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オリジナルとバリエーション  法月綸太郎『赤い部屋異聞』
赤い部屋異聞
 法月綸太郎『赤い部屋異聞』(KADOKAWA)は、著者が日本・海外の名作短篇に触発されて書いたという短篇を集めたオマージュ作品集です。

 江戸川乱歩「赤い部屋」で描かれた事件を別視点から語りなおした「赤い部屋異聞」、突然頭を殴られ殺されそうになった男がダイイングメッセージを残すという「砂時計の伝言」、毎夜ビルから一回ずつ落ちていく夢を見るという青年の物語「続・夢判断」、読者が登場人物に殺されるという「対位法」、飼い主と精神が入れ替わったという猫がペット探偵に飼い主の捜索を依頼する「まよい猫」、葬式がえりに友人から気味の悪い話を聞くという「葬式がえり」、催眠術をかけられた男の死が描かれる「最後の一撃」、友人から渡された本は絶対に最後まで読めない本だった…という怪奇作品「だまし舟」、絶対に間違わなくなった名探偵の新たな望みを描く「迷探偵誕生」の九篇を収録しています。

 全てというわけではないのですが、著者が愛する日本・海外の名作短篇に触発されて書かれた作品が集められています。元になったのは、江戸川乱歩、都筑道夫、コーネル・ウールリッチ、ジョン・コリア、フリオ・コルタサル、ジョージ・R・R・マーティンなど。 推理やミステリ的な趣向はどれにもありますが、作品自体のジャンルとしては、ミステリに限らず、SFや怪奇小説に分類できるであろうものも多くなっていますね。

 中でも面白く読んだのは「赤い部屋異聞」「続・夢判断」「対位法」「葬式がえり」「だまし舟」などでしょうか。

 「赤い部屋異聞」では、江戸川乱歩の「赤い部屋」で描かれた事件が、舞台となった猟奇趣味の会の一員である男の視点から描かれます。解釈をさらに捻っており、結末が多少尻切れトンボの気もあった乱歩作品が引き締まる感もありますね。

 「続・夢判断」は、ジョン・コリア「夢判断」のオマージュ作品。カウンセラーのもとに、そのビルの上の会社に勤めるという青年が現れ夢の話を始めます。それは毎夜ビルから一階ずつ落下していくという夢でした。内容がジョン・コリアの「夢判断」そのものだと気付いたカウンセラーでしたが…。
 ジョン・コリアの「夢判断」そのままの内容と、それを認識している主人公という、面白い設定の作品です。誰かが何かを企んでいるのでは? というミステリ的な展開になりますが、最終的には幻想的な結末に落ち着くという、奇妙な味の作品です。

 「対位法」は、フリオ・コルタサル「続いている公園」のオマージュ。原作は本を読んでいる読者が登場人物に殺されるというメタ的な幻想小説です。法月作品では、作中で読まれている作品のあらすじが複雑化すると同時に、本を読んでいる読者が「二人」になっています。
 それがタイトル通り「対位法」のような形で展開する、技巧的な作品になっています。

 「葬式がえり」は、葬式帰りの友人から気味の悪い古典的な物語を聞くという作品。幽霊物語の真相に気付くと同時に、主人公の秘密が浮き上がってくるという恐怖小説です。

 「だまし舟」は、都筑道夫「阿蘭陀すてれん」のオマージュ作品。友人が兄の家から持ってきたという自費出版らしい小説。書き出しを読んだだけでその素晴らしさを認識した主人公はそれを読み始めますが、友人は後からあわてて本を取り返しにきます。
 友人が言うには、その本は絶対に読み通せない本であり、読み続けると何かが起こるのだと…。
 本をめぐる怪奇小説なのですが、問題になる本の由来や所有者が二転三転していきます。本には本当に超自然的な力があるのかが、わからなくなっていくという幻想的な作品になっています。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
いつまで続くんでしょう?
この本、図書館に入庫して借りに行こうと思っていたらコロナウイルスのせいで4月まで閉館で悲しいです。密林に注文すれば良いのですが沢山の本の詰まった場所で紙とインクの匂いを思いっきり吸い込みたい!年寄がいるので梅田の大型書店に遠征して万が一があったらと思うと行けません。
【2020/03/15 20:07】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
図書館、休館のところが多いようですね。早く終息することを祈るばかりです。
【2020/03/15 21:39】 URL | kazuou #- [ 編集]


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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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