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怪奇ユーモア・スケッチ  ロン・グーラート『ゴーストなんかこわくない マックス・カーニイの事件簿』
ゴーストなんかこわくない―マックス・カーニイの事件簿 (扶桑社ミステリー)
 ロン・グーラート『ゴーストなんかこわくない マックス・カーニイの事件簿』(浅倉久志訳 扶桑社ミステリー)は、マックス・カーニイを主人公としたオカルト探偵もの。陰惨さはなく、ユーモラスで愉快な事件ばかりが起こるという怪奇コメディ的な作品です。

 広告代理店のアート・ディレクター、マックス・カーニイは副業として「幽霊退治人(ゴースト・ブレイカー)」を行っていました。しかし彼の元に持ち込まれるのは、風変わりで突拍子もない事件ばかり。様々な方法を駆使してマックスは事件を解決していきますが…。

 幽霊、ポルターガイスト、魔術による呪い、精霊のいたずらなど、扱われる事件は様々ですが、どれも陰惨さや人死はなく、ユーモラスな題材ばかりになっています。登場する幽霊や精霊たちも、普通に会話が可能で、場合によっては説得が可能だったりするのが面白いですね。
 主人公のマックス自体がアマチュアで、この業界に入ってから数年という設定です。事件の解決方法も、書店で手に入れた魔術書の呪文を唱えるだけ…というパターンも多いです。超自然現象事件の裏に人間関係の真相が現れる、ということもありますが、その真相もそんなに深刻なものではありません。
 徹頭徹尾、軽快でユーモラスに描かれているので、怪奇小説のパロディとして読むのが一番楽しめるのでしょう。

 魔術によって象に変身してしまう男を描いた「待機ねがいます」、姪との結婚を勧める幽霊を描いた「アーリー叔父さん」、夫が人魚と浮気していると思い込んだ妻を描く「人魚と浮気」、カーニイの結婚を描く「カーニイ最後の事件」、ポルターガイストの起こる新築住宅をめぐる「新築住宅の怪異」、透明になれるマントをめぐる「姿なき妨害者」などが面白いです。
 なかでも、冷えた夫婦関係の行方があさっての方向に展開する「人魚と浮気」、超自然現象の原因がとんでもない事実だと判明する「新築住宅の怪異」には、ある種突き抜けたユーモアがあって楽しいですね。

 基本的に作中での年代順に配列されているようで、マックスの結婚を描く「カーニイ最後の事件」以降は、パートナーとなる妻ジリアンも一緒に活躍するようになります。そもそも「カーニイ最後の事件」といいながら、全然最後ではないところも人を喰っていますね。
 この作品、主に1960年代に描かれていますが、その軽妙なタッチは今でも面白く読めます。浅倉久志の翻訳も味があり、怪奇小説版〈ユーモア・スケッチ〉と言ってもいい作品でしょうか。
 作者自身、オカルト探偵ものの系譜を意識していたようで、序文にはブラックウッドの〈ジョン・サイレンス〉やホジスンの〈カーナッキ〉の名前が言及されています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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