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狂気の人生  デイヴィッド・ガーネット『ビーニー・アイ』

 デイヴィッド・ガーネット『ビーニー・アイ』(池央耿訳 河出書房新社)は、狂気じみた男と、彼と関わりを持った一つの家族をめぐる、異様な迫力を持つ作品です。

 ロンドンの南の丘陵地帯が舞台。目の異様な輝きから「ビーニー・アイ」という綽名を持つ男ジョウ・スターリングは、その狂気じみた振る舞いから仕事も長く続かずに、アルコールに溺れていました。
 少年である「私」の父バトラーはビーニー・アイに同情し、家で彼を雇ってやることにします。
 しかしビーニー・アイは与えられた仕事を上手くこなすことができないばかりか、狂気じみた振る舞いで妻や女中を怖がらせます。あげくの果てに雇い主を怒らせたジョウは解雇を宣言されますが、その病的な猜疑心と狂気の発作からバトラーに襲いかかります…。

 暴力や殺人の衝動に襲われる狂気じみた男を雇った家族とその主人を描く作品です。この男ビーニー・アイ、その気分と行動が全く読めず、おとなしくしていると思うと突然襲いかかってきたりと、危険極まりない人物。
 本人にもその衝動がコントロールできず、その意味では明らかに病気なのですが、医者によれば彼は正気であるということであり、本人も自ら治療を望まないため病院に入院させることもできません。心を込めて扱えば真人間になると信じる善人バトラーは誠意を尽くしますが、誠意だけではどうにもならないことを悟り、ビーニー・アイをカナダへとやることになります。

 ビーニー・アイは本当に危険な男で、突然武器を持って襲いかかったり、犬を投げ飛ばしたりと、暴力を繰り返すので、いつ人が殺されてしまうのかハラハラドキドキするのですが、意外にも作中では殺される人間は出ません。
 ただ、ビーニー・アイが見境のない状態になってからのサスペンスは強烈で、先が読めない面白さがあります。まだジャンルが生まれていない時代の作品ですが、感覚としてはほとんど「サイコ・スリラー」といってよい作品になっています。

 驚くのは、これがほぼ実話に基づいているということです。登場人物のうち、少年の「私」が著者デイヴィッド・ガーネット、バトラーとその妻は著者の両親エドワード・ガーネットとコンスタンスがモデルになっているということです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
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