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かっこうと魔法の旅  メアリー・ルイーザ・モールズワース『かっこう時計』

 イギリス、ヴィクトリア朝の児童文学作家メアリー・ルイーザ・モールズワース(1839-1921)の長篇『かっこう時計』(夏目道子訳 福武文庫 1877年)は、魔法の「かっこう」に導かれて少女が不思議な体験をするというファンタジー作品です。

 大おば二人の住む、田舎の古い屋敷に預けられた少女グリゼルダ。グリゼルダはある日、かっこうの鳴き声を聞きます。それは本物のかっこうではなく、グリゼルダの亡き祖母シビラがそのまた祖父から受け継いできたというかっこう時計でした。
 時計の中のかっこうに導かれ、グリゼルダは様々な不思議な体験をすることになりますが…。

 大おばたちに預けられ、大切にはされるものの、同年代の友達もおらず孤独感を抱えていた少女グリゼルダが魔法のかっこうと友達になり、一緒に不思議な冒険を繰り広げるという作品です。
 かっこうと共に訪れるのは、中国の人形の国、蝶の国、そして亡き祖母シビラやその祖父が生きていた時代など、様々です。

 物語が進むにしたがって、グリゼルダの祖母、その息子、さらにその娘グリゼルダと、三代にわたって同じ屋敷に預けられていること、かっこう時計は、職人であった祖母シビラの祖父が作ったものだということが判明します。
 物語が始まった時点で既に、長い時間が経過していることが仄めかされているのです。登場する屋敷の古さとも合わせて、物語上に流れる時間がゆったりとしていますが、それがまたある種の魅力になっています。

 古色蒼然とはしているのですが、今読むと逆にその古さがいい味わいになっているといってもいいでしょうか。
 登場する屋敷や物語の古色蒼然さはともかく、時代的に、提示される道徳部分は今読むと、古く感じられるところもありますね。
 例えば、男の子と遊んでいいかと訊ねるグリゼルダに対して、大おばたちは、男の子がどんな階級のどんな家の子どもか確認してからだというのです。
 また、導き手である「かっこう」が、先生役というか、良識やモラルをグリゼルダに指導するといった面もあります。
 蝶の国を訪れたグリゼルダに対し、遊んでいるように見える蝶もずっと働いていると諭すなど、ちょっと教訓的なところもあるにはあります。
 そうした時代的な制約はありながらも、全体に静謐な時間の流れる夢幻的なファンタジーであり、今でも魅力の感じられる作品になっています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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