ぶち」、父親との旅行先のトルコで精霊に出会う少年を描いた「精霊」、いとこたちとのかくれんぼの中で霊に出会うという「毛布箱」、家を出奔した少年が不気味な化物に追われるという「道」、モンタギューおじさん自身の過去が明かされる「おじさんの物語」が、エピソードとして収録されています。
 どれも面白いのですが、強く印象に残るのは「元ドア」「ベンチ飾り」「額ぶち」などでしょうか。

「元ドア」
 霊媒の母娘のふりをした詐欺で金を荒稼ぎしていた、感化院出身のモードとハリエット。交霊会に訪れたバーナード家で、家の中の物を物色していたハリエットは、その家の娘らしきオリヴィアという少女に出会います。
 彼女から、かっては使われていたものの、塗りこめて使えなくなった「元ドア」の話を聞いたハリエットでしたが…。
 詐欺のつもりでやっていた交霊会に本物の霊が現れ、また詐欺師であるはずの二人には本物の霊能力があった…という皮肉なゴースト・ストーリーです。塗り込められたドア、巨大なドールハウスと、雰囲気抜群の作品です。主人公二人が下層階級出身の詐欺師という設定にはピカレスク小説味もありますね。

「ベンチ飾り」
 たまたま通りがかった行商人の荷物の中に、奇妙なベンチ飾りを見つけた少年トーマスは、それが欲しくてたまらなくなります。盗もうとしたところを行商人の男に見つけられてしまいますが、なぜか男は見逃そうとするようなのです。
 しかも男によれば、その品物は盗まれることでしか手放すことはできないと言うのですが…。
 盗まれることでしか手に入れられない呪われた品物を扱った怪奇小説です。それを持っていると悪魔のささやき声が常時聞こえるようになり、周囲の人々を傷つけてしまうというのです。段々と狂っていく少年の描写が怖いですね。

「額ぶち」
 わがままなクリスティーナは、母親から家の財政が逼迫しており節約をしなくてはならないという話を聞いて不満を募らせていました。母親が競売会で買ってきた金の額ぶちに興味を惹かれたクリスティーナは、自分と同じぐらいの少女の肖像写真がそこに入っているのを見つけます。
 写真の中の少女はクリスティーナが一人になったとき、突然口を聞き始め、何でも願いを三つ叶えてあげようと言いますが…。
 いわゆる「三つの願い」テーマを扱っています。予想される通り、願いの結果はろくなことにならず、ことごとく取り返しのつかない状態になってしまいます。超自然的な現象かと思わせながら、全てはクリスティーナの妄想の可能性もあるように描かれるなど、なかなか複雑な作品になっています。

 この『モンタギューおじさんの怖い話』、ヤングアダルト向けに書かれた作品だそうですが、怪奇現象やそれによって起こる惨劇に関して、本当に容赦がないです。陰惨、といえばそうなのですが、読後感は意外に悪くないのは、やはり「勧善懲悪」的な視点があるからでしょうか。
 不気味ではありながら、どこかユーモアも感じさせる、デイヴィッド・ロバーツの挿絵もいい味を出しています。




クリス・プリーストリー『船乗りサッカレーの怖い話』(デイヴィッド・ロバーツ画 三辺律子訳 理論社)

 断崖絶壁に立つ古い宿屋の子ども、イーサンとキャシーの兄妹は、父親が帰るのを待っていました。立地の悪さにも関わらず繁盛していた宿屋ですが、妻を亡くした後、父親はやる気をなくしてしまい、ろくに客もこなくなっていました。子どもたちにも関心を払わなくなった父親でしたが、突然具合を悪くした二人を心配し、医者に助けを求めるために出かけていたのです。
 嵐の中、ドアが叩かれるのに気付いた兄妹は、訪ねてきた若い船乗りサッカレーを、父親が戻るまでという約束で家の中に入れます。サッカレーは嵐がおさまるまで、自分が知っている「怖い話」を二人に話し始めますが…。

 嵐の中、父を待つ幼い兄妹が、ふらりと現れた船乗りから怖い話を聞く、という大枠の怪奇小説集です。語り手が船乗りということもあり、その話は全て海に関連するエピソードとなっています。

 兄妹と船乗りサッカレーについて語られる大枠となる物語「嵐」、移民船に乗り込んだ若い船員が飛び抜けて美しい少女に恋をするという「ピロスカ」、魔が差して嫌われ者の同僚を海に突き落としてしまった男が不可思議な現象に追い詰められていく「ピッチ」、イレズミを入れるためナガサキを訪れた友人の様子がそれ以降おかしくなってしまうという「イレズミ」、漂流していた純真無垢な少年を助けた船が不運に見舞われ続けるという「ボートに乗った少年」、修行として父親に無理に船乗りにさせられた少年の船が人食いカタツムリに襲われるという「カタツムリ」、双子の兄を衝動的に殺した男が殺したはずの兄の姿を垣間見るという「泥」、海賊船の一員になった少年が乗っ取った船で恐ろしい体験をするという「サル」、港で瀕死の男が持っていたクジラの歯の細工物を拾った船乗りがその細工に呪われるという「スクリムシャーの悪魔」、船内で怪談話に興じる船員たちを描いた「黒い船」、主人公の兄妹の真実が語られる「トリカブト」のエピソードを収録しています。

 幽霊や呪い、怪物など、様々なテーマの「怖い話」が扱われていますが、精神的な怖さよりも肉体的な怖さが中心となったエピソードが多い印象ですね。特に人食いカタツムリが登場する「カタツムリ」、病気を持ったサルが登場する「サル」などでは、肉体的な残酷さや生理的な気色悪さが強調されています。

 作中で一番「怖い」作品を挙げるなら「ボートに乗った少年」でしょうか。ある船が、海に一人漂流していた幼い少年を見つけ救助します。天使のような純粋さを持った少年を船員たちは可愛がりますが、その少年のそばにいる人間はやたらと事故に会い、怪我をしたり、果ては死んでしまうのです。
 しかもそんな目に会いながらも、船員たちは少年に操られるようにただ笑い続けさせられてしまう…という物語。
 船員たちが事故に遭ったり怪我をしたりする、肉体的な損傷が事細かに描かれ、その描写はまるでスプラッター。
 本来、悪魔的な少年が引き起こす精神的な怖さを描くのが主眼であるタイプのお話だと思うのですが、それに加えて肉体的な恐怖をも描く物語になっています。

 あと興味深いのは「スクリムシャーの悪魔」。瀕死の男が持っていたクジラの歯の細工物を手に入れた船乗りが、それを手に入れてから不気味な現象に襲われることになるというお話です。細工物には自分らしき船乗りの画像が彫られており、自分の運命を暗示しているようなのです。
 しかも、手放そうと思っても、体に異変が起こり、手放すこともできません…。
 持ち主の運命が現れる細工物という、一種の「絵画怪談」といってもいいでしょうか。結末のオチも捻られており、非常に面白い作品です。

 兄妹を描く大枠の物語自体もいささか不穏です。いつまで経っても帰ってこない父親、得体の知れない船乗りとその不気味な物語、船乗りの指摘で激高する少年など、何か怪しいことが隠されていることが仄めかされており、その真相は結末の二篇「黒い船」「トリカブト」で描かれていきます。
 話の語り手サッカレーが語る、過去に宿屋を知っていたこと、キャシー(兄妹の妹と同名です)という恋人がいたこと、なども思わせぶりな描写ですね。
 船乗りサッカレーが生身の人間ではないだろうことは、読んでいるうちに薄々分かってくることになります。
 兄のイーサンがサッカレーの語る話について度々口を挟む疑問「当事者が死んでいる話をなぜ語れるのか?」についても「合理的な」解決が示されます。「異界の存在」であるサッカレーの訪問自体が、兄妹にとって重要な意味を持っていたことが分かる結末も見事ですね。

 最後にさらっと、前作『モンタギューおじさんの怖い話』の語り手モンタギューの、若いときらしい姿が現れ、重要な働きをするのも面白いところです。
 前作同様、子ども向けとは思えない、容赦のない筆致の怪奇小説集なのですが、さらに恐怖度・残酷度が上がっており、これは大人が読んでも十分に怖くて面白い作品になっていますね。




クリス・プリーストリー『トンネルに消えた女の怖い話』(デイヴィッド・ロバーツ画 三辺律子訳 理論社)

 19世紀末、父親はボーア戦争に従軍し、継母と共に休暇を過ごしていた少年ロバートは新しい学校へ行くために、列車で一人旅をすることになります。自分に予知能力があると信じている継母は、ロバートに対し、前兆として見た「暗く恐ろしいトンネル」と「キス」に気をつけろと注意しますが、ロバートは取り合いません。
 ある車室に乗り込み少し眠ってしまったロバートが目を開けると、列車はトンネルの手前で止まってしまっており、目の前の席には白いドレスを着た近づきがたい雰囲気の若い女が座っていました。時計は動いておらず、女に時間や名前を訊ねても、彼女ははぐらかしまともに答えてくれません。しかも同じ車室に乗り合わせてた男たちは、目を閉じたまま、一向に目を覚ます気配がないのです。女は、列車が動き出すまでの暇つぶしにと、怖い話を始めますが…。

 少年が、列車で出会った不思議な若い女から怖い話を聞かされるという枠物語です。
 物語の大枠が語られる「列車」、植物研究にのめりこむ父親とそれをよく思わない息子の軋轢が描かれる「温室」、兄弟が畑の中の島のような箇所で謎の生物の骨と槍を見つけるという「島」、新しい勤め先で手に負えない子供に困惑する家庭教師を描いた「新しい家庭教師」、妖精を見たという義妹に憎しみを抱く姉の物語「小さな人たち」、スコットランドの古い信仰を扱った「猫背岩」、精神的におかしくなってしまった少年に恐怖を抱く人形好きの少女の物語「ジェラルド」、狂信的なシスターが子供たちに復讐されるという「シスター・ヴェロニカ」、貧しい少年たちを精神的に支配する少年が謎の殺人事件に遭遇するという「ささやく男」、新しく移り住んだ屋根裏部屋の壁の割れ目に恐怖を抱く少年を描いた「壁の割れ目」、枠物語の真相が明かされる「トンネルの入口」の各エピソードを収録しています。

 収録エピソードは、どれも安定して「怖い」物語で、安心して(というのもおかしいですが)読めますね。
 シリーズの他作品同様、主人公となる子供たちが異常な現象に出会い、容赦ない目に会う(たいていは死んでしまいます)というフォーマットになっています。
 結末はだいたい同じでも、取り上げられているテーマは様々で、お化け植物、封印された怪物、幽霊、妖精、古代の呪い、異次元など、バラエティに富んでいます。

 新しい勤め先で言うことをきかない少年に悩まされる家庭教師を描いた「新しい家庭教師」は、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を意識したと思しい作品ですね。

 全体に前半よりも後半のエピソードの方にインパクトが強い作品が多い印象です。「ジェラルド」「シスター・ヴェロニカ」「ささやく男」「壁の割れ目」などのインパクトは強烈です。

 「ジェラルド」は、人形劇に目がない少女エマが主人公のお話。かっては魅力的だったものの、突然精神的におかしくなってしまったという少年ジェラルドが、やたら近づいてくるエマは彼に対して恐怖を抱くようになります…。
ジェラルド自身が不気味な存在で、その時点で充分に怖いのですが、それが伏線でしかなかったという強烈さ。前半に現れる「人形劇」が重要な意味を持っています。

 「シスター・ヴェロニカ」では、いささか狂信的な若いシスターが描かれます。子供たちに容赦のない体罰を加え、自殺に追い込んでしまった子供さえいるというシスターが、子供たちに復讐されるという物語です。非常に直接的な「暴力」が描かれる残酷な作品です。

 「ささやく男」は、都市伝説的な題材を扱った作品。いわゆるエリート階級の息子である少年ローランドは、貧しい少年たちのリーダーとなり、彼らを精神的に支配していました。仲間の少年カッターが死んでいるのを発見した彼らは、カッターは「ささやく男」に殺されたのではないかと話します。
 「ささやく男」などいないと否定するローランドは、もとから彼と反目していたジャックと決裂することになりますが…。
 「ささやく男」の正体が強烈で、これは集中でも一番生理的嫌悪感の強い作品では。

 「壁の割れ目」は「異次元」怪談的作品。新しく引っ越した家の屋根裏部屋が、息子のフィリップの部屋になる予定でした。改装業者のベンソンと助手のトミーは作業中に、壁の割れ目を見つけますが、何度修復しようとしても、そこには割れ目が出来てしまうのです。
 割れ目を覗き込んだフィリップは、外につながっているはずのその割れ目から、別の部屋と、更にその中に男がいることに気がつきます…。
 異次元(?)につながってしまった部屋の割れ目を描く作品です。ラヴクラフト風味もあり、集中でも不気味さの目立つ作品になっていますね。
 主人公が死なないという結末も、プリーストリーとしては珍しいタイプですね(ある意味、死よりもつらい状態になってしまうのですが)。

 枠物語となっている少年ロバートと謎の若い女のお話の真相は、ホラー慣れしている人なら、途中で薄々気付いてしまうとは思うのですが、その怪奇的な雰囲気は絶品で、結末に気付いたとしても、充分に楽しめるかと思います。
 前二作(『モンタギューおじさんの怖い話』『船乗りサッカレーの怖い話』)よりも、主人公の少年ロバートの性格がはっきり出ているのも特徴ですね。読んでいて、怖がりでありながら強がりで、自分を常に優位に立たせたいという自意識の強い少年の姿が浮かび上がってきます。
 このロバート、ホラーやミステリが好きとのことで、スティーヴンソンやブラム・ストーカー、H・G・ウェルズ、オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』、『シャーロック・ホームズ』などの作家・作品が言及されるのも、雰囲気を高めていますね。
 ロバートの祖父が『モンタギューおじさんの怖い話』に登場するモンタギューおじさんと関係があったことが仄めかされるなど、シリーズのくすぐりもあり、そのあたりも含めて、非常に楽しめるエンターテインメント・ホラーの快作となっています。




クリス・プリーストリー『ホートン・ミア館の怖い話』(西田佳子訳 理論社)

 二人暮らしだった母を亡くし、孤児になった少年マイケルは、後見人である資産家スティーヴン卿が、マイケルを引き取りたいと考えていることを知ります。マイケルの父が戦争でスティーヴン卿を救って命を落として以来、彼はいろいろと援助を申し出ていましたが、マイケルの母はそれを素直に受け取ることを拒んでいたのです。マイケルもまたスティーヴン卿に反感を抱いていたものの、母の残した手紙を読んで考えを変えます。
 財産管理を任されているジャーウッドと共に、スティーヴン卿の住むホートン・ミア館に向かったマイケルは、馬車の中から、外にずぶ濡れの女性がいるのに気がつきます。助けを求めていると考え、マイケルは外に出ますが、彼女の姿は見当たりません。見間違いだと言われたマイケルは釈然としないまま館に到着します。
 館には、主人であるスティーヴン卿とその美しい妹シャーロットが住んでいました。スティーヴン卿は神経衰弱のようなものにかかっていました。支配的な父親の元、子供のころから虐げられていた彼は、美しい妻をもらって一時的に幸福になるものの、その妻をも亡くして以来、陰鬱に沈み込んでいたのです。
 やがてマイケルは、館の中で不思議な現象にたびたび襲われることになります…。

 両親を失った少年マイケルが、後見人であるスティーヴン卿に引き取られるものの、その館には幽霊が出現するのみならず、不思議な現象が起こっていることを知る、という物語です。
 マイケルには超自然的な現象を感じ取る能力があるらしく、他の人間には見えない幽霊や現象を見たり聞いたりすることになるのです。たびたび現れる「幽霊」が、スティーヴン卿の亡くなった妻であることを確信したマイケルは、彼女が何かを訴えているのではないかと考え、過去に何が起こったのかを調べていくことになるのです。

 父親の死の原因となった人物ということで、スティーヴン卿に反感を抱いていたマイケルですが、卿の悲しい過去を知るにつれ、彼に同情を抱くようにもなっていきます。またジャーウッドを始め、召使のホッジズなど、少数ながらマイケルに愛情を持って接してくれる人間と触れることによって、頑なだったマイケルの心が少しづつやわらかくなっていきます。その意味で、ある種の成長物語にもなっていますね。

 幽霊が出現したり、怪奇現象が起こったりはするものの、『モンタギューおじさんの怖い話』『船乗りサッカレーの怖い話』など、同著者の怪奇作品のように派手な趣向は抑えられています。陰鬱な館における怪異が丁寧に描かれてゆくという、伝統的なゴースト・ストーリーになっているのです。
 大人になったマイケルが過去を回想する…という形で物語が書かれているのも伝統的なゴースト・ストーリー感を高めています。しかもそれが結末の伏線になっているという演出も見事ですね。

 プリーストリーお得意の、シリーズの別作品が言及されるという趣向もあって、本書ではマイケルが館の図書室で見つけた本のなかに、旅行作家アーサー・ウェイブリッジの名前が言及されます。
 これは、父親との旅行先のトルコで精霊に出会う少年を描いた「精霊」『モンタギューおじさんの怖い話』収録)の登場人物ですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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