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幻想と象徴  クリスティナ・ロセッティ『小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集』
小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集
クリスティナ・ロセッティ, 滝口 智子
鳥影社 (2019-10-07)

 クリスティナ・ロセッティ『小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集』(滝口智子訳 鳥影社)は、イギリス・ヴィクトリア朝期の詩人クリスティナ・ロセッティ(1830-1894)の第一詩集の全訳です。

 やはり一番印象に残るのは代表作ともされる物語詩「小鬼の市」でしょうか。髪の毛と交換に、小鬼が薦める魔法の果物を食べてしまった少女ローラ。再びその果物を求めるローラでしたが、一度それらを食べてしまった人間には小鬼たちの声は聞こえないのです。姉のリジィはやせ細るローラのために小鬼のもとを訪れますが…。
 邪悪(?)な小鬼たちとその魔法の果物、そして美しい姉妹愛と、ファンタジーの名品だと思います。

 他にも幻想的で美しい詩が多く収録されています。死んだ語り手の魂が宴たけなわの故郷の家を訪れる「故郷にて」、南国の恋人との婚礼の直前に北からの訪問者が現れる「北から来た恋人」、領主に捨てられた村娘が領主の新しい恋人について語る「従姉妹ケイト」、妹の恋路を邪魔する冷たい姉を描いた「貴族の姉妹」、死後に自分の恋人の悲しむ姿を見るという「死後に ソネット」、ユーフラテス河から現れたワニたちとその王を描く、どこかユーモラスな「わたしの夢」、死んだ恋人に追われる夫婦を描くゴシック趣味濃厚な「時と幽霊」、捨てられた恋人が気丈にふるまうという「モード・クレア」、死にゆく妻から夫への語りかけを描く「妻から夫へ」、愛する庭から亡霊によって閉め出されてしまうという「閉め出されて」、恋人を死に追い込んだ姉をうらむ妹を描いた「モード姉さん」などは、物語性も強く楽しく読めます。

 世俗的な詩と宗教的な詩を集めたパートに分かれていますが、宗教的なパートは美しさは感じられるものの、象徴的な要素が多く、なかなか難しいです。対して、世俗的なパートは読みやすいものが多いですね。

 翻訳も非常にこなれています。「小鬼の市」は名作だけに、アンソロジーなどで何種類も読んでいますが、この本に収録された翻訳は、おそらく今までで一番読みやすかったように思います。翻訳者の滝口智子さんによるイラストも非常に愛らしく、瀟洒な本に仕上がっています。
 幻想的な作品も多く、ファンタジーファンにもお薦めです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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