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物語の饗宴  サッパー『十二の奇妙な物語』
十二の奇妙な物語 (論創海外ミステリ)
 イギリスの作家サッパーの短篇集『十二の奇妙な物語』(金井美子訳 論創海外ミステリ)は、恋愛もの、ミステリ、サスペンス、恐怖小説と、様々なジャンルの物語が楽しめる作品集です。オーソドックスな話が多く、その点先が読めてしまうものも多いのですが、面白く読めてしまうのは不思議です。

 ロンドンの秘密クラブで会員たちが面白い話を披露していく…というのが前半の設定です。それぞれの会員たちが自分の職業に関連した話をしていくという形になっています。後半はそこから離れて、それぞれ独立したエピソードが続きます。

 自分が天才女優だと信じる女性にだまされたふりをする俳優を描く「俳優の話 キルトの布きれ」、夫を殺害した女性への恋心と仕事に対する使命感に引き裂かれる弁護士を描く「弁護士の話 サー・エドワード・ショーハムの決断」、余命を先刻された青年が恋人に嫌われようとする「医者の話 死の宣告」、作家が犯罪計画に巻き込まれるという「作家の話 アップルドアの花園」、過去に惨劇のあった屋敷で怪現象が起こるという「古びたダイニングルーム」、死んだ親友の恋人に求婚していた男が記憶を無くした親友を見つけるという「ジミー・レスブリッジの誘惑」、気位の高い美女と世捨て人の青年との恋模様を描く「レディ・シンシアと世捨て人」、南アフリカの僻地で自暴自棄になった男を描く「酔えない男」などが面白く読めますね。

 基本的に、どのエピソードもかなり古典的な展開の話が多いのですが、最後まで安心して読める安定感があります。オーソドックス、というと聞こえが悪いかもしれないですが、言い方を変えると「王道」といってもいいでしょうか。
 人間同士の心理のすれ違い、プライドや愛情ゆえの行き違いなど、説得力のある人間ドラマが丁寧に描かれているのが魅力でしょうか。その意味で、犯罪ものや怪奇ものよりも、恋愛ものの方に生彩が感じられますね。アンハッピーエンドはあるものの、基本後味が良い物語ばかりなのも好印象です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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