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怪奇画廊  『四次元への招待』
四次元への招待 -日本語吹替音声収録コレクターズ・エディション- [DVD]
 『ミステリーゾーン』の後に、ロッド・サーリングが関わったオムニバスドラマシリーズ『四次元への招待』(原題『ナイト・ギャラリー』)。パイロット版三話はビデオ時代から発売されていましたが、今回第一シーズンがまとめてDVD-BOX化されました。
 SF・ファンタジー寄りだった『ミステリーゾーン』に比べ、『四次元への招待』は全体にホラー味が強いのが特徴です。

●パイロット版

「復讐の絵画」
 遺産目当てに伯父を殺した甥は、伯父の死後、屋敷に飾られた伯父の絵がだんだんと変化するのに悩まされていました。執事に訊いてみても絵に変化はないというのです。絵の変化は自分にしか見えないのだろうか…。
 殺した伯父の描いた絵が変化するという絵画怪談です。墓地の情景に棺桶が現れたり、そこから死人が起き上がってきたりと、物語の展開が絵だけで表されるという技巧的な作品です。M・R・ジェイムズ風の怪奇的な雰囲気がたまりません。

「アイズ」
 資産家の夫人メンロー女史は、生まれつき目が見えませんでしたが、他人の視神経を移植することで一時的に視力を回復する手術を行います。しかし視力を回復したとしても数十時間しか持たないこと、他人の視力を奪うことになることから、医師は反対しますが、医師の弱みを握ったメンロー女史は無理矢理手術を決行しまう…。
 若きスピルバーグの監督作で、超自然味はないものの非常に面白いサスペンスに仕上がっています。皮肉な結末も魅力的です。

「絵になった男」
 アルゼンチンに潜伏中のナチ戦犯ジョセフは、追い詰められたストレスから精神を消耗していました。ある日美術館で見た釣り人を描いた絵に惹かれた彼は、絵を見ている内に一時的に絵の世界の中に入ってしまいます…。
 主人公である戦犯の男が精神的に追い詰められていく過程をじっくり描いていて重厚な作品です。悪人だけれども同情の余地があるように描かれていて、それでも残酷な結末になってしまうというのには味わいがありますね。


●第一シーズン

「生と死」
 レッドフォード博士は、精神的な暗示により肉体に様々な病を再現できる特異体質の青年を使って研究をしていました。「完全な健康体」の暗示をかけられた青年は輝くばかりの肉体美を発揮しますが、博士の妻は青年に夢中になってしまいます。催眠術による仮死状態の実験中、青年は目を覚まさなくなってしまいますが…。
 催眠をテーマにした怪奇作品です。催眠術にかけられたまま死んだ青年はどうなってしまうのか? という、ポオの「ヴァルドマアル氏の病症の真相」を思わせる怪奇譚になっています。
 演出が上手く、なかなかに怖いエピソードになっています。原作はフリッツ・ライバー「死んでいる男」(仁賀克雄訳 マイクル・パリー編『フランケンシュタインのライヴァルたち』ハヤカワ文庫NV 収録)。

「家政婦」
 資産家で美人ながら性格の悪い妻。彼女から離婚を切り出される寸前の夫は、黒魔術を使って家政婦と妻の人格を入れ替えようと考えますが…。
 人格入れ替わりをテーマにした作品です。カエルを使った黒魔術の様子が何ともおかしいですね。ブラックなコメディ作品です。

「窓からの景色」
 寝たきりでベッドから動けない資産家ジェイコブは、双眼鏡で外を眺めているうちに、妻と運転手の浮気に気付きます。運転手と婚約中の看護婦にある用事を言い渡すジェイコブでしたが…。
 これはファンタジーではないクライム・ストーリー。達観した資産家のキャラクターにブラック・ユーモアが効いていますね。
 ロッド・サーリングのドラマというよりは、『ヒッチコック劇場』的な感覚が強いですね。

「小さい鞄」
 元医師ながらホームレスに落ちぶれてしまった老人ウィリアム。彼がゴミ箱から見つけたのは医者の診療鞄で、中には見たこともないような器具が詰まっていました。ウィリアムはその道具を使って、少女の重い病気を治すことに成功します。
 鞄が未来から送られてきたものだと考えたウィリアムは、それを使って人々の病気や怪我を治そうと考えますが…。
 未来の医療器具を手に入れた元医師が、それを使って人々を癒やそうとする物語です。予算の関係なのか、手術や治療の際の特殊効果は全く写されず、メスや道具を振り上げた状態で次のシーンに行ってしまうのがちょっと残念。
 原作は、C・M・コーンブルースのSF短篇「小さな黒いカバン」(逸見一好訳「SFマガジン1974年8月号」早川書房 収録)です。

「見えざる敵」
 月面基地の建築のために送られた隊員からの連絡が途絶え、救助に向かった宇宙飛行士から宇宙センターに連絡が入ります。人々の姿は全くなく、ようやく彼が見つけたのは奇妙な人工物でした…。
 月にいた「敵」とは何なのか? ちょっとブラックなSFホラー作品です。

「夢に見た家」
 サナトリウムを退院する直前の若い女性は、主治医に自分が何年も見ているという夢の話をし始めます。それは車に乗った自分が、通りかかった美しい家の前で車を降りてドアのノッカーを叩くという夢でした。ドアが開かれる直前に夢はいつも終わってしまうのです。
 どこかで見た家の記憶が無意識に残っているのではと主治医は話しますが、女性は釈然としません。退院した女性は来るまで走っている途中に、夢の家と瓜二つの家を見つけます。たまたま居合わせた不動産屋の男からちょうど家が売りに出されていることを知り、家を買う決心をする女性でしたが、不動産屋からこの家には幽霊が出るということを聞かされます…。
 原作はアンドレ・モーロワ「夢の家」(矢野浩三郎訳 各務三郎編『世界ショートショート傑作選1』講談社文庫 収録)です。非常に魅力的なエピソードだったのですが、原作のモーロワ作品はかなり短いショート・ショートだったはず。
 ちょっとこちらも読み直してみました。主人公の女性が夢に見た家を訪れるという流れは同じです。大きく違うのは女性が入院していたり主治医と話すような描写はないことと、夢の家を訪れた際にそこで管理人と出会って詳細を聞かされる、というところでしょうか。基本的に原作はオチでびっくりさせる作品なのですが、ドラマの方は詳細を膨らませ幻想的なエピソードにしている感じですね。
 ドラマ版では、夢の家を買って自分で住むようになってからの展開を描いているところが興味深いです。単純なオチのある話ではなく、ちょっと哲学的な味わいもある幻想譚になっていて、これは魅力的なエピソードでした。

「影を残すもの」
 屋敷の主である長女のエマは死の床についていました。姉の世話をするために呼ばれている医師の弟スティーヴンは、もう二人の姉レベッカとアンに、エマはあと数日の命だと話します。まだ生きているエマの遺産について話すスティーヴンに二人の姉は眉をひそめますが、その最中にエマが亡くなります。
 その直後から、壁にエマと思しい影が出現します。光線の具合を変えても家具の位置を変えてもその影は消えません。ペンキで塗りつぶしてしまおうとするスティーヴンでしたが、それでも影は消せません…。
 原作はメアリー・ウィルキンズ・フリーマン「壁にうつる影」(梅田正彦編訳『ざくろの実 アメリカ女流作家怪奇小説選』鳥影社 収録)。重々しい雰囲気に満ちた、ゴシック調のゴースト・ストーリーです。
 古屋敷に住み、病床の姉と遺産をめぐっていがみ合う姉弟たち。ドロドロとした人間ドラマの背景に、怪奇現象が起き続ける…というエピソード。幽霊そのものは出現せず、ただ壁に映る影が映し出され続ける、というシンプルな演出ながら、怖さは一級です。
 結末の処理もさらに怖いです。サイコ・スリラー的な怖さと超自然現象の怖さが相乗的に現れているという作品ですね。原作とは設定や登場人物を変えていますが、原作の味を生かしつつ、ドラマならではの効果も出せている秀作だと思います。

「笑いを売る男」
 売れないお笑い芸人のジャッキーは、酒場で“奇跡を起こす男”を名乗る男に出会います。何でも願いを叶えることができるという男に、ジャッキーは自分の話で人々が笑うようにしてほしいと頼みます
 男は自分の願いは不完全であり、必ず副作用を伴うといいますが、ジャッキーは押し切って願いを叶えます。やがてジャッキーが口を開くだけで、人々は爆笑するようになりますが…。
 あらゆる人間を笑わせる能力を手に入れた男が皮肉な運命に直面する…というストーリーです。主人公の芸人が必死でギャグを言うものの、観客がみな冷めている、というシーンの演出は冴えていますね。

「追う者と追われる者」
 狩りこそ人生だと称する元軍人の父親に、息子は根性なしと罵られていました。弁護士から、亡き妻から息子への信託財産のサインを求められた父親は、その条件として息子に野生の獣を一頭殺すことを求めます。
 息子は反発しながらも、父親に従って狩りに出ます。一方、父親に仕えていたアフリカ人の召使いは呪術の儀式を行っていました…。
 強圧的な父親と心優しい息子との対立が描かれる作品です。息子を罵倒し続ける父親に対して、息子が銃を構えるシーンにはインパクトがあります。正直、親子の対立を描く部分と、召使いが行う呪術の部分とが少々ミスマッチなきらいもあるのですが、親子間のドラマ部分が秀逸なのであまり気になりません。

「死してのち」
 ジョナサンの前に死んだ妻の亡霊が現れ、生前と変わらぬおしゃべりを始めます。ジョナサンはそんな妻に嫌気がさして彼女を殺したというのですが…。
 妻を殺した夫がその死後も妻の幽霊のおしゃべりに悩まされるというブラックな短篇です。

「ただ一人の生存者」
 客船に救助された遭難者の男は、タイタニック号が沈没する際に脱出したと話します。しかしタイタニック号が沈んだのは三年も前のことなのです。戦時中ということもあり、船長や医師たちは、男がドイツのスパイなのではないかと疑いますが…。
 男の正体はいったい何なのか? 『ミステリーゾーン』風の奇妙な味の物語です。

「呪いの人形」
 インド帰りの軍人マスターズ大佐が家に帰ると、姪は気味の悪い人形で遊んでいました。人形はインドから送られてきており、家庭教師は大佐の贈り物だと考えていましたが、大佐はそんなものは送っていないと言います。姪によれば、人形は頻繁に話しかけてくるというのですが…。
 届けられたインドの人形の呪いにより家の主人が殺されてしまうという話です。原作はアルジャーノン・ブラックウッドの「人形」『幽霊島 世界恐怖小説全集2』(平井呈一訳 東京創元社 収録)という短篇です。
 原作からちょっと詳細を変えているのですが、大きく変えているのが結末。原作は原作で怖いのですが、このドラマ版も、結末はかなりショッキングで怖いですね。登場する人形の造形もかなり気味が悪いです。

「過去からの歌声」
 かっては才気豊かだった販売部長ランディは、中年になり気力を失っていました。思い出すのは若い頃、亡き妻がまだ生きていたころのことばかり。若き日に通った馴染みの酒場が壊されるのを知った彼は段々と投げやりになっていきます…。
 「ミステリーゾーン」の名エピソードを彷彿とさせる、ノスタルジックなテーマのエピソード。度々過去の世界に足を踏み入れようとする主人公が描かれるのですが、単純な「逃避」にはならない展開には奥深いものがありますね。評価の高かった脚本ということですが、確かに名作エピソードだと思います。

「あやまち」
 半身不随で寝たきりになった男は、妻と主治医とが不倫をしていると思い込んでいました。意思の力で霊体化したまま動けることが出来るようになった男は、主治医を殺害しようと考えますが…。
 超自然的な能力を利用して殺人を考えた男の話。オチは非常にブラックですね。
原作はデイヴィス・グラッブ「離魂術」(柿沼瑛子訳『月を盗んだ少年』ソノラマ文庫海外シリーズ 収録)です。


 この『四次元への招待』、ロッド・サーリングが深く関わったシリーズということで、もう一つの『ミステリーゾーン』的な印象が強いのですが、実際のところ、怪奇・ホラー色が思った以上に強く、ホラーファンに訴えるところのあるシリーズではないかなと思います。サーリングのオリジナル脚本にしても怪奇色が結構強いですし。
 印象に残ったエピソードとしては、死んだ叔父の絵画が変化するという怪奇談がひねりをつけて語られる「復讐の絵画」、特異体質の青年に催眠術をかけ死なせてしまうという「生と死」、未来の医療器具で人々を直そうとする元医師の物語「小さい鞄」、夢に見た家を実際に手に入れるという「夢に見た家」、死んだ長姉の影が壁に映り続けるという「影を残すもの」、タイタニック号の生存者だという男が三年ぶりに救助されるという「ただ一人の生存者」、インドから送られてきた人形の呪いを描く「呪いの人形」、過去の時代を懐かしみその時代に戻ろうとする男を描く「過去からの歌声」などが挙げられるでしょうか。
 第二シーズン以降も、怪奇系のエピソードが多いらしく、そちらもぜひDVD化してもらいたいものですね。

 2018年末に、『四次元への招待』のガイドブックとして、尾之上浩司編『ロッド・サーリングと『四次元への招待』完全読本』(洋泉社)が出版されています。ついでにこちらも簡単に紹介しておきますね。


ロッド・サーリングと『四次元への招待』完全読本
尾之上浩司編『ロッド・サーリングと『四次元への招待』完全読本』(洋泉社)

 「ミステリーゾーン」の生みの親、ロッド・サーリングのもう一つの代表的アンソロジー・ドラマシリーズ『四次元への招待』を紹介したガイドブックです。
 ドラマのエピソードガイドだけでなく、シリーズが作られることになった由来や製作者・番組に関わった人々についての解説、サーリング自身の伝記的な部分も面白く読むことができます。

 興味深いのは『ミステリゾーン』と異なり、『四次元への招待』に関してはサーリングが番組の全権を握っていたのではないということ。プロデューサーのジャック・レアードとの対立の中、苦心するサーリングの姿が描かれています。
 このジャック・レアードが古典怪奇小説のファンだったらしく、それもあって番組の怪奇色が強くなったようです。原作に取り上げられている作品は、怪奇幻想ファンにとっては魅力的なタイトルが並んでいますね。
 フリッツ・ライバー「死んでいる男」、アンドレ・モーロワ「夢の家」、メアリー・E・ウィルキンズ・フリーマン「壁にうつる影」、ディヴィス・グラッブ「離魂術」、マーガレット・セント・クレア「地震を予知した少年」、ジョルジュ・ランジュラン「他人の手」、ヴァン・ヴォクト「最後の魔女」、ジョーン・エイキン「ママレード・ワイン」、デイヴィッド・イーリイ「理想の学校」、コンラッド・エイケン「ひそかな雪、ひめやかな雪」、M・W・ウェルマン「悪魔を侮るな」、リチャード・マシスン「箱の中にあったものは?」、オーガスト・ダーレス「幽霊屋敷」「黒い髪の少年」、ラヴクラフト「ピックマンのモデル」「冷気」、R・C・クック「園芸上手」、リチャード・マシスン「葬式」、C・A・スミス「妖術師の帰還」、フリッツ・ライバー「飢えた目の女」など。ドナルド・ワンドレイやブラックウッドの未訳作品が原作のものもあるようです。

 編者の尾之上浩司さんによれば、出来の悪いエピソードも相当あるそうですが、怪奇幻想ファンとしては気になるエピソードがたくさんあります。例えば、ラヴクラフト原作、ロッド・サーリング脚色の「冷気」なんてすごく気になりますね。
 番組自体を観たことがない人でも、非常に面白く読める本ですので、ロッド・サーリングや怪奇幻想小説に関心のある人にはお薦めしておきたいと思います。版元の洋泉社が消滅した関係で、いずれ入手が難しくなると思いますので、興味のある方は今のうちに。

テーマ:ホラー映画 - ジャンル:映画

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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