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夢の中の恐怖  三田村信行『ゆめのなかの殺人者』

 三田村信行による児童向けホラー小説『ゆめのなかの殺人者 ポプラ怪談倶楽部6』(前嶋昭人イラスト ポプラ社)は、夢の中で殺人者に追いかけられる少年を描いた、シンプルながら恐怖度の高い作品です

 少年マサキは、ある日妙な夢を見ます。それは、20代ぐらいのフリーター風の男が部屋の中で過ごしている夢でした。男は夢の中で大量の現金を押し入れの天井に隠していました。何度もその男の夢を見ているうちに、その男とは別の「黒い男」が現れます。
 「黒い男」はフリーター風の男を刺し殺し、現金を奪っていきます。直後に殺人事件の報道を目にしたマサキは、現場を訪れます。殺されたのは夢で見た男であり、現場で「黒い男」の姿を目撃したマサキは、夢の内容は現実だったと認識します。
 直後からマサキは、「黒い男」が自分を殺そうとする夢を繰り返し見るようになりますが…。

 夢の中で殺人現場を目撃した少年が、殺人犯に夢の中で襲われ続ける…というホラー作品です。少年はたびたび危機を逃れるものの、眠った途端に襲われるため、眠らないように努力を続けていました。
 「夢の中」だけに、ただ襲われるだけでなく、予想の付かない不合理な形で襲われることが多いのが特徴です。現実空間で無意識に眠り込んでしまい、いつの間にか悪夢のような展開になってしまうのは、読んでいてかなり怖いところです。
 勉強すれば眠くなくなるだろうと考えて勉強をするものの、よけい眠くなってしまう…という展開にはブラック・ユーモアが感じられますね。

 具体的な対抗策もなく、夢の中で殺されたならおそらく現実生活でも殺されてしまうとの思いから、必死で逃げ続ける主人公を描く前半の恐怖度はかなり高いです。
 後半、ようやく味方になるキャラクターが登場し、殺人犯である「黒い男」の能力の秘密や、具体的な対抗策が提示されるのですが、それでも一歩間違えば死が待っているという恐ろしさ。

 登場人物は数人、作中ほぼメインで描かれるのは主人公の少年と殺人犯である「黒い男」の二人のみというシンプルな構成ながら、いかに殺人犯から逃れるか? という焦点をしぼった構成で、非常にサスペンスフルな作品になっています。
 後半で明かされる「夢」の秘密も捻りが効いており、殺人犯を撃退するための方策もまたトリッキー。児童向けとは言え、大人が読んでも面白いホラー作品になっています。

 また、前嶋昭人によるイラストも、あえてラフなタッチで描いているのでしょうか、エネルギッシュで勢いがあり、作品の恐怖度を高めるのに貢献していますね。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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