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時間と宇宙の物語  グレゴリイ・ベンフォード『時空と大河のほとり』
時空と大河のほとり (ハヤカワ文庫SF)
グレゴリイ ベンフォード, 昭, 山高
早川書房 (1990-01)

 グレゴリイ・ベンフォード『時空と大河のほとり』(山高昭他訳 ハヤカワ文庫SF)は、著者のSF作品を集めた短篇集です。

 陶器を解析することで、過去の人々の声を再現しようとするアイディア・ストーリー「時の破片」、開拓船に乗せられていたDNAを奪うため、超光速で追いついてきた宇宙船を描く「リディーマー号」、減速装置の故障により、加速を続けていく宇宙船を描いた「相対論的効果」、盗んできたロボットがやがて別のロボットを盗んできてしまうという「ポット泥棒」、エジプトに現れた異星人を描く「時空と大河のほとり」、未来社会でジョン・レノンのふりをして冷凍睡眠から蘇った男を描く「ドゥーイング・レノン」など。
 特に面白いのは「嵐のメキシコ湾へ」「時の摩擦」でしょうか。

 「嵐のメキシコ湾へ」は、核戦争によるサバイバルもの。放射能がふりそそいだ直後、ある地域の人々は、いちばん安全なのは原発と考え、そこに避難します。故障を起こしたコンピュータを再起動しようと施設に向かった一行は、そこで怪我をした男とその付添の女に出会います。
 最初はリーダーシップをとっていた男がやがて人望を失ったり、逆に厄介者だと思われていた老人が、実は頼りになる男だったりと、旅の過程で、登場人物たちそれぞれの人間性が明らかになっていくところが面白いですね。

 「時の摩擦」は、神に取引を持ちかけられた二人の男を描く物語です。
 おそらく近未来を舞台に、敵に取り囲まれ絶体絶命の窮地にいる二人に話しかけてきたのは、神ともいうべき存在「イム」でした。彼は二つの箱によるゲームを提案します。一つの箱だけを開ける選択をした場合、二つとも開ける選択をした場合、そしてそれぞれに対して「イム」の予言と合っていたかいなかったかで、得られるものが異なってくるのです。
 上手くいけば、そこから脱出するためのエネルギー源だけでなく、「イム」にも等しい強大な力が手に入るというのですが…。
 ゲーム理論からインスピレーションを得た作品らしいのですが、主人公たちの選択肢がマトリックス表で出てくるのが面白いですね。実際に超常的な力を手に入れたとして、主人公たちは幸せなのか? といった考察もあり、なかなかに印象深い一篇です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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