人生を乗り間違えて  クルト・クーゼンベルク『壜の中の世界』
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壜の中の世界
クルト クーゼンベルク Kurt Kusenberg 前川 道介
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 今日紹介するのはドイツの作家クルト・クーゼンベルクの『壜の中の世界』(前川道介他訳 国書刊行会)です。クーゼンベルクの作品はどれも短く、掌編といっていい長さのものばかりですが、そのどれもが傑作です。彼の作品は、時代や風俗といった要素をほとんど感じさせず、そのため普遍的な読みやすさを獲得しています。
 国家が、国民の生活に過剰な好奇心を抱いているため、膨大なアンケートを毎日書かされるという『秩序の必要性』、あらゆるものが抱き合わせで売られるようになった社会の物語『抱き合わせ販売』、永遠に飛び続ける弾丸をめぐる話『休まない弾丸』など、あらすじを聞くだけで面白そうだと思いませんか?
 クーゼンベルクの作品は、どれも短いためアイディア・ストーリーの一言ですませられてしまう恐れがあるのですが、その短い中にも人生の不思議を描いた作品として、『汽車を乗り間違えて』があげられます。
 七十代にさしかかり、最愛の妻を失ったティーゲル氏は、人生に絶望しています。しかし友人からの絵はがきに海が載っていたことから、ティーゲル氏は思い立ちます。どうせなら海を見てから死んでやろう。そして列車に乗って旅立つのです。しかしティーゲル氏は全く逆方向の列車に乗ってしまったことに気付きます。ティーゲル氏の災難を知った乗客たちは、ティーゲル氏になにくれとなく親切をほどこします。人々との触れ合いに喜びを見いだしたティーゲル氏は、今度はわざと列車を乗り間違えるのです!
 それから数限りなく乗り間違いを繰り返す老人のことが噂になり始めます。幸運のマスコット扱いされるようになったティーゲル氏は、鉄道会社から莫大な報酬で雇われることになります。

 彼らの話が本当だとすれば、老人が降りた列車はその直後に大なり小なり損傷を被った。一方、ティーゲル氏が乗った列車の方は、いつも無事故で、そのうえ定刻通りに目的地に着いた、というのである。

 ティーゲル氏が乗り込まなければ、出かけられないと言う人々も現れる始末。ふとした偶然で人生の喜びを見いだしてしまったティーゲル氏でしたが…。
  運命の皮肉さを軽妙なタッチで描き出した傑作です。星新一などがお好きな方は、楽しめるのではないでしょうか。

この記事に対するコメント

kazuouさん、先日はコメントありがとうございます。
「壜の中の世界」、かなり面白そうですね。
星新一さんの作品も大好きなので、
さっそく本屋で探してみます♪
【2006/02/17 12:46】 URL | 空猫 #- [ 編集]


空猫さん、こんにちは。
『壜の中の世界』は、僕のオールタイムベストの一つです。本当に、星新一とかなり共通点のある作風なんですよね。ところで、ご存じかどうかわかりませんが、星新一の『門のある家』って作品があるんですけど、それと『壜の中の世界』に収録されてる『どなた?』という作品が、すっごくよく似てるんで、読み比べてみるのも一興かと思います。
【2006/02/17 18:30】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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