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宇宙のアウトロー  フレドリック・ブラウン『宇宙の一匹狼』
宇宙の一匹狼 (創元SF文庫)
フレドリック・ブラウン, 保男, 中村
東京創元社 (1993-07)

 人類が火星や金星にも植民している未来、地球の中心都市アルビュクエルクにやってきた職業的犯罪者クラッグは、非合法の麻薬ネフシンの運び屋の嫌疑で裁判にかけられてしまいます。その罪は、数十年にわたるキャリストでの強制労働か、精神改良器による性格改造でした。
 裁判に臨んだクラッグは、元裁判官である政界の大物オリヴァーが裁判官を務めると聞き驚きます。有罪にはなったものの、その後オリヴァーは、クラッグにある取引を持ちかけてきます。
 ある物を盗んでもらいたいというオリヴァーの極秘計画には、クラッグのような腕利きの犯罪者が必要だというのです。今までの罪を無しにした上で、100万ドルもの報酬を約束したオリヴァーの提案をクラッグは受け入れます。
 オリヴァーの妻であるジュディスの手引きを受け、クラッグは厳重な警備の中脱獄を計画します。
 一方、数十億年前から存在し、知性を持つ岩石の塊が宇宙を漂い、太陽系に近づきつつありました…。

 フレドリック・ブラウンの長篇『宇宙の一匹狼』(創元SF文庫)は、アウトローの男が脱獄し、貴重な品物を盗み出す計画を描いた近未来SFアクション作品です。この主人公クラッグがなかなか魅力的です。犯罪における特殊技能や喧嘩に強いのはもちろんのこと、金属製の義手を投げて敵を倒す…という武闘派なのです。基本的に他人を信じないというニヒルな性格で、ハードボイルド的な味わいもありますね。

 オリヴァーによる品物奪取計画を描く中盤までは、アクションに次ぐアクション。また、オリヴァーの計画の真意が不明だったり、クラッグを魅惑するジュディスとの三角関係的な展開もあります。
 冒頭で言及される岩石の知性体が、この物語にどう絡んでくるのか…というのも読みどころですね。

 この知性体の介入で、中盤から物語が大きく変わります。それまでのアクション重視の物語とはまた違った展開になるのですが、こちらはこちらで面白い展開です。
 広大なスケール感があり、どこか哲学的・詩的な結末もブラウンらしいといえばらしいです。

 中盤をはさんで、大きく物語が二つに分かれており、その一貫性があまりないのが弱点でしょうか。それぞれの物語は面白いのですが、一つの長篇というよりは、二つの中篇のようになってしまっているのですよね。ただ、どこか心に残る作品ではありました。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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