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さまざまな奇想  ロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』
フレドリック・ブラウン傑作集 (1982年) (サンリオSF文庫)
 ロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』(星新一訳 サンリオSF文庫)は、ブラウンの友人だったブロックが、ブラウン没後に編んだ傑作集です。30篇と収録作品が多めなのと、代表的な作品が沢山入っているのとで、ブラウン入門書としても非常に良い短篇集ですね。
 同じく星新一の訳になる『さあ、気ちがいになりなさい』(ハヤカワ文庫SF)と収録作が結構かぶっているのですが、逆に言うと『さあ、気ちがいになりなさい』が、かなり精選されたブラウン傑作集だということがわかりますね。

 超越的な知性体により人類の代表として異星人と戦わされることになるという「闘技場」、人間の中に実在する人物とそうでない人物がいることに気付いた男の物語「事件はなかった」、究極の音を求めて旅をする音楽家を描く幻想小説「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」、ファーストコンタクトに現れた異星人は異様な姿をしていたという「人形芝居」、膨大な数の単性生殖児が生まれた世界を描く「ジェイシー」、ある日夜空の星が皆移動を始めるという「狂った星座」、少女が手に入れた人形ごっこの通りに家族が災難に会うという怪奇小説「ギーゼンスタック一族」、タイムマシンによって若返ってしまった男を描く「鏡の間で」、小惑星の住民によって知性を持ったネズミを描く「星ねずみ」、ある日突然意識を持ち始めたライノタイプを描く「エタオインさわぎ」、タイムマシンを発明した青年の末路を描く「タイムマシンのはかない幸福」などが面白いですね。

 収録作は、だいたい他の短篇集で読めるものが多いのではありますが、代表的なものがほど良く集まっているという意味で、非常にバランスの良い傑作集です。ロバート・ブロックによる序文も、ブラウンの人柄を中心に敬意にあふれた内容で良いものですね。

 収録作で一番のお薦めは「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」です。理想の「音」を求めて世界中を旅する男ドーリー・ハンクス。彼はクラリネットを吹いて小金を稼ぎながら旅をしていました。ドイツを訪れたドーリーは、酒場で楽士が奏でているオーボエのような古い楽器の演奏に夢中になります。
その楽器なら理想の「音」に近いものが手に入るのではないかと考えたドーリーでしたが…。
 音楽をテーマにした非常に香気の高い幻想小説です。これがブラウンの遺作だそうですが、もしブラウンがもうちょっと長生きしていたら幻想小説の分野にも傑作をいくつか残していたかもしれませんね。
 この「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」、他には雑誌掲載されたものと、仁賀克雄編のアンソロジー『幻想と怪奇』(ハヤカワ文庫NV)ぐらいでしか読めないと思います。ただ、現在刊行中の『フレドリック・ブラウンSF短編全集』(東京創元社)にはいずれ収録されるのでは。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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