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世にも不思議な物語  三田村信行『オオカミの時間 今そこにある不思議集』

 トラウマ童話集『おとうさんがいっぱい』で知られる、三田村信行の最新短篇集『オオカミの時間 今そこにある不思議集』(理論社)は、幻想的な作品の多い童話集ですが、中にはかなり不条理な作品も混じっており、大人の読者でも楽しめる作品集になっています。

 先祖が残した割れた面をめぐる幻想的な物語「われたお面」、自分の鏡像がだんだんと映らなくなってくるという「見るなの鏡」、部屋からいらなくなった物が消失していくという不条理な「歯ぬけ団地」、何かもずっと待ち続ける少女を描いた「白い少女」、巨大な木を取り憑かれた男を描く「木の伝説」、魔法使いの杖の材料になっていたという木をめぐる「魔法使いの木」、謎の恐竜の木を取材に訪れた記者の物語「恐竜の木」、学校に上手く適応できない少年がオオカミのマスクをかぶって町を徘徊するという「オオカミの時間」、他人を支配できるピストルを誤配により手に入れた少年の物語「誤配」、様々なシーンでピストルが登場する夢が展開するという不条理な幻想作品「夢のなかでピストル」、夢の中で浮浪者然とした男の行動が展開される怪奇作品「穴」、生き残りをかけて夢の中でゲームを行う少年少女たちを描く「ゲーム」、飼い犬をさらわれた少年が犬を取り返そうと冒険するという幼年ハードボイルド小説「エッグタルトに手を出すな」、世界で最後に生まれた少年が「王様」として祭り上げられた世界をめぐるSFファンタジー「最後の王様」を収録しています。

 年少読者向けに書かれているだけに、主人公は子どもであることが多いのですが、容赦ないアンハッピーエンドが襲うタイプの話も多く、子どもにはかなりハードかもしれないですね。「見るなの鏡」「誤配」「ゲーム」あたりの結末にはびっくりする人もいるかと思います。
 どれも面白いですが、特に印象に残るのは「オオカミの時間」「誤配」「ゲーム」「最後の王様」あたりでしょうか。

 「オオカミの時間」は、内省的な少年が学校や両親との関係で悩み、オオカミのマスクをかぶって町を徘徊するという物語。電車の中で、自分と同様にずっと乗り続ける老婆に気がついた少年は彼女を跡を追いかけますが…。
 少年が世界との折り合い方を見つけると言う、内省的で哲学的な物語です。

 「誤配」は、同名の人間と間違えられ誤配されてきたピストルを手に入れた少年を描く物語。そのピストルには人をいいなりにさせる力がありました。その力を使い、少年は他人を意のままにしていきます。やがて少年は大人になり、政治家にまでなりますが…。
 強力な道具を手に入れた少年がそれを利用してなりあがっていくという物語。結末もブラックで、かなりハードな作品ですね。

 「ゲーム」では、夢の中で、ある男からピストルを渡された少年少女たちが生き残りをかけてゲームを強制されます。少年は何度かのゲームを経て最終的な勝者になりますが…
 いわゆる「デスゲーム」ものですが、異様な雰囲気でちょっと怖い作品ですね。
 夢の中ではピストルで撃たれても大丈夫とはいいながら、撃たれた子どもたちがどうなったかは触れられません。このゲームは誰が何のために行っているのか? 勝者になった少年自身にもろくな結末が待っていないという、徹頭徹尾ダークな物語です。

 「最後の王様」は、大人に生殖能力がなくなってしまい、子どもが生まれなくなってしまった世界が舞台。最後の子どもである少年は「王様」として祭り上げられ、その生活は世界中で映されていました。
 ある日図書係りとして少年のお付になった女性は、ある本を読ませますが、それをきっかけに少年は世界の秘密を知ることになります…。
 集中でも一番「童話」らしい語り口とフォーマットの作品なのですが、その物語は結構ハード。主人公である少年の背後で陰謀が進行していたことが徐々に判明していきます。 SF的なアイディアも盛り込まれており、非常にサスペンスフルな物語になっています。


テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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