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悪夢の変容  フレッド・チャペル『暗黒神ダゴン』
暗黒神ダゴン (創元推理文庫)
 1968年発表のフレッド・チャペルの長篇小説『暗黒神ダゴン』(尾之上浩司訳 創元推理文庫)は、ラヴクラフトに触発されて描かれたという作品です。著者が詩人でもあるからか、言葉の巧みな使い方と悪夢のようなイメージ喚起力には強烈なものがありますね。

 牧師のリーランドは研究論文執筆のため、若く美しい妻シーラとともに、祖父母から相続した屋敷へ移り住むことになります。その屋敷には意味不明の言葉が書かれた書きつけ、そして屋根裏には誰かを監禁していたらしい鎖つきの手錠などがありました。
 妻との間に齟齬を来たすようになったリーランドは、シーラに殺意を覚え始めます。一方、リーランド家の敷地に昔から住むというモーガン家の娘ミナと出会ったリーランドは、魚のような異様な風貌にも関わらずミナに惹かれ始めます…。

 物語自体は、魔性のものに惹かれた男が破滅していく…というオーソドックスなものではあるのですが、その筆力ゆえ強烈な印象を与える作品です。後半、ミナの言うがままになった主人公リーランドが体験する意識の変容の描写は特に強烈で、文字通り悪夢のようなシーンになっています。

 作中で、主人公が魔のものに取り込まれていく過程が必ずしも悪いものではないという描かれ方がされているのも特徴で、むしろ「意識の拡大」のための一手段であるというような趣も感じられます。このあたり、この作品の発表年代が1960年代というのも影響しているのでしょうか。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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