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滋味豊かなアンソロジー  翻訳同人誌を作ろうの会編『ほんやく日和 19-20世紀女性作家作品集』
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 翻訳同人誌を作ろうの会編『ほんやく日和 19-20世紀女性作家作品集』は、19~20世紀の海外女性作家の珍しい翻訳作品を集めたアンソロジー。童話、ファンタジー、怪奇小説など様々な作品が収録されており、楽しい作品集になっています。
 以下、収録作品について紹介していきましょう。

ケイト・グリーナウェイ「窓の下 こどもたちの絵とライム」(小谷祐子訳)
 絵本画家として有名な著者の、こどもやその生活をモチーフにした詩の抜粋です。童心あふれる瀟洒な作品になっています。

ビアトリクス・ポター「リスのティミーさんのおはなし」(山本みき訳)
 冬に備えて木の実を集めていた灰色リスのティミーと妻のグッディ。しかし小鳥の歌でティミーが盗みをしたと勘違いしたほかのリスたちによって、ティミーは小さな木の穴に押し込められてしまいます…。
 リスの夫婦を主人公にしたかわいらしい物語。とはいえ彼らは酷い目にあってしまいます。主人公たちに協力してくれるシマリスたちもキュートですね。

ルーシー・モンド・モンゴメリー「不法侵入」(岡本明子訳)
 体の不自由な妹と未亡人の母親を助けるため働く少年ダンは、家計の足しにと行っていた池のマス釣りが、新参の所有者ウォルターズ氏によって禁止されていたことを後から知ります。ダンは、ウォルターズ氏に事実を正直に話そうとしますが…。
 正直な少年が報われるという物語です。現代の読者からすると、少年のあまりの正直さに驚いてしまいますが、それだけに気持ちの良い物語と感じられますね。

イーディス・ネズビット「気高い犬」(井上舞訳)
 雑種の猟犬の「ぼく」は、血統書付のニューファンドランド犬のローバーが枝を拾おうとしないのに驚きます。枝などに興味はないと言うローバーでしたが…。
 ユーモアを交えて二匹の犬が対比的に描かれる作品です。タイトルが上手く付けられていますね。

イーディス・ネズビット「染めもの屋の犬」(井上舞訳)
 深いピンク色の毛におおわれた雌犬ベッシー嬢に一目ぼれしてしまった「僕」でしたが、会うたびに彼女の体の色は変わっていきます…。
 次々と毛の色が変わってしまう犬を描く物語。毎回それについて言い訳するベッシーの姿が非常にユーモラス。

イーディス・ネズビット「セミ・デタッチドハウスの怪」(井上舞訳)
 よんどころない事情から夜に恋人を待っていた男は、彼女の家に人気がないのを不審に思い、家の中に入ります。そこで見つけたのは若い女性の死体でした…。
 殺人を予知した男を描く怪奇小説です。深夜死体を見つけるシーンには迫力がありますね。

ガートゥルード・アザートン「川の渡り」(前田陽子訳)
 行方の知れなくなった親友ワイアットの生存を信じ、彼を探し続けるウェイゴール。やがてワイアットらしき人物が川に流されそうになっているシーンに遭遇しますが…。
 互いに親愛の情を抱く男たちの友情物語かと思いきや、不穏な結末へ。これは何とも心に残る作品ですね。

ジュリアナ・ホレイシア・ユーイング「ひとり目の妻の結婚指輪」(朝賀雅子訳)
 母の死後兵士になって家を出た息子は父から結婚指輪を預かります。一方再婚した父は再び息子を授かります。やがて故郷に帰ってきた息子は様変わりしていましたが、
 指輪をなくしてしまったために、継母は彼を跡継ぎとは認めません。指輪を探そうと出かけた息子は巨人と出会いますが、彼が言うとおりにすれば指輪は見つかるというのです…。
 運命を変えて幸福になる青年を描いた童話作品です。「敵」である巨人が妙に紳士的、というのも面白いですね。

 本書は同人出版として刊行された本ですが、非常に質の高いアンソロジーでした。続刊を期待したいところです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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