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死ねない殺し屋  都筑道夫『闇を食う男』
闇を食う男 (天山文庫)
闇を食う男 (天山文庫)
posted with amachazl at 2020.03.30
都筑 道夫
天山出版 (1988-09)

 都筑道夫の長篇『闇を食う男』(天山文庫)は、「不死」の殺し屋を主人公にした、ホラー・バイオレンス小説です。

 語り手の「おれ」は友人のライター浅野と共にロスアンゼルスに旅行に出かけますが、現地のホテルで見知らぬ男に殺されかけます。もみ合ううちに逆に相手を殺してしまった「おれ」でしたが、相手は最後に妙な言葉をつぶやいていました。
 浅野によれば、彼は礼と共に「お前が五百人目だったのか」と言っていたというのです。調査をした浅野によれば、南米ペルーの神に呪われた人間は「神の代理人」として500人の人間を殺さなければいけないというのです。
 その間「代理人」となった男は、死のうとしても死ねず、499人を殺した後、自らが500人目となる、という伝説があったといいます。実際に殺人衝動が抑えられなくなった「おれ」は自分が「代理人」の後継者になったことを知ります。
 役目を受け入れた「おれ」は避けられないのならばと殺し屋を開業することになりますが…。

 邪神の呪いにより500人を殺さなければいけなくなった男が殺し屋を始める…という物語です。その人数を殺すまでは死ねない運命になっているらしく、危険なことが起こっても重大事にはならないのです。
 連作短篇になっており、毎回主人公に殺しの依頼が舞い込むのですが、その依頼が変わったものだったり、裏があったりと、それぞれが変わったものとなっています。主人公は自分が死なないことが分かっているのでクールに行動するのですが、やっている殺人行為はかなりハードかつ残酷なもので、そのギャップも面白いところですね。
 友人やエージェントも躊躇いなく殺してしまいますし、自殺を望む依頼人に対しても軽く助言はするものの、結局あっさりと殺してしまいます。

 入り組んだ事件や、主人公を陥れようとする陰謀なども発生しますが、主人公はそれらを全て軽くかわしてしまい、関係者をほとんど抹殺してしまうという流れは、ある種、爽快ではあります。
 殺しの手順や行為に関して、かなり残酷なシーンもあるのですが、主人公自身があっさりしているのと、描写も淡々と描かれることもあり、題材の割りに生臭さはありません。
 こうしたテーマのホラー小説を、ここまで淡白に描いているという意味では、珍しいタイプの作品かもしれませんね。

 ちなみに、主人公の「不死」は、物理的に死なないわけではなく、そうした状態にならないように「神の手」の介在で運命が変わる、という設定のようです。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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