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異形の触れ合い  アルベール・サンチェス・ピニョル『冷たい肌』
冷たい肌
 アルベール・サンチェス・ピニョル『冷たい肌』(田澤耕訳 中央公論社)は「カタルーニャが世界に発信する新しい文学」という触れ込みでありながら、その実、怪物との死闘を描くという、ほぼホラー小説といっていい作品になっています。

 アイルランドで政治活動をしていた「私」は人間社会に倦み疲れ、南極近くの孤島での気象観測の仕事に着くことになります。その島に着いた後には、一年近く他の人間と接触することはないというのです。
 島に着いた「私」は、前任者がおらず、薄汚れた格好をした灯台守らしき男しかいないのを見て驚きます。カフォーと名乗った男は頭がおかしいらしく、灯台に引きこもっていました。夜を迎えた「私」は家の外から異様な風体の怪物に襲われます。カフォーによれば、毎夜怪物たちは襲ってくるというのです。
 嫌々ながらカフォーと協力することになった「私」は夜ごと襲ってくる怪物たちを撃退することに力を注ぐようになります。カフォーは怪物の雌を捕らえていましたが、やがて「彼女」をめぐって、二人の間に軋轢が起こります…。

 序盤こそ静謐な雰囲気なのですが、孤島に上陸してすぐに怪物が現れ、怪物との激闘がこれでもかと描かれます。拳銃の弾丸も少なくなるなか、「私」は奇人であるカフォーとも協力せざるを得なくなっていきます。倒しても倒しても、後から出てくる怪物のインパクトは強烈です。

 後半では、ある手段により数百匹を一挙に倒すことに成功しますが、それもあまり意味がない…という激烈さ。やがて怪物たちとの争いに疲れ、和解できないかと考えるようになる「私」とカフォーの対立も読みどころです。カフォーが捕まえた雌の怪物「マスコット」や怪物の子供たちとのふれあいから、彼らを怪物ではなく、ある種の「人間」として見るようになっていく「私」。そのあたりが「文学的」でもあり、評価されている部分なのでしょうか。

 異形のものを描くホラー小説としても、怪物との死闘を描くエンターテインメント小説としても面白い作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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