FC2ブログ
生き人形の館  イヴ・バンティング『ドールハウスから逃げ出せ!』
ドールハウスから逃げだせ! (ハリネズミの本箱)
イヴ バンティング, 矢島 真澄, Eve Bunting, 瓜生 知寿子
早川書房 (2006-01-31)

 イヴ・バンティングの長篇『ドールハウスから逃げ出せ!』(瓜生知寿子訳 早川書房)は、縮小されてドールハウスに監禁されてしまった子供たちを描く、ファンタスティックなサスペンス小説です。

 中学生の少年カイルは、車の故障で立ち往生しているおばさんを助けようとしますが、逆に車に押し込められ誘拐されてしまいます。気を失ったカイルが目覚めると、目の前には三人の子どもと犬がいました。
 最年長であり野球が得意なマック、バイオリンが上手い黒人の少女タニヤ、ダンスが好きな4歳の幼い少女ルル、そして犬のピッピ。彼らもまた誘拐されて何ヶ月も監禁されているといいます。ここはドールハウスであり、誘拐犯のミセス・シェパードの亡き夫が開発した薬物により、子どもたちは人形と同じようなサイズにされているというのです…。

 人形サイズに縮められ、ドールハウスに監禁された子どもたちがそこから脱出しようとするサスペンス作品です。主人公カイル以外の子どもたちは既に何ヶ月も監禁されており、いろいろな脱出方法を試してみたものの、すでに失敗に終わっていました。誘拐犯であるミセス・シェパードは狂気に囚われており、下手に怒らせると怪我をさせられたり、殺される可能性すらあるのです。圧倒的な体格と力の差があるため、正面切っての方法では脱出することができません。子どもたちは知恵を絞ることになりますが…。

 過去に脱出しようとした少年が、おそらく殺されたであろうことが匂わされます。カイルは他の子と協力して脱出しようとしますが、子どもたちが全員脱出を目指して積極的に動くわけではありません。反抗的で常時脱出の機会をうかがうタニヤはともかく、最年長のマックは脱出をあきらめてしまっており、ミセス・シェパードの機嫌をとりながら、趣味の小説を書き続けています。また最年少のルルや犬のピッピは、現実的にはあまり役に立たないのです。彼らは本当に脱出することができるのか…?

 児童向けながら、非常にサスペンスあふれる物語に仕上がっています。最終的な解決はちょっとあっさりしているきらいがないではないですが、命の危険を感じながら試行錯誤する過程にはハラハラドキドキ感がありますね。ちょっとしたホラー風味も感じられる秀作かと思います。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/1060-7ecc66f7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する