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空想と呪いの旅  パトリシア・ギアリー『ストレンジ・トイズ』
ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション)
 パトリシア・ギアリーの長篇『ストレンジ・トイズ』(谷垣暁美役 河出書房新社)は、呪いをかけられた家族の危機を救うため奔走する少女を描いた、魔術的な雰囲気に満ちた幻想小説です。

 9歳の少女ペットは、不良じみた長女のディーンがしでかしたことのため、父母のスタンとリンウッド、次姉のジューンとともに車で旅に出ることになります。家を離れる直前にディーンの部屋でペットが見つけたのは、剥製にされた愛猫マーマレードと、ディーンが書きのこしたらしい手帳でした。
 手帳の中身から、ディーンがオカルトじみた儀式に手を出していたこと、家族に対して呪いがかけられたらしいことを知ったペットは、家族の命を救う方法を見つけようとしますが…。

 幼い少女が、長姉により家族にかけられた呪いを解こうと、家族との逃避行の最中に奔走する…という物語なのですが、その旅はどこかのんびりしていて、あまり危機感はありません。ただ主人公ペットが旅の途中で魔術的・悪魔的な存在と出会うシーンは、非常にシリアスな雰囲気になっています。

 主人公ペットが幼いせいもあり、彼女が出会う超自然的なな現象が本当のことなのかははっきりしません。もともとぬいぐるみたちとの「ごっこ遊び」を愛するペットが語り手となっていることもあり、そのペット自身の内部の空想と外部で起きる幻想的な現象が一緒くたの世界となっているのです。
 ただ、実際にペットと家族を災厄が次々と襲うのは確かであり、その意味で「呪い」は客観的に存在するように見えます。

 家族が逃げ出す原因となった長姉ディーンの行為とは何なのか? ディーンが行った魔術とは何なのか? そもそも彼女はいったいどこに行ったのか? 加えて「呪い」とは何なのか?
 そのあたりの具体的な情報が全く示されないまま物語が展開するので、かなり抽象的・観念的な作品になっています。ただ、主人公ペットによって語られる魔術的な世界観、どこか不穏さを感じさせる悪魔的な登場人物とその災厄、家族との逃避行のシーンで描かれるほのかな「家族愛」など、読みどころは沢山あり、非常に魅力的な作品になっています。

 あと、本の表紙絵にも描かれたプードルのぬいぐるみが大量に登場し、作中でも重要なアイテムとして活躍します。ぬいぐるみ好きな人にも楽しめる作品ではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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