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名前の力  ジャンニ・ロダーリ『ランベルト男爵は二度生きる』

 イタリアの作家ジャンニ・ロダーリによる長篇小説『ランベルト男爵は二度生きる サン・ジュリオ島の奇想天外な物語』(原田和夫訳 一藝社)は、他人に名前を呼び続けてもらうことにより若返った、大富豪の老人を描く奇想天外な物語です。

 オルタ湖に浮かぶサン・ジュリオ島に広大な屋敷を構え、執事のアンセルモと共に暮らす大富豪の老人ランベルト男爵。数え切れないほどの病気を持つ男爵は、執事と共に別荘のあるエジプトに出かけますが、なぜか慌てて家に戻ってきます。
 男爵は高額の報酬で六人の男女を雇い入れ、屋根裏部屋で順番に男爵の名前「ランベルト」の名前を一日中唱え続けるように命じます。やがて男爵の体に異変が起こり始めますが…。

 他人が唱え続ける名前の魔力により若返った老貴族を描く物語です。最初は髪の毛が生えてきたり、皺が減る程度のものだったのが、病気の症状がなくなり、やがて見た目も壮健な若者になってしまいます。
 今まで興味のなかったスポーツを始めたりと、生きる活力を取り戻す男爵ですが、様々なトラブルが彼を襲います。
 財産を狙う甥に殺されそうになったり、盗賊団に家を占領されたりと、命の危険がいくつも襲ってくるのですが、名前を唱え続けてもらっている限り、実質的に男爵は「不死」なのです。

 ファンタスティックな手触りの物語ではあるのですが、盗賊団に襲われ身代金を要求される部分などは、かなりリアルです。解説文によれば、これは1970年代にイタリアで多発した誘拐事件に参考にしているとのことなのですが、物語に違和感なく溶け込んでいるあたり、ロダーリの筆力は見事ですね。

 男爵はじめ、登場人物はユーモアたっぷりに描かれています。鷹揚な男爵、心配性で傘をいつも抱えている執事、男爵の名前を唱え続ける六人の男女もちゃんと描き分けがなされています。他にも、構成員が皆ランベルトという名前の盗賊団「二十四のL団」であるとか、男爵が所有する多数の銀行からやってきた二十四の頭取と二十四人の秘書などに至っては抱腹絶倒です。

 次にどうなってしまうのか予測がつかず、物語の楽しみを味あわせてくれる作品です。「童話作家」ロダーリの晩年の作品で、もちろん子供が読んでも楽しめますが、むしろ大人向けの作品といっていいのではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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